暗転
最悪な状況は、なおも続いた。
「これが食事だと! 貴様ら、私にこんなものを食えと言うのか!」
昼食だと渡された食事に、公爵閣下が怒鳴った。
文句を言うなら食べなければいいのに、しっかり食べた。……わたしの分まで。
屋敷にいても、牢にいても、何も状況が変わらない。
食事を与えられずに、立たせられたままだ。
いや、屋敷と違って暖炉などない地下牢は寒いままだ。
元々冷え切って暖まっていなかった体だ。
公爵閣下に蹴られた痛みが落ち着いてくると、今度は冷えてきた。
(――寒い)
牢に毛布はあるけれど、二枚ある毛布は公爵閣下が使っている。
「寒いぞ! もっと毛布を持ってこい!」
それでも叫んでいるけど。
牢番が動かないと分かると、公爵閣下はわたしに近寄ってきた。
「脱げ! 貴様の服を寄越せ! 私は寒いのだ!」
その言葉に、絶望した。
毛布を使わせてくれず、さらに服まで取り上げられるのか。
逆らわず素直に脱げば、公爵閣下にひったくるように取り上げられた。
夕食も、公爵閣下が全部食べてしまう。
立っていろ、という命令が取り消されることがないままに、公爵閣下は毛布二枚とわたしの服をかけて寝てしまった。
わたしは服もなく、立ったままで、寒さの中に取り残された。
そして、朝。
寒さは、もう感じなかった。
ただ、立つことだけに集中した。
牢番の兵士の人が何か言っていたけど、それが何かが分からない。
「リィカルナ、フラフラするな! きちんと立ってろ!」
聞こえるのは、公爵閣下の怒鳴り声だけだ。
※ ※ ※
それから、どのくらい時間が経ったんだろう。誰かが、わたしの目の前に立った。
「リィカルナ、動けるか?」
「……………?」
目の前に男性がいた。公爵閣下じゃない。誰か思い出せない。
その男性に、脇の下に手を入れられて持ち上げられる。
「…………ぇ……?」
突然のことに驚くけれど、動けない。
そのまま抱えられて、牢の外に出た。
「………………?」
なぜ。
それが分からないままに、一度降ろされて、毛布で体をくるまれる。
そして、今度は横抱きに抱えられた。
「…………え……?」
また、疑問が出る。
「行くぞ」
わたしを抱えた男性がそう言うと、そのまま動き始める。
何が何だか分からないまま、そこがわたしの限界だった。
意識が暗転した。
次回より視点が第二王子に変わります。




