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付録 「今日のキノコ」図鑑3 (五十音順一覧&キノコ解説)

「キノコ姫」本編のあとがきで「今日のキノコ」として紹介されたキノコ達をまとめました。

 探しやすいように五十音順に並べています。

 加筆していますので、本編あとがきの「今日のキノコ」では書かれなかったキノコ情報もあります。


 本編を読んだ後のお楽しみとしてご利用いただければ幸いです。

 是非、お気に入りのキノコを見つけてみてください。



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 キノコの名前 五十音順 一覧


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 名前(漢字)

 キノコ情報。

「登場したお話のタイトル」


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 です。






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 アイタケ

 アカヤマドリ

 アンズタケ

 ウスキチチタケ

 ウスタケ

 ウズタケ

 ウラムラサキ

 エノキタケ

 オトメノカサ

 オニフスベ

 カエンタケ

 カゴタケ

 カラハツタケ

 カンゾウタケ

 キソウメンタケ

 キツネノハナガサ

 キリノミタケ

 クチベニタケ

 クロラッパタケ

 ケショウハツ

 コウタケ

 コガネタケ

 コフキサルノコシカケ

 コンイロイッポンシメジ

 コンルリキュウバンタケ

 ササイレラ・アクアティカ

 ササクレシロオニタケ

 スナヤマチャワンタケ

 聖堂に生えるキノコ御一行

 セイヨウショウロ

 ソライロタケ

 タマゴタケ

 タモギタケ

 ツチグリ

 トキイロヒラタケ

 ドクササコ

 ドクツルタケ

 ドクベニタケ

 クササコ

 ナメコ

 名もなきキノコ達

 ニセニクハリタケ

 ノボリリュウタケ

 バービーパゴダ

 ハタケシメジ

 ハナオチバタケ

 ハナビラタケ

 ハンガリアンスイートトリュフ

 ヒイロタケ

 ピクシーズパラソル

 ヒトクチタケ

 ブドウニガイグチ

 フユヤマタケ

 ベニテングタケ

 ベニナギナタタケ

 ベニヤマタケ

 ヘビキノコモドキ

 マツタケ

 ムキタケ

 ムラサキシメジ

 ムラサキヤマンバ

『木材腐朽菌倶楽部』御一行

 ヤコウタケ

 ヤマドリタケモドキ

 ヤマブシタケ

 ワカクサタケ


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 アイタケ(藍茸)


 青みがかった緑色の傘にひび割れが入っているキノコ。

 歯切れの良さはないが味は良いらしいが、生食や大量摂取は避けた方がいいらしい。

 ……何が起こったのだろう。

 緑青という言葉に「見て見て、似てるよね!」と傘を見せにきた。

 アニエスにむしられた上にクロードにも握られて、苦しいけど嬉しい複雑なキノコ心。

「アニエスの瞳の色を、アイタケ色と呼んでもいいと思う」と主張しているが、キノコなので気付かれない。


「オレイユ王族とキノコの御挨拶」


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 アカカゴタケ(赤籠茸)


 別名の行灯茸の通り、赤い籠のような見た目。

 英名はLatticed Stinkhorn(悪臭角笛格子)で、つまり臭い。

 白い球菌が成熟して裂開し鮮紅色の格子が出てきて、その後籠が二つに割れて反り返る。

 この見た目で臭いのに食用らしいが、世界にキノコの勇者は何人存在するのだろう。

 いつか籠の中に蝋燭を入れてアニエスと行灯ごっこするのが夢。

「暗くなったら、行灯になってあげるね」とアカヤマドリの上で出番を待っている。

「待って。蝋燭って熱い?」と今更炎が心配になってきた。


「会いたい」


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 アカヤマドリ(赤山鳥)


 黄褐色~橙褐色の傘は、直径30cmになることもある大きなキノコ。

 成長すると傘にひび割れができ、焼き立てのパンのようにも見える。

 巨大メロンパンという感じで、毒はないが虫がつきやすいらしい。

 アニエスを衝突事故から守ろうと急いで生えて、緩衝材の役割を果たした。

 シモーヌの謝罪を受け入れ「これからは気をつけな」と菌糸の余裕を見せて諭したが、キノコなので伝わっていない。

 落下物から皆を守るために生えてきた、緩衝材キノコ。

「アニエス達は守るから、もっとやれ!」と『木材腐朽菌倶楽部』を応援している。

 その見事な瓦礫の弾き方に、キノコ達の一部が憧れて筋トレ……菌トレに励み出したという噂。


「禁断症状が出たようです」「会いたい」


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 アンズタケ(杏茸)


