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転校生がやってきた

 朝、私が教室の扉を開くと、玉のように飛んでくる1人の女の子がいた。


「おっはよー! みっちゃん! ねぇ!? 知ってる!? 今日転校生が来るみたいよ! し・か・も・男子という事がわかっているのだーー!! んふふ、ワクワクするねぇ!!」


 教室に入るなり、親友の中村ユリが肩に腕を回し絡んでくる。いつもの光景だが今日は一段とウザい。


「んー私はあんまり興味ないなぁ……」


 いつもの様に軽くあしらい、自分の席に向かう。


「むー、みっちゃんは学生生活を楽しもうとする気概はあるの!? 勉強や部活動ばっかじゃ、せっかくの青春が灰色だよ!? ねぇ、もっとラブコメみたいな事しようよぉ〜」


「あーもー! 暑苦しいから離れなさい!! 私はそういうのはいいの!」


「いだだだだだだ!! ごふぇん! みっひゃんギフ! ギフゥ!!」


 暑苦しく私に絡んで来る親友の頬を抓って撃退したのち、私は朝のホームルームが始まる前に一番前の窓際の席に着き、外を眺めた。


 初夏の水分を含んだ空気を透す日光が、立木の間から色ガラスの破片を散りばめたような光となって教室に降り注ぎ、外を眺めると、隣の小学生が校庭で元気に遊ぶ姿がよく見える、


 私は、村尾ミナミ、どこにでもいる生の高校二年生だ。


 少し開けた窓からは、朝の爽やかで滑らかな風が、木々と軽い土埃の香りを鼻先まで届けてきてくれる。


 耳を清ますと、葉が擦れる騒めきと、小学生達の元気な声が、耳を楽しませてくれる。


 あぁ、なんて清々しい朝だろう、心が洗われていくようだ。


 この時間に席で外を眺めるのは、私の1日の活力を補給する大事な時間なのだ。


 見て、香って、聞いて、肌で感じる……。


 心に潤いと活力が、じんわりとみなぎってくる。


 正に至福の時間……そんな時間を過ごすなかで自然に笑みが溢れてしまうのは極自然なことだと思うの……。


 なぜなら私は……。













 ショタ好きなのだ!!


 窓の外では朝から元気が有り余ってるショタ様達が、組んず解れつの遊びを繰り広げている!


 ブランコの取り合いで絡み合うショタ様!

 シーソーで背中から下級生へ腕を回し、落ちないように支えるショタ様!

 鬼ごっこをして朝日に照らされ、きらめく汗をかくショタ様!


 いっそのこと私も混ざりたい!

 混ざって汗ばんだ頭皮の匂いを嗅いだり、執拗なボディタッチを繰り広げたい!!


 社会や人間のエゴなどの汚れを知らずに、遊び回る無垢な笑顔がたまらない!

 朝すれ違うと、無邪気な笑顔で積極的におはようと挨拶してくる姿がたまらない!


 でも手を出してはダメ!! 私の脳内が許しても、社会がそれを許してくれない!


 ああ……なぜこんなにも尊い存在を愛でるのがいけないのか……なぜ、犯罪となってしまうのか……。


 戦国時代では小姓ショタは合法、もとい正義ですらあったのに……。


 っく……この世が憎い、この社会が憎い。


 しかし、私は理性あるショタ好き……内心では社会を罵倒しようが、それも受け入れてショタを視姦する事で内包する思いを抑え込めるように、自身を作り上げてきた強者!


 もし、手を出して鉄格子の中に入れられようものならばショタを視姦する事もできない。


 そんな拷問考えられない……。


 だから私は耐えるのだ!! 毎日ショタを視姦する為に!!


