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第76話 即時入国

「こっちの種まき終わりましたよ!」


「こっちも終わりました。」


「じゃあこっちを頼むわ。行くぞ…よっと。」


 メスティの農技・天地返しによりあっという間にふかふかの土に変わる畑。本来この耕す作業が一番大変なのだが、それがこんなにも楽になったおかげでメスティは農地をさらに倍まで増やした。


 これでコカトリスたちとの取引も問題なくできるはずだ。ここまでやるのに1ヶ月かかってしまったが、成果としては十分だ。


 そしてその日の夕食時、今後の畑の管理の割り振りなどを相談しあったメスティはふっと息を吐いた。


「それじゃあ俺は明日から街に行ってくる。」


「ようやくですね。誰がついてきますか?」


「いや、今回は俺一人だ。色々と情報を集めるために動きたいからな。その間お前らを守る術がない。」


「…わかりました。仕方ないですね。」


「すまんな。ここの守りはコカトリスたちに頼んでおいた。あいつらがいれば大抵の敵はなんとかなる。むしろなんとかならない敵が来たとしたら俺でも難しい。」


 メスティが街に行くことにより街で騒ぎが起こることだろう。暗殺者に襲われるくらいなら間違いなくありそうだ。そんな状況でアリルやガルたちを守り続けるのは大変だ。


「今回色々と問題を解決するつもりだからフォルンとエラミもまた街で傭兵として働けると思う。もう少し辛抱してくれ。」


「全然大丈夫ですよ。むしろここで鍛えられるんで長期の特訓だと思えば全然。ね?」


「…間違いなく強くなった。」


「そいつはよかった。」


 確かにフォルンとエラミは強くなった。あとは傭兵として経験を積めば銀級に上がるのも夢ではないと思う。ただそれを知ったガルたちは焦りを見せている。まあ数少ない嫁候補がいなくなるわけだしな。


「…あの男も探すんですよね?」


「もちろんだ。あいつがいれば戦力の増強にもなるし、農作業の円滑化も図れる。ただ…そんな簡単にはいかないだろうな。とりあえずは新たな村人候補も探してくるよ。頑張っていくつか問題を解決できるように頑張るよ。あ、先生に何か伝えておくか?」


「ん〜私からは特に。まだ教わったことを復習しながら頑張っているところですから。」


「まあまだ全然日数たってないからな。それじゃあ街に行く準備するか。」


 街に行く準備を始めるメスティ。今回は野菜を売りに行くのはメインではない。むしろ野菜はコカトリスたちの影響で枯渇気味だ。だがやりたいことは山ほどある。


 そして翌日。メスティは出発前に祭壇へと祈りに行く。それからコカトリスたちの元へ行って村の護衛のことを頼んだ。コカトリスたちはそのくらいならば問題ないと快く引き受けてくれた。


「さて、それじゃあ俺はそろそろ行くよ。10日くらいはいないと思うからその間はお願いします。」


「コケ?」


「移動方法?まあ走って行くけど…」


「コケココ!」


「乗って行けって?まあ…その方が早いかもしれないけど…」


 コカトリスはそう言うとメスティを摘み上げて背に乗せる。そして一目散に走り出した。これは随分と楽ができるかもしれない。そう思ったメスティはそれ以上の成果を得ることとなる。


 一度コカトリスに乗ったまま村へ行き、アリルたちに声をかける。そして再び出発したメスティはコカトリスの本気の走りを目の当たりにした。


 その速度はメスティが本気で走るよりも早い。そもそもコカトリスは飛翔能力は低いが、代わりに疾走能力が高い。その上このコカトリスたちは地龍の影響を受けて龍化している。その疾走能力たるや普通のコカトリスの数倍はあるだろう。


「これは走ると言うより…大地と一つになったような…」


「ココ!」


「まだいけるって?おいおい…まじかよ……」


 さらに速度を上げるコカトリス。そしてメスティは驚くべきものを目の当たりにした。


「うっそ…もう…街が視界に入ってる。俺の足じゃ1日でここまでくるのも無理だぞ。それが…半日?」


「コケーココ。」


「これ以上近づくと騒ぎになる可能性があるから投げる?それもそうだな。よし、頼んだ。」


 コカトリスは首を大きく曲げ、メスティを啄ばみ上げると急ブレーキと共に首のしなりを使って投げ飛ばした。


 まるで弾丸のように空を切るメスティはぐんぐんと飛んで行く。メスティがコカトリスに感謝の言葉を述べようと地上を見るとすでにコカトリスは走り去っていた。


 そしてメスティは着地準備に入る。まともな人間では着地と同時に体がバラバラになるだろう。だがメスティは魔力で全身を覆い、まるで水切りの石のように地面を跳ね飛び、やがて着地の勢いそのままに走り出した。


 そしてそのメスティに見張り台に立つ幾人かの憲兵が気がついた。


「おい…なんかものすごい勢いで……人間か?」


「ん?ああ、あんなのができるのはメスティのやつだ。ちょっとした降りてくるわ。」


 そう言った憲兵が見張り台から降りる。するとその憲兵が下につく頃にはメスティは汗を流しながら他の憲兵たちに囲まれていた。


「ほら、解散解散。ようメスティ。久しぶりだな。」


「ハイールト。今日はお前がいたのか…ラッキーだ。ちょ、ちょっと呼吸を整えさせてくれ。」


「珍しいな。お前がそこまで息を切らすなんて。緊急か?」


「いや…訓練の一環みたいなもんだ。ふう、もう大丈夫だ。前回の入国から1年経ったから入国したい。手続き頼めるか?」


「ああ、任せておけ。」


 旧知の仲である憲兵のハイールトに入国審査を頼む。すると今回はパッパッと手続きが進む。


「ほらよ。4日後の昼までに出国すれば問題ない。出国の時はまた俺がやってやるよ。」


「ありがとう。助かるよハイールト。」


「俺にかかればこんなもんよ。どうせなら飯でもどうだ?滞在中時間があったらでいいからさ。」


「ん〜…今回は団長のところにも遊びに行く予定だからその時にどうだ?団長の奢りでうまい飯食おう。」


「バラク団長!?そ、そりゃ光栄なことだが…問題ないのか?」


「大丈夫大丈夫。その時に呼ぶから頼むな。」


 そして無事メスティは入国を果たした。ここからはやらなくてはならないことが山ほどある。だがとりあえずまずは先生のところに行かないといけない。話したいことが山ほどある。




昨日投稿間に合わなかったので土日にまとめて更新します。

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