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第86話 温室


 昨日投稿しなかった分です。

「ん〜〜…」


 一つの作物の前で頭を悩ませるメスティ。その背後ではガルたちが収穫の準備をして待っている。


「収穫しちゃいましょうよ。もう良いんでしょ?」


「良いんだけどなぁ〜…」


「何がダメなんですか?」


「何がって言われてもなぁ〜…」


「はっきりさせてくださいよ。」


「はっきりしなくてなぁ〜…」


 頭を悩ませるメスティ。今メスティの目の前にあるのは、アリルとともにお祈りした日に授かった種から成長した植物だ。楕円型の球体となった葉は収穫適期であると感じられる。


 しかしメスティはどこかまだ収穫してはならないという気がしてならない。ただ、食べ頃なのは間違いない。しかし今回に限ってはまだ収穫してはならないような気がする。


「やっぱりやめとこう。収穫はまた今度。」


「またですかぁ?昨日も一昨日もそう言ってたじゃないですか。」


「はぁ…じゃあ他の作業に移りますよ?」


「すまんな。」


 散開し、他の作業に戻るがるたち。メスティは目の前の作物にポンポンと触れると、自身も他の作業に移った。


 季節は秋も終わり頃。今年も冬がやってくる。夏のうちからせっせと薪を拾っていたため、家を大きくしたが暖房は問題ないだろう。


 心配なのは食料だ。メスティたちに加え、ワディたち、それにコカトリスたちの分の食料が必要となる。


 メスティの異空間収納、魔導ムロの中には膨大な量の作物が収納されているが、それでも一冬越せるか若干不安になる。


 そんな中、アリルは一人別行動をしている。普段ならば秋の収穫期は皆で慌ただしく動くのだが、これだけはどうしてもやらなければならないと、一人張り切っている。


 するとそこへシェムーが訪れた。ワディたちの方の冬を迎える準備がある程度すんだため、多少時間が空いたのだろう。シェムーが来たことに気がついたアリルは嬉しさのあまりシェムーに抱きつく。


「シェムーちゃんありがとうございます!」


「アリルっちの頼むだからね。今日はこの後ずっと空いているからガンガンやるわよ。」


「ありがとうございます!じゃあここのガラスにこの魔術言語を…」


「どれどれ…うわぁ……ずいぶんしっかりやるのね。まあでも…このくらいなら問題ないわ。」


「ありがとうございます。まだ魔術言語は得意じゃないので助かります。」


 アリルとシェムーで手分けして作業を行なっていく。その作業は日が暮れるまで行われた。


 もう遅くなってしまったため、今日はシェムーがこちらに泊まることとなりいつもより一人多い夕食となる。


 アリルにシェムー、フォルンにエラミと男女の比率が同じになることなど滅多にないことだ。ガルたちにおもわず笑みが浮かぶ。


「それで準備は順調か?」


「はい。今日でパーツは揃ったので、明日から組み立てに入ります。雪が降る前にはガラス温室は完成しそうですよ。」


 アリルがせっせと作っていたのはガラス温室だ。薬草の中には冬を越せないものがいくつかあるため、冬の間もちゃんと育てられる環境が必要であった。


 その環境を作るため、アリルはガラス温室の準備をせっせと初めていた。これもメラギウスを師事して成長したおかげである。


「今回は薬草用ですけど、将来的にはいっぱいガラス温室を作ってそこで野菜を育てられるようにしますね。」


「ずいぶんと金をかける野菜だな。でもそれがうまくいけば季節関係なく作物の収穫ができるようになるからな。期待しているよ。」


「はい!」


 ガラス温室など強度や断熱などを施すために魔法言語を扱える加護持ちの力が必要になる。その上、維持のためには魔力持ちの協力が不可欠。


 本来こんなガラス温室を持てるのは貴族くらいなものだ。そこで野菜を育てるなど貴族の道楽だ。それをメスティはアリルとシェムーの協力だけで行えてしまう。


「そのガラス温室が完成すれば冬でも新鮮なキュウリが食えるのか?」


「おお河童、来たのか。まあそういうことになるな。だからお前が持って来たそのガラスの材料になる砂は実に役に立つ。」


「そういうことならもっと張り切るか。」


 河童にお礼のキュウリを渡すと満足そうにかぶりつく。いつもキュウリしか食べていないが、よく飽きないものだ。


 河童が今は混んで来た砂は珪砂だ。この辺りは珪砂が少なく、集めるのに手間がかかる。だからキュウリとの取引材料にこの珪砂を加えた。おかげでガラス温室も問題なく作業が進んでいる。


「ああそうだ。それからやりたいことがあんだ。米収穫しただろ?稲わらはちゃんと保管してあるか?」


「ああ、ちゃんとしてあるぞ。何かに使うのか?」


「まあな。今は収穫期で忙しいだろうから、それがひと段落したらで良い。その時はちょっと付き合え。」


「あ〜…その前に行かないといけないところがあってな。俺はしばらくいなくなる。」


「なんだよ。…じゃあこいつら借りて良いか?」


「手隙なら…大丈夫か?」


「問題ないですよ。俺たちだけでやっておきます。」


 何をやらされるかまだわからないが、この河童があまりに変なことをやらせることはないだろう。それにおそらく、魔導相撲の加護に関係することだ。うまくいけばガルたちに魔導相撲の祝福が与えられるかもしれない。




 引越しをするので、今月と来月の上旬くらいまで投稿が不定期になりそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガラス温室は農家の強い味方!…色々育つといいですね! [気になる点] …楕円の葉っぱは、何の作物なのやら… [一言] …柴犬先生は引っ越しですか…いろいろ気をつけて下さいね!
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