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第71話 米の利用方法

「それじゃあ俺そろそろ夕食の準備始めるから。」


「よろしくお願いしますメスティさん。できればガッツリ系で…」


「今日は力仕事多かったからな。そういや昼間にエラミたちが狩に行っていたから肉もあるだろ。」


 農作業を一足早く切り上げて夕食の準備に移動するメスティ。夕食は何にしようかと考えながら戻ると、家の中では狩から帰ってきているフォルンとエラミが狩ってきた動物の処理を行っている。


「今日は小物中心か?」


「なかなか獲物が見つからなくて…」


「静かだった……」


「ふむ…まあそういう日もあるか。今日もまたアレやるか。」


 メスティは捌き終わったばかりの鳥の骨を回収し、それを水の入った鍋へと入れる。さらにそこへ臭み消しのための香味野菜を加えていく。


 その鍋を煮ている間に他の作業もしていく。テキパキと様々な料理を作っていくメスティ。そして忘れてはいけないと米の準備も始める。


「量はこんなものかな?…もうちょい食べるか。よし、それじゃあ脱穀、精米開始。」


「うわぁ…なんど見ても便利っすね。魔力持ち羨ましい…」


 メスティの魔力によって米から籾殻が外れ、米糠が綺麗に落とされていく。これはメスティが稲作の成功と米を食したことによって得た稲作の紋章の特殊魔法だ。


 とはいえ特殊魔法といってもやれることは米の籾殻を外し、米糠を落とすだけだ。しかし米を食べていくのには必要不可欠な魔法でもある。これが使えると知った時はもうあの作業をしなくても良いと大喜びした。


 だが正直白米は食べ慣れていないせいもあってなかなか人気が出ない。今の所気に入っているのはメスティと暗殺者だけだ。


 しかしそんな白米を皆が喜んで食べる方法を最近見つけた。そのためにまずは炊き上がった米を井戸水で洗い始める。


 綺麗に洗われた米を持ったメスティは先ほど鶏ガラなどを入れていた鍋の前に戻る。そして何度もアクをすくった後に出汁を取るために入れた鶏ガラや野菜を取り出す。


 そこへ鶏肉や野菜を入れ、一煮立ちさせる。そして鶏肉に火が通ったのを確認し、洗った米を入れた。


「これ美味しいですよね。強いていうなら卵を混ぜ入れたいところです。」


「卵かぁ…羊は手に入ったから鳥も行こうかな。そのためには穀物も多めに育てないと…収量上がっているから穀物多めにしても良いよな。」


「異空間収納問題が無くなったとはいってましたけど、この調子で作物育てていたらまた問題になりかねませんしね。」


「まあ消費追いついてないしな。」


 フォルンの言う通り、時空ムロの収納限界問題は稲作の紋章を得たことで解決した。稲作の紋章を得たメスティの魔力量と能力値は大幅に上がっている。どの程度限界値が増えたかはわからないが、当面は平気なはずだ。


「まあそんなこと考えるよりも夕食できるからみんなを呼んできてくれ。」


「わかりました!」


 夕食の配膳を始めるメスティ。そこへ仕事を終えたガルたちが戻ってきた。そしてその背後から今日の研究を終えたアリルが入ってくるとそのままの流れで暗殺者の入った檻を開ける。


「よし、全員揃ったな。それじゃあいただきます。」


 メスティの号令のもと食事が始まる。メスティと暗殺者の前にだけ白米がよそられているが、他のものたちの前にはない。だがその代わりのものがある。


「お!今日の雑炊肉がゴロゴロ入ってる!」


「鳥の骨で出汁取りましたね?」


「あ〜〜…鳥の油分が美味しい……」


「また腕あげただろ。今日はいろんな鳥を使っているから味に深みがあるはずだ。」


 皆、メスティの作った鳥雑炊に舌鼓を打つ。これが一番皆が白米を美味しく食べられる方法だ。味気のないただの白米では満足感がなかったが、これならば皆大喜びする。


 ちなみにこの雑炊を思いついたのは少し前に米を炊くのに失敗し、米が固かった時に余ったスープに入れたのがきっかけだ。スープの旨味を吸った米が美味しいと言うことでほぼ毎日雑炊を作っている。


 ただメスティと暗殺者だけは普通の白米も気に入っているので、雑炊を作る前に別に保管しておく。


「これ今日の米も洗ったんですか?」


「ああ、炊き上がった米を洗った方が雑炊をするのにはやっぱり良い。ドロドロした感じも良いけど、このサラッと食べられる方が美味しい。」


「あ!今日も米やったなら米糠出てますよね?」


「あるけど…それがどうかしたか?」


「へへへ…実はやって見たいことがありまして。」


 そう言うとおもむろに席を立ち上がり、壺を持ってきたギッド。その壺の中には大量の米糠が入っている。


「そんなにいっぱいの米糠どうするんだ?」


「おぼろげな記憶なんですけどね、木屑の中に野菜を入れて保存しているのを思い出したんです。もしかしたらこの米糠も作物の保管に使えるんじゃないかって。」


「あ〜…確かにそんなのあったかも。」


 ギッドの発案に興味を持ったメスティ。今はもう時空ムロの中には余裕はあるが、今後余裕がなくならない可能性も十分にある。そのための実験だと思えばやる価値はある。


「とりあえずさっき採ってきた作物をいくつか…」


「葉物はやめた方が良いんじゃないか?取り出した後に米糠を払うのが手間だ。」


「それもそうですね。あ!それじゃあ萎びやすいキュウリで試しても良いですか?」


「あ〜…いいんじゃないか?米糠払うの簡単だし、萎びやすいから保存できているのかわかりやすい。」


「それじゃあ入れてみますね。これでうまくいったら河童にキュウリを渡す時に緩衝材としても使えますね。」


「それもそうだな。なかなか利点が多いな。とりあえず2〜3日放置してみよう。楽しみだな。」


「はい!」


「盛り上がっているところ悪いですけど、まだご飯中ですよ〜」


「そうだったそうだった。飯が冷める。ほら、戻るぞ。」


「はい!」



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