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第74話 コカトリス

「ココ?コココッコ。」


「へぇ〜そうなんだ。ああ、これはこっちの言葉で言うとね…」


 結論。このコカトリスたち、めっちゃいい奴らでした。それに頭も良い。


 コカトリスたちとコミュニケーションを取ろうとしたメスティに気がついたコカトリスがメスティとコミュニケーションが取れるようにわかりやすい言語を構築させ、今はそれでコミュニケーションをとっている。


 そもそも元々使っていたコカトリスの言語はあまりに複雑で、人間に認識するのはかなり難しい。例えば彼らの「コ」と言う1発声の中にも多数の音域と周波数が混ぜ込まれており、真似することも正しく聞き取ることも難しい。


 それにしてもメスティとコミュニケーションを取るために新たな言語をその場で構築する知能の高さにはメスティも感服した。おそらく龍の因子がそれを可能にしているのだとは思う。


「まあここまでの話をまとめるとここで最初に誕生したのはそこの龍で、君たちは彼に育てられたと。」


「コ!ココココ…」


「そっか…最近は身体が大きくなりすぎたせいで、必要魔力量が増えて寝てばかりいるのか…」


 この巨大な地龍はコカトリスたちの父的存在らしい。しかしこれだけの巨体を維持するだけでも膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーを全て魔力で賄っているが、成長するに従い川から流れ込んでくる魔力が足りなくなった。


 そして魔力が足りなくなったことで起きた問題はコカトリスたちにも起きた。それがあの尾がトカゲや蛇のコカトリスだ。魔力が足りないせいで本来の姿を取れなくなってしまったのだ。


「そう聞くとなんとかしてやりたいけど…俺の魔力だけじゃ足りないもんな。毎日空っぽになるまで魔力放出しても…足りないだろ。」


「ココ。ココッコ、ココ。」


「客人は気にするなってか。客人…なんかごめんな。」


 メスティを羽ばたきの風圧で飛ばしたコカトリスはコミュニケーションが取れるようになるとすぐに謝ってきた。驚かせてすまなかったと。メスティとしては先に攻撃しようとしたのはこちらなので、謝るのはこっちの方だと同じように謝った。


 このコカトリスたちは非常に温厚だ。いや、モンスター全てで考えてもこれほど温厚な種族はいないだろう。それを危険だから討伐しようとしたメスティは徐々に罪悪感が湧いてきた。


「そ、そうだ。腹の足しになるかわからないけど、俺は農家でさ。うまい野菜を育てているんだ。よかったら食べてくれ。」


 メスティは時空ムロの中から作物をいくつも取り出してその場に並べる。すると興味を持ったコカトリスたちが集まってきた。そして野菜をついばむと、そのまま丸呑みして見せた。


「ココ!」


「コココッコ!」


「ココーコ!コワッ!」


 なにやら早口で話している。この鳴き方は彼らだけの言葉なのでなにを話しているかはまるで分からない。しかし妙に興奮しているのは間違いない。


「ココ。」


「え?耳を塞げって?う、うん…」


 メスティはしっかりと耳をふさぐ。さらに念のため、魔力で鼓膜を防御させる。するとコカトリスたちは整列し始めた。そして大きく息を吸い、胸を膨らませる。


「「「「「「コケコッコー!!!!」」」」」」


 その声は鼓膜を防御させたメスティであっても気を失うかと思うほどの大声量。周囲の小鳥たちは驚き、飛び去っていく。だが逆に集まってくるものたちがいる。仲間のコカトリスたちだ。


 一斉に集まってきた仲間のコカトリスたちはメスティが出した作物をどんどん丸呑みにしていく。それを見たメスティは慌てて作物を取り出していく。


 すると呼び集められたコカトリスの中の尾が蛇のコカトリスの尾の蛇が弱々しくうなだれていく。そしていきなり脱皮を始めたかと思うと、脱皮し終えた蛇だった部分は蛇ではなくなり、龍に近いものに変わっている。