 橙がかった鮮やかな黄色の傘を持つキノコ。

 ヨーロッパでは食用だが、国内では毒キノコ……どういうことだろう。

 肉の部分は強い杏の様な香りがする。

 クロード愛用の香水の材料で、まさかの香水加工に本人(本茸)が一番衝撃を受けている。

「アニエスを包む香りのもとは私! つまりアニエスを包み込んでいるのは私!」とキノコ達に自慢し、喝采を浴びている原材料キノコ。

 結果、「アニエスを包みたい」というキノコ達に囲まれて何だか幸せ。


「せめて、その隣に」


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 ウスキチチタケ(薄黄乳茸)


 淡い黄土色の傘を持ち、湿った環境ではぬめりが出る。

 傷がつくと米のとぎ汁状の液体が出て、空気に触れると淡い紫色になる変身キノコ。

 苦みがあり食用には不向き……またキノコの勇者が味見をしたらしい。

 薄いという言葉に反応して生えてきたらクロードに乳を褒められ、嬉しくなったので乳を多めに出している。

「頑張ればアニエスのドレスを紫色に染められる気がしてきた」と提案しているが、キノコなので届かない。


「祈りの泉で願うことは」


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 ウスタケ(臼茸)


 赤いラッパ型の傘を持つ毒キノコ。

 消化器系の中毒を起こすが、特徴的な味はない……また、誰か食べたらしい。

 ラッパ型でもキノコなので音は出ないことに気付いたが、諦めなければいつか音が出るのではないかと、特訓中のキノコ。

 クロラッパタケと共に摩擦音という新たな境地にたどり着き、ラッパ型キノコの可能性を感じている。

「アニエスのそばにいたい」というクロードの言葉に賛同しファンファーレを鳴らすつもりだったが、やはり単独で音は出なかった。

「結婚式には、ファンファーレを鳴らす!」と意気込みながら、クロラッパタケと摩擦音を奏でている。

 摩擦のせいで少し傘が熱いのが目下の悩み。


「少しずつ、慣れてね」「早く、結婚したいね」


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 ウズタケ(渦茸)


 傘裏のヒダが同心円状という、まさかのぐるぐるキノコ。

 暗褐色と地味色ではあるが、フリフリドレスのペチコートだと思えばエレガント。

 ぐるぐるには気苦労も絶えず、一部網目状になる子も多い。

 傘の表に剛毛を生やすこともあるが、中国名の「肉桂色集毛菌」という名前には納得いかないおしゃれキノコ。

 華やかなドレスという言葉に、自分の出番だと自信満々にフリルを揺らしている。

「アニエスとお揃いのフリフリ!」と喜んでおり、あとで皆に自慢しようと思っている。

「これがアニエスとお揃いか」とヒダをつんつんされることになったが、それはそれで悪くない。


「花の王と花のドレス」「指輪と精霊の契約」


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 ウラムラサキ(裏紫)


 紫色の傘と柄を持つキノコで、別名アメジストディーパー。

 真紫から淡い紫まで様々で、乾くと色あせるがヒダの色はそのまま残る。

 毒々しい色に反して可食で、風味も歯切れもいいらしい。

 アニエスの「できる」という言葉に反応して生えてきた。

 紫水晶のように輝くキノコになってアニエスに褒めてもらおうと筋……菌トレ中の努力キノコ。

 アニエスの感謝の心に反応して生えてきた……というのは建前。

 本当はアニエスのドレスとお揃いの色なのが嬉しくて、自慢しに生えてきた。


「番の愛は重いらしい」「国王とキノココンプレックス」


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 エノキタケ(榎茸)


 黄褐色~暗褐色の傘は球形から開いていき、最終的には反り返る。

 栽培と野生では姿と味が異なり、野生のものは強い粘性がある。

 シャキシャキした歯ごたえが人気の、くせのない食用キノコ。

「アニエスのために売られたい!」と身を捧げる覚悟で生えてきたが、本当はアニエスに食べられたい。

「アニエス、一本くらい食べてくれないかな」と期待しているが、生では難しいと気付いていない。


「お買い物とキノコの山」


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 オトメノカサ(乙女傘)


 乳白色の傘を持つ、小さくて可愛らしいキノコ。

 酢の物、和え物などにされるが、くせがなくて食べやすい。

 乙女な気配を感じると逃すことなく生えてくる、恋バナ大好きな野次馬キノコ。

「抱っこして運んだ上に、触れたいとか言ってますけどぉー!」と大興奮で生え、その後も楽しそうに傘を揺らして踊っている。

「伝えてぇー! 沢山、伝えてぇー!」と大興奮で傘を揺らしている。

「結婚! けっこ……ちょっと待って、ベッドでいちゃついてますけどぉぉ―!?」と興奮と混乱で絶叫しているが、キノコなので気付かれない。

 キャーキャー言いながらも菌糸の隙間からしっかりと見ている、覗きキノコ。

「きゃー! アニエスから抱き着いてほっぺにチューした! 見た⁉ 見たよね⁉ 甘ぁぁぁーい!」と大騒ぎしている。

 傘を揺らし続けた結果ちょっと酔ったが、興奮は収まらない。


「アニエスに触れたいから」「少しずつ、慣れてね」「早く、結婚したいね」「一緒に幸せになりましょう」


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 オニフスベ(鬼瘤)


 またの名を、ジャイアントパフボール……この名で大体理解できるが、白くて大きくてフカフカなボール型キノコ。

 一夜で発生したり、五十センチを超えたりする、夢の白い球体。

 成熟すると褐色になり、外皮が剥がれて胞子とアンモニア臭が出てくる。

 白いうちは食べられるが、美味ではなく不味くもない……何故そこまでして食べるのか。

 窓から飛び降りるアニエスを受け止めようと、菌糸をフカフカにして待機した救助系キノコ。

「アニエスに撫でられた!」と喜んで仲間のもとに帰って行った。

「アニエスが撫でた部分は、菌糸が違う」と主張しているが、実はどこだったか忘れたのは内緒。


「脱出とキノコ隠滅」


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 カエンタケ(火炎茸)


 燃え上がる炎や鹿の角の様な形の、赤いキノコ。

 致死量は数グラムで、触れるだけでも毒素が吸収されるという、猛毒キノコ。

 ササクレシロオニタケの緊急通報と、アニエスの心に反応して生えてきた、毒キノコ界の重鎮。

 触れるだけでも皮膚に炎症を起こすので、生えた部分の毛根はほぼ、もげることだろう。

「キノコのお姫様を泣かせた罪は、毛根をもって贖え」とお怒りで、全毛根の抹殺を宣言した。

「ドクササコとドクツルタケはやむを得ず撤退したが、私は最後まで毛根と戦う!」と猛毒戦士の誇りを見せつつ、頭の上で揺れている。

「この密度で生えると、毛根を撲滅しても赤い毛が生えているみたいだな」と気が付いた。


「会いたい」「精霊の沙汰」


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 カゴタケ(籠茸)


 アカカゴタケの友人で、こちらも白い球菌が成熟して裂開するが、出てくる格子も白い。

 爽やかな白い籠だが暗緑色の粘液をまとっていて、やはり臭い。

 そして臭いのに食用。

 転がる草で有名なケセランパセランに親近感を持っていて、いつかアニエスに転がされたいと思っている。

「アニエスを泣かせた国王を粘液まみれにしてやる!」とアカヤマドリの傘の上から狙っている。

 傘の上でバランスを取るのは意外と難しく、ゆらゆら揺れながら頑張っている。


「会いたい」


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 カラハツタケ(辛初茸)


 オレンジ色を帯びた黄褐色の傘を持ち、饅頭型・平・漏斗型に変身するキノコ。

 消化器系の中毒症状を起こす毒キノコ。

 強い辛味があるので、辛みを感じた場合は飲み込まないこと……その前に、よくわからないのに口に入れるのをやめればいいと思う。

「アニエスが減るから見るな! 口の中に生えるぞ、辛いぞ!」とフィリップを威嚇している。

 いざという時のために、ドクササコ先輩に特攻のコツを聞いてみようと思っている。


「妹だから、兄だから」


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 カンゾウタケ(肝臓茸)