 そんな脳内葛藤を繰り返している中、教室にいる皆んなは、転校生が来るという一大イベントの話題で盛り上がっていた。


「コラー! 席につけー!!」


 担任の先生がいつも通りに、軽く生徒に檄を飛ばして教卓の前に立つ。


「えー知ってるやつもいると思うが……転校生がウチのクラスに来ることになった」


 クラス中がどよめき立つ、そりゃそうだ朝一番の話題だったのだ。


 だけど私は全く興味がない……高校二年生の男などショタでもなんでもない。


 すでに毛の生えた、頭の中が性欲しかない生き物にどう萌えろと言うのか……。


 私は、話半分くらい聞きながら、窓の外で繰り広げられる、小学校の一時間目の体育の授業風景に口元の緩みを必死に押さえながら視姦する事に戻った。


「……みんな、よろしく頼むぞ……。おーい入ってきて!」


 ガラッ。


「うぉ!?」


「やだ!! 嘘!?」


「は!? マジで!?」


 クラス中がその転校生を見た瞬間、各々驚きの声をあげる。


 あれ?


 クラスの反応が思ってたんと違う。


 もっとこう……「キャーカッコいい!!」とか「なんだ男かよー」とか「結構普通だね」などを想像していたのだけど……。


 私もちょっと気になり、その転校生を見た。


 その瞬間、私はその転校生から目が離せなくなってしまった!!


 いや離せないなど、生温い!! 追尾機構が目標をセットし、自動的に追跡する状態かの如くロックオンしてしまったのだ!!


 瞬きするのも勿体ない程に衝撃を受けた私の目に飛び込んできたのは!!


 ワイシャツは何度も折りたたんで捲り上げられ、ズボンもどれくらい裾上げしているかわからない程、無理矢理小さくした学生服!!


 まるで、小学生が高校生の男子学生の制服を無茶して着たような見た目の少年が、テクテク教室内に入ってきていた!!


 顔立ちは整ってるし、さらさらの黒髪で女性かと思うくらい白い肌をしているイケメンで、背丈は120㎝を越えたくらい……正に正統派!! 私のど真ん中、ドストライクのショタがそこにいた!!


 クラス中がその異常な姿に目を丸くしている中、その子が黒板に自分の名前を書こうとした……。


「あ……」


 少年は隣に立つ先生のズボンの裾を引っ張り、何かを伝えると。


「「「「「んぐふぅ!!」」」」」


 クラスの所々から漏れ出る、押し殺す声。


 それもそのはず……目の前には先生に脇を抱えられて名前を書く少年。


 何あの可愛いの権化は!! こんなベタな展開、リアルで見るとかたまらない!!


 クラスの皆も同じ様で何人も机に顔を伏せて肩を震わせていた。


 勿論、私もそうしたいが、なにぶんロックオンしている目が離せなくてな……。


 私はにやけそうになる口元を必死に両手で隠して、その少年の後ろ姿を堪能した。


 名前を書き終わり、先生が少年を降ろすとこっちに振り返って、ニカッと笑い挨拶を始めた。


 ピシッと姿勢良く起立して教室を見渡して、軽く一礼する。


「黒瀬マコトです!! 背は低かけど、同い年の高校生やけん、よろしくお願いします!!」


 再度深々と腰を折り、元気な自己紹介をしたマコト君。


 声変りしていない高い声でいながら、ハキハキとした発声。私にとって超絶ベストなソプラノパートの耳心地が良い可愛い声だ。


 更に、イントネーションが九州弁っぽい方言ショタという萌え属性付き!!


 ガタガタガタガタガタガタガタ……。


 自然に体が震えだす……これは怯え!? いや違う!! 歓喜の武者震いだ!!


 抑えるんだ!! 抑えるんだ私ぃいいい!! 必死に両腕で体を抱きしめて自分を抑え込む!


 もし、ここで私がこの両腕を離したら今すぐに彼の元へ行き、欲望の赴くまま少年誌には書けない、あんな事やそんな事してしまうかもしれない!!


 くぅ!! なんて、恐ろしい子!! ここまで私の心を鷲掴みにした子は初め……。


 ん? でも、ちょっと待って……さっきマコト君なんつった?