「ココ!ココッコ!」


「え?俺の作物で?なん…あ!そっか。こいつら元々俺の魔導農家の加護の魔力から発生しているから…」


 メスティの魔導農家の加護の魔力から誕生したコカトリスたちにとって、メスティの作物は力の塊だ。それを大量に食せば今まで足りていなかった栄養が全て補える。


「ココ。コーココ…」


「あ、龍にも食べさせてくれって?まあ大量にあるからなんとか…」


 メスティはコカトリスに案内され、地龍の前に立つ。そしてこれだけ近づくと危険はないとわかっていてもたじろいてしまう。すると一体のコカトリスが地龍に話しかけると地龍は大きく口を開けた。


 それを見たメスティは覚悟を決めて地龍の口に近づくと大量の野菜を口へと放り込んだ。すると地龍は口を閉じ、何度か咀嚼するとまた口を開ける。


 一瞬のうちにあれだけの量の野菜がなくなるのを見たメスティは長期戦になると覚悟し、何度もなんども地龍の口の中に野菜を投げ入れた。


 そして昼を周った頃、地龍は唐突に立ち上がり体を震わせた。すると地龍の体から大量の土砂が降ってくる。慌ててメスティとコカトリスはその場を離れる。


「すご…」


「コココ…」


 その様子はまるで脱皮だ。いや、正確には体についた垢を落としていると言った方が正しいのかもしれない。


 ボロボロと剥がれ落ちていく土砂。そして地龍がもう一度体を大きく震わせると地龍は満足そうにその場に座り込んだ。


「あれ?まだ栄養足りなかった?」


「ココ。」


「あ、寝てばっかりなのは元々なのね…まあその方が良いかも。」


 あんな地龍がそこら中歩き回ったら大問題になりかねない。メスティとコカトリスは地龍へと近づく。足元には地龍から剥がれ落ちた大量の土砂が積もっている。


 地龍から剥がれ落ちた土砂など一体どれくらいの価値があるのだろう。あとで持って帰ろうと心に決めるメスティは再び地龍の前に立つ。


 するとまた通訳がわりのコカトリスが地龍に近づくと地龍は再び口を開いた。もっと食べたいということなのかと思うとコカトリスは地龍の口に近づき、口の中から何かを咥えてこちらへ持ってきた。


「ココココ。」


「感謝の気持ち?一体なにを…」


 コカトリスからそれを受け取るメスティ。手に直接受け取ったせいで手がベットベトになるが、嫌な気分よりも興奮が優った。それは金属の塊だった。


「金属?だがこんな金属見たことはない…これは一体…」


「ココ、コッコッコ。」


「体内でできた金属?人間で言うところの胆石とかに近いのか?でも口から出したから…特殊な器官があってそこでできたとかかな。でも一つ言えるのは…龍の体内でできた金属。とんでもないものだぞ。本当にもらっても?」


「コ!」


 良いとのことなのでメスティは上着を脱いでその金属を大切に包む。するとコカトリスたちはもう少し野菜を食べたいと言い出したので、メスティは野菜をさらに準備する。


「しかしこれだけ気に入ってくれたのならこれから毎日必要になるんじゃないか?毎日届けに来ようか?」


「コッコ、コッコココ。」


「自分たちで取りに来るって?そんなにいっぱい持てる?」


「コッ!」


 そう言うとコカトリスはつまみあげた野菜を食べずに落とした。するとその野菜は地面に落ちずにすっと消えて無くなった。


「まさか…異空間収納?」


「ココッ!」


「元々使えたの?…やば……」


 異空間収納を使えるコカトリス。こんな珍しいモンスターはそういない。するとコカトリスは異空間収納の中から人間の頭ほどの大きさの卵を取り出した。


「コッコココ。」


「え?もらうだけじゃ悪いからこれをやるって?い、いや…でも…」


 コカトリスから卵を貰い、それを好きにするわけにもいかないだろう。これを割って食べようなんて日には…


「ココ。」


「あ、無精卵か。そ、そういやそうだな。鳥だもんだ。無精卵くらい産むよな。それじゃあ…遠慮なく。」


 メスティはコカトリスの卵を手に入れた。なんだかまともな人間との取引は全然ないが、河童とコカトリスという珍しい相手と取引ができるようになった。これからは卵を食べ放題だ。



 明日からは隔日です。

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