 ヘラ型~扇形のキノコで、色は幼い時は赤紅色、成長すると肝臓のような鮮やかな赤~赤褐色になる。

 肉は赤褐色で白っぽい筋が入る高級霜降り牛肉のような見た目で、美味しいらしい。

 切り口から酸味のある赤い液体が染み出し、「貧者のビーフステーキ」「牛の舌」とも呼ばれる。

「キノコだってアニエスが大好きだよ! 見て、この霜降りボディ!」とクロードと張り合う、お肉キノコ。

「味付け次第で、肉だと言ってもばれない気がする」と変装に興味を持った様子。


「せめて、その隣に」


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 キソウメンタケ(黄素麺茸)


 地面からフライドポテトがニョキニョキという感じの、黄色い棒状のキノコ。

 素麺の名を冠するだけあって食べられるが、食べ応えがないらしく食用としての価値は低い。

 そして、食べるのには勇気が必要らしい。

 自分は勇気の証なのだと、ちょっと誇らし気にニョキニョキしている。

 勇気を出すというアニエスを応援するために生えてきた。

 今日もいちゃつく二人を特等席(肩)で観賞する羽目に。

「いちゃいちゃを見るの、ちょっと慣れた」と言って、二人を応援しようとゆらゆら揺れている。

 こうなるともっといちゃついてほしいが、果たして自分は耐えられるだろうかと心配でもある。


「聞いて、くださいますか」


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 キツネノハナガサ(狐花傘)


 半透明の白い傘に放射状にレモン色の条線が入る様は、まさに和傘。

 細長い柄は中空、傘の厚みはほぼゼロの華奢な姿の通り『最も儚いキノコ』にランクインしている。

 指でつついても風が吹いても折れる、お触り禁止キノコ。

 すぐに変色するソライロタケとすぐ崩壊するピクシーズパラソルとは仲良し。

「アニエスには、お触り厳禁!」とフィリップに警告している。

「アニエスに触られたなら、崩壊も本望」ということで同志達と意見が一致した。


「キノコは置いていけ」


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 キリノミタケ


 球形から紡錘形になり切込みが入って星形に開くキノコで、外は黒褐色で内側はオレンジ色。

 絶滅危惧種の超レアキノコ。

 裂けた割れ目から胞子が白い煙のように噴き出す様から「悪魔の葉巻」とも呼ばれる。

 珍しいというので、自分のことだと喜び勇んで生えてきた。

 だが王子二人の熱い視線に緊張して上手く胞子が飛ばせず、ちょっと落ち込んでいる。

「若い時はそういうこともあるのよ」とヘビキノコモドキに慰められている。


「国王とキノココンプレックス」


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 クチベニタケ(口紅茸)


 傘部分が黄土色の球体で、その頂に赤橙色の星型の孔を持つキノコ。

 たこ焼きのてっぺんに穴が開いていて、穴の端が紅ショウガで染まっている感じ。

 名前通り、まるで口紅をつけた唇の様な見た目。

 以前に披露したダブル・クチベニタケによる模擬チューは、キノコ達に大好評だった。

「今日も手か」と少し残念そうではあるが、アニエスが照れているのでだんだん恥ずかしくなってきた。

「もっとチューしてと思うけど、アニエスに無理させるのは駄目だし」と悩みは深い。


「花の王と花のドレス」


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 クロラッパタケ(黒喇叭茸)


 黒い漏斗型をしていて、ラッパの様な見た目のキノコ。

 別名「死のトランペット」だが、ヨーロッパでは日常的に食べられていて、スープに入れると美味。

 ……ネーミングがおかしいと思う。

 ウスタケと共に生えて、摩擦音でアニエスにアピールしている。

 いつか自力で音を出すのが目標だが、当面は相方のウスタケと共に摩擦音を極めたい努力キノコ。

 結婚という言葉に生えてきたはいいものの寝室だったという事態に、動揺と摩擦音を隠せない。

「結婚前にまさかの展開」と衝撃のあまりモキュモキュが止まらない。


「少しずつ、慣れてね」「早く、結婚したいね」


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 ケショウハツ(化粧初)


 白~クリーム