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この世界の秩序


 秤君の説明によると、この国では百年程昔、革命とも呼べる変化があったらしい。


 犯罪の増加と激化に危機を感じた王様が、国民の八割を超える支持を獲て人権に関する法律をがらっと変えた。

 傷害・暴行・強姦・違法薬物摂取・殺人など、他者を著しく傷つける若しくはその可能性がある類の犯罪者の人権は、身分や犯罪歴に関係無く否応なしで剥奪される。たとえ軽犯罪であっても裁判の結果次第では剥奪されることがある。

 犯罪者の人権が失われることにより、刑罰に関しても大きな変化があった。簡単に言うと、自分が侵した罪がそっくりそのまま自分に返ってくるらしい。


 結果として人口は多少減ったが、言うまでもなく治安は良くなり善良な人間が安心して暮らせるようになった。


 革命と同時期に開発された「クライムポインター」の実装が全国民に義務化された。Crime Pointerを略し、CPと呼ばれているらしい。

 この国では、産まれた時にチップを埋め込まれる。そのチップが感情や罪の意識とかと深くシンクロしているんだとか。


 犯罪を犯すと頭上に常に赤いポインターが表示される。過去に犯罪歴があればオレンジ色のポインターが。これで犯罪者だと周囲にひと目でわかる。

 犯罪を犯そうもんなら社会に居場所は無くなるだろう。


 少年法も廃止され、年齢に関係なく他者に害をもたらす存在は周知される。調べれば一般人でも罪状までわかる。

 そして警察は過去の犯罪者の現在地は勿論、動向さえも把握しているってんだから徹底してる。


 さらに凄いのは、迷惑人条例。俺が何よりも吃驚した制度だ。

 すれ違うだけの赤の他人に対して匿名でクレームを入れる事ができる。周囲に害をもたらす人間に対して«迷惑認定ボタン»を押せるのだ。このボタンは通称、TCS(Trouble Certification Switch)


 つまりは迷惑を掛ける人間に対して、コイツは有害な人物だって評価をする事ができるってボタンらしい。

 人に対してだけじゃなく、不法投棄とか迷惑駐車でも報告すれば対害委員会が調べ上げて犯人を特定するんだって。

 委員会凄いけど、有り得んくらい忙しいだろ。あっちの世界だったらずっとポチポチしてたわ。


 評価はステータスを表示できるデバイスがあれば誰でも簡単にできるんだと。ステータスとか、いよいよゲームっぽいな。


 対害委員会に報告すると、そこかしこを飛んでいるカメラ付きのドローンみたいなんの映像を元に事実確認と通報内容の調査が行われる。確認が取れ次第、対象の人物に迷惑ポイントが加算される。

 一定の迷惑ポイントが溜まると、黄色のポインターが現れる。これで有害人物確定って事になって、一定数の慈善活動と素行調査で改善が認められるまでポインターが消えないらしい。

 これは地獄だな····。


 国民は常に監視されている。他者からの監視と通報、罪の意識や犯罪の知識と認識とかによってポインターが出現する。

 めちゃめちゃ厳しい割に結構曖昧なとこないか? まぁ窮屈なようだが、善良な人間にとって監視されることは差程苦にはならないみたいだ。周囲を気にすんのは犯罪者だけってか····。

 これらのおかげで、誰もが秩序を乱さぬよう規律正しく生きるよう心掛けている。それが当たり前の世界なんだ。真っ当な人間には、この上なく有難いシステムだよな。

 ペットの放し飼い、乱暴な運転、煙草やゴミのポイ捨て、参観日の保護者の私語、遅刻、等々····。

 ルール違反からマナー違反まで、それぞれ1ポイントから悪質なものは10ポイントまである。15ポイント貯まると黄色いポインターが出現する。

 こんなんソッコー貯まんじゃね?


 些細な、個人的な迷惑も例外じゃない。でも、だから、他人に迷惑を掛けない生き方を意識し続ける。

 残念なのは、ここまでの制度をもってしても、迷惑をかける人間は消滅するわけではなかったんだ。少しくらいなら、自分は大丈夫、そんな意識はなかなか全て無くならないものらしい。



 あと、俺やっぱ転生····いや転移か。確定だよな。生きてたんは儲けもんだけど、なんだかなー····。

 立派なソファに座って見上げた天井は、すっげー高く感じた。





ーーーーー



(はかり) 陽治(ようじ)

年齢:20歳、身長:175cm

公平な性格。

祖父が経営する秤法律事務所で弁護士見習いをしている大学生。

要に懐き、弟のように扱われる。

趣味:ボランティア

一人称:私(プライベートでは僕)

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