マー君の観察
マー君が転校してきてから、はや1週間。
私の生活は一変した。
毎日、家を出る時から、マー君に会えると思うだけで浮足だってしまう!
道を行けば、まるでバラが咲いているかのような輝きに満ち溢れ、小鳥達の賛美するさえずりが心地よい。
人生は素晴らしい。
嬉しさのあまり、ついつい小気味良いスキップを刻んでしまう。
ただ、そんな浮かれ気分での登校にも一つ問題があった。
それは、マー君が幼馴染だとわかった時の事。
『うわぁー! みなっぴだ! ばり変わったね! いっちょんわからんかったよ』
『……あははっ、だ、だめだよマー君。乙女に対して変わったって言葉は、必ずしも良い意味にはならないのよ?』
『え? そうと? ご、ごめんなさい』
『良い子ね。今度からは気を付けなさい?』
『うわ、ちょ!? 子供じゃなかとやけん頭撫でんでよ!』
『女心がわからないうちはまだまだ子供よ』
私はあの時、慌てて妙な『お姉さんキャラ』を演じてしまっていた。迂闊だった。
マー君は幼い頃の私を知っている……。
あの頃の私はメガネにオカッパ頭だったし、今とは違ってちょっとばかりふくよかだった。あくまで、ちょっとだけ……。
だから、そんな過去は是非とも秘匿しなければならない。
それを悟られない様に変わった自分を前面に押し出して、カモフラージュしてしまったのだ。
できればもっと触れあいたい、だけどお姉さんキャラとショタコンの矜持がそれを許さない……。
私の首の皮一枚残った常識という概念が、何とかその一歩を踏みとどまらせていた。
許されるのならば、気の赴くままにあの小さい身体を……おっとっと。
とにかく、私はマー君の前では完璧なお姉さんキャラでなくてはいけないのだ!
そして、思う存分マー君を視姦して最高の学生ライフを満喫するのよ!
「おはよー!」
そうして、今日も元気よく教室のドアを開けた。
「あっ! みなっぴおはよー!!」
相変わらず懐かしいあだ名と元気な声で挨拶を返してくれるのは……。
猫耳カチューシャ姿のマー君だった。
「ングフゥ!!」
私は咄嗟に右手で口の緩みを隠し、その場に片膝をつく。
何という破壊力!! 一瞬にして私の表情筋が持っていかれてしまった!!
教室入っていきなりとは、不意打ちだったわ……ありがとうございます。
「みなっぴ大丈夫? 具合でも悪かと?」
猫耳カチューシャをつけたままのマー君が近づいてくる。
今きちゃダメ! 萌え死する!! かわいすぎて昇天しちゃう!!
口元を押さえたまま必死にこないでと目で合図するも、テトテトと歩み寄ってくるマー君。
あ……。私、今日死んでもいいかも……。
そう思った直後。
「はーい、大丈夫だよマコト君すぐ治るから」
「おう?」
近づいてくるマー君を後ろからヒョイと持ち上げたのは、親友のユリだった。
ユリは私にパチリとウインクをして、そのままマー君を席に座らせてくれた。
ユリとはこっちに来てからの友人だけど凄く馬が合い、私のショタ好きを唯一知る人物だ。
多分あの猫耳はユリの仕業に間違いないだろう。
私はなんとか立ち上がり、ユリの耳元で忠告した。
「あんたマー君になんて事してんのよ! 危うく私……」
「え? 可愛かったでしょ?」
「はい、ご馳走様でした」
「よろしい」
くそ! 手のひらの上で遊ばれている感が否めない!
でも、的確かつピンポイントで私のツボを押さえてくるセンスと行動力は高く評価せざるを得ない!!
私は脳内でユリに罵倒と賞賛をあびせ、何食わぬ顔で席に着く。
「むー、まさか猫耳カチューシャつけられとるとは思っとらんかった……」
マー君が机に顎を乗せてさっきの事を嘆きながら口を尖らせている。
はい!! かわいい! 不貞腐れショタかわいい!
椅子が高い為、足は床から微妙に離れているので、プラプラしているのも高得点だよ!!