 “同い年の高校生やけん”


 そうだ、同い年だ……この見た目と愛くるしさで、性欲の塊の奴らと同類だと言うの!?


 いや! 違う!! あんなのと一緒にしたらいけない!! マコト君は激ピュアなの!!


私の脳内が同い年という情報で拒絶反応を起こすが、この見た目とのギャップに超絶興奮している私もいる!


私は未だかつてない程の錯乱と混沌の中に飛び込んでいた。


「じゃあ席は……」


 私がマコト君の事で葛藤をしている間に、先生が空いている席を見渡す。


 誰がわたすものか!!


 私はマコト君が高校生だと言うことは理性と一緒に放り投げ、今は欲望に忠実に生きる事を即断した!


「先生! マコト君は小さいから前の席がいいと思います!」


 私はピシッと手を上げ、隣の席を指差してマコト君を座らせるよう志願した。


「え? いや、ここ俺の席」


 しかし、すでにそこには、なんの特徴も無く、驚き方もモブっぽい田中が座っていた。


「あなたが、どけばいいじゃない」


「え? 俺? なん……」


「ど・け・♪」


「は……い……」


 ふん……田中、そういう所だぞ?


「先生!! 空きましたよ!!」


 普段はやらない会心の笑顔を作り、先生へのアピールも欠かさない……何故なら、マコト君に好印象を持ってもらいたいから!!


「お、おう……じゃあ、黒瀬君……あそこで」


「はい!」


 ッッッシャァア!! マコト君の隣ゲットォオ!!


 これから、私の高校生活は一年中桜が満開のような、きらびやかな物になると確定した!


「よろしくね、マコト君♪」


 私は内心の溢れんばかりの欲望を抑え込み、普段と変わらないように笑顔で挨拶した。


「うん! よろしく……ん? ……んんん!?」


 マコト君が不意に、グイッと顔を近づけてくる!?


 ふわぁああ! かっ……可愛い! 今すぐむしゃぶりつきたい!!


 口と眉をへの字に曲げてくすみのない綺麗な瞳で見つめられたら……私、制御効かなくなっちゃう!


 た……耐えるのよ! 私! いくらドストライクのショタに見つめられているって状況だとしても、中身は同い年で初対面なのよ!


んっはーー!! でもかわいいーー!!


 そして、ぷりぷりとした小さな口が開いた。


「……あんた……名前聞いてよか……?」


「えっ!? わ、私? 村尾……村尾ミナミよ」


 その瞬間クリクリとした目がさらに大きく見開かれた!


「まさか……みなっぴ!?」


「!?」


 突然耳にする言葉に、体が固まった。


 そのあだ名は……。


 たしか、私が両親に連れられて引っ越しをする前の小さな時の記憶……。


 今でもおぼろげに覚えている、ある男の子の存在……。


 あだ名を皮切に、記憶がどんどんフラッシュバックし、思い出が朧気に蘇ってきた!


「マ……マーく……ん?」


私は記憶のずっと底にあった、1人の男の子のあだ名をつぶやいた。


「うぉお!! やっぱしみなっぴだ!! バリ久しぶり!? 元気しとったぁ!?」


 マコト君が私の両手を握り、キラキラした両目を私に向けてくる!!


「えぇええ!? 本当にマー君なのぉ!?」


 ドストライクショタの転校生は、私が小さい頃の幼馴染のマー君だった。

この物語を書くに当たってショタについて調べたのよ。


なに分ショタなど性癖にかすりもしなかったから……。


しかしどうだ、調べれば調べるほど、ひと昔前まで日常に潜むショタ様は、合法的なやり取りだったという事がわかってきた……。


え?戦国武将って……。お坊さんって……。


この物語を書ききる頃には、私は一般的な性癖でいられるのだろうか!?


ご心配される方、応援される方、いいぞもっとやれ!と煽られる方、等々よろしければ下の星などを押してよ!!と脳内で小さい男の子が言っております。


よろしくお願いします。

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