表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/93

第61話 成長して知る

投稿一回忘れちゃった…

「お!もうここまで来てたか。」


 メスティは駆ける足を止める。メスティの駆ける速度によって生み出された風がふわりと周囲の草を揺れ動かした。そんなメスティの目の前には荷馬車から顔を覗かせる、満面の笑みを浮かべたアリルの姿があった。


「お疲れ様です!もう引き渡しは終わったんですか?」


「ああ、スムーズに済んだ。細かい話は街まで行ってくれた護衛のやつが話しているから問題なしだ。それに俺は街には近づけないからな。」


「何事もなくて良かったです。私たちも今日中に家に着くっていう話をしていたんですよ。」


「それじゃあ俺も今日くらいはゆっくりしようかな。クラウドシープは問題ないか?」


「はい!スヤスヤ眠っていますよ。」


 アリルの乗る荷馬車の床一面にもふもふのクラウドシープたちが眠っている。どうやらストレスなどで死んでしまう可能性はなさそうだ。


「それよりも私が頑張った話聞いてくれませんか?メラギウス師匠の元で頑張ったおかげでずいぶん上達したんですよ。」


「今の魔力の練られ具合を見ればすぐにわかるよ。でもせっかくだからその実力見せてもらおうかな?」


「はい!」


 嬉しそうに笑顔を見せるアリル。犬ならば尻尾を千切れんばかりに振るっていることだろう。心なしか尻尾が見えるようにも思える。


「それじゃあ行きますね。…錬成領域展開。」


 滑らかに広がっていく錬成領域を感じ取るメスティ。展開速度は以前の倍以上。そして範囲も倍に増えている。そして何より、感知能力が桁違いに上がっている。


「メスティさん見てください。薬草ありました!」


「採取スキルか。錬成領域内の対象物を手元に移動させる能力だな。根っこ付きで収穫したのか。」


「はい!これなら畑で増やせますから。」


「薬草畑を倍以上に大きくするか。そうするだけの価値は十分にありそうだ。」


「それからそれから〜…じゃん!異空間収納!」


「おお!先生そこまでやってくれたか。」


 異空間収納を見せつけるアリルは様々なものを出し入れする。錬金術の加護持ちが異空間収納を覚えるためのプロセスはメスティも知っていたが、そのためにかかる費用はなかなか手痛い。


 しかしメラギウスはアリルのためにとそれにかかる費用を全て賄ってくれた。だがそんなことよりもメスティが一番感謝していることは、異空間収納を覚えるための過程をきちんと学ばせてくれたことだ。


 有用な能力を覚えるためにその過程にある能力を軽視し、きちんと学ばない加護持ちは数多い。そういう奴は後になって軽視した能力の有用性に気がつき、後悔するのだ。


「どうせだから使えそうなものはどんどん回収して行ってくれ。異空間収納はどのくらいはいるんだ?」


「それが…まだ全然入らないんです。普通のリュックサック2〜3個分ですかね。もっと容量があればこの荷馬車の数も減らせたんですけど…」


「まあ覚えたてだからそんなものだ。ちなみに先生の異空間収納は城の宝物庫数個分はあると言われている。本人もその容量は詳しく知らないけどな。とりあえずは城の宝物庫を目指してみな。」


「わかりました。頑張ります。今は採取を……あれ?この辺鉱物が多い。」


「ああ、それはこの荷馬車の下の影響だ。」


「下?」


 荷馬車から乗り出し、地面を見るアリル。するとそこには見覚えのある砂利が大量に撒かれていた。


「これってもしかして…」


「そ、お前が生成したはずの鉱石の残りカス。まあはじめのうちはそんなもんだ。ちゃんと余すことなく生成したはずの鉱石に鉱物が残っているなんてな。」


「う…もっと余すことなくできるようになりたいなぁ…で、でも!鉱石から鉱物を取り出すのもできるようになったんですよ!」


「そいつは良いな。それじゃあ…」


 メスティはそういうとさっと荷馬車から飛び降り、着地と同時に地面に撒かれている鉱石の砂利を掴むとその勢いを殺さぬように飛び上がり、荷馬車へ戻ってきた。


「ほら、これならやりやすいだろ?」


「見ててくださいよ。まずは錬成領域で感知をして……」


 するとアリルは難しそうな表情を取る。そして何度か首をかしげると何かに驚愕したのか汗を垂らした。


 そして無言のまま鉱石に膨大な魔力を流し、金属成分だけを取り出す。それを見ていたメスティはまだ鉱石系の魔力による精製は苦手なのかと思っているとアリルは小さな金属の粒を取り出した。


「メスティさん…これ……」


「ん?ずいぶん小さい粒だな。鉄…じゃないな。色が違う。ん?なんだこれ…」


「ミスリルです…」


「…まじで?」


「ミスリルです……多分…ここにある砂利のほとんどから感じ取れます…」


 アリルはまだ手に持っている砂利からミスリルがあることを感じ取っている。そしてそれが事実だとしたら、この道路に撒かれている砂利にも同じようにミスリルが…


「ミスリルの感知は先生から教わったのか?」


「はい。メスティさんは…」


「ミスリルなんて見たことないな。団長の本気装備には使われているらしいが、ミスリルの表面を他の金属で覆っているから見えない。そういやシェムーの腕輪にも使われているって話だな。」


「はい。表面を他の金属でメッキしているので目には見えませんけど…」


「それで…お前の感知ではその砂利にどの程度ミスリルがあると出ている?」


「多分…この一掴み分の砂利の中に小指の爪前分くらいは…」


「それは……ものすごい量の含有量だな。」


 ミスリル鉱山と呼ばれる鉱山がかつてあったらしいが、そこの鉱山で取れたミスリルの量は100キロほどだ。


 100キロと聞くと多いように思うが、標高2000m級の鉱山を穴だらけに掘ってようやくその程度の量しか集まらなかった。1トンの砂利から1グラムのミスリルが出れば大喜びするようなレベルなのだ。


 それがここでは一掴みの砂利から入手できる。そんな砂利が街道を作るために大量に撒かれている。そしてその砂利はあの河童からいくらでも入手できる。


「メスティさん…これって……」


「ああ、そうかもしれないと考えていたが、確定だな。あの河童…魔大陸側の住人だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カッパのおっさん、ボッタクリだと思ったら物凄く気前が良かった ……いや、魚はボッタクリ価格だわ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