あぁ……隣にこんなかわいい幼馴染のショタがいるなんて、私は幸せ者だぁ。
こんな感じで私の毎日は、スタートするのだ。
その後も、マー君のショタカワ行動は治りを見せない。
バスケ部の同級生に肩車してもらい遊ぶマー君。
お弁当のウインナーを床に落としてしまい悲しそうな顔をするマー君。
体操服のハーフパンツが膝下まであるマー君。
居眠りしてヨダレを垂らすマー君。
んはぁーー!! もうね! もうね!! 見てるだけで愛が止まらない!!
かわい過ぎて手が震える!!
そして、この思いをぶちまけられないもどかしさが、歯がゆいの!!
大人びたお姉さんキャラ演じるのがなかなかきっついの!!
もう授業なんて聞いていられないの!!
私はこのまま一生マー君を視姦し続け……。
「みっちゃん……みっちゃん!!」
「!?」
不意に肩にポンと手を置かれた事で、正気を取り戻した。
「ユリ!? なによ!?」
「いや、もう下校時刻だよ……」
「え!?」
気づけば教室には私達以外誰もおらず、時刻は17時を回っていた。
妄想にふけっていて時間が鬼のように飛んでしまったようだ……いつの間に……。
「んはぁぁ……ユリどうしよう、マー君が素敵すぎて、ショタ尊死するかもぉ……」
私は全身の力が抜けたスライムのように机に突っ伏した。
「みっちゃん、マー君にぞっこんなのはわかるけど、一日中舐め回すように見るのやめないと引かれるよ?」
「っな!? バカな!? 私そんなマー君ばっかり見て……」
「見て?」
「……ます」
迂闊だった……マー君を視姦し過ぎて、完全にトリップしてしまっていたようだ……。
「はぁー、あんたマコト君来てからずーっと視姦しっぱなしだよ。マコト君も気づいてない振りしてくれてるけど、あれは完全に気づいてるよ?」
「えぇえ!? 嘘!? やだ、マー君……私の愛に気づいて……」
「違う、そうじゃない」
そんな浮かれた会話をした後、私とユリはコッソリとマー君が入った部活を見学、もとい視姦しに来た。
なぜかユリの目に光が無いように見えるが、どうしたんだろう?
でも、細かい事は気にしない事にした。
なぜならユリに構っていられるほど、こっちも暇では無いのだ。
実は、マー君が入った部活はなんと柔道部!!
なんでも、小さいながらに強くなる事が目標なんだとか。
背伸びして強く、カッコよくなろうとするマー君……これもまた良い!!
同じ動機で高校生がやっても全く萌えないが、マー君がやるとその意味が尊さの高みへと昇華する!!
なんて健気で素晴らしいのだろうか……あの汗臭くて汚いと思っていた柔道が、こんな煌めくスポーツに見えるなんて!
でも危険なスポーツには変わりない! マー君が怪我したらいけないので、私は人知れず息を潜めて見守るのよ!!
そして、怪我してしまったマー君をいち早く保健室に運び……。
「……ッグ、グフフフフ……」
「気持ち悪い声漏れてるよ、みっちゃん……」
「ッング!?」
「はぁー、みっちゃんはなんでマコト君みたいな、ショタが好きなんだろうね」
ユリがため息をつきながら、疑問を投げかけてきた。
「ショタ好きに理由などないのよ……気づいたらショタ好きになっていた。気がついた時には、なるべくしてなっているものなのよ」
「そんな哲学的に言われても……」
ユリから呆れたような返事が返ってくるが、正直私もよくわからないのだ。
気がつけばショタ好きだった。
何がきっかけだったのか、私にも全くわからない。
でも、小さくてかわいいショタが大好きなのだ。
理由はこれさえあればいいのだ。
愛に隔たりは無いのと同じ扱いなのだ。
「あれぇ!? こんなところで女子がなにやってんのぉ!?」
「「!?」」
振り返ると背後に制服をだらしなく着崩した、不良らしき三人に囲まれていた。
実はわたし、ショタ界隈の事情は殆ど存じておりません!
ノリと勢いのみで執筆してるんだけど、これ合ってる!?
ガチショタ勢の方々から壮絶なバッシングを受けるのではないかと……日々ガクブルしてるんだよ!
まだまだ、熱意が足りない!!
ここの表現甘すぎる!!
貴様をショタにしてやろうか!?
などなど、そこんところ教えてくれ!ショタ好きの人ぉおおおおおおお!!!!
お願いしまーすぅ!!!!!!
あと、よろしければ下の星をポチッとして頂くと作者が喜びます!
よろしくお願いします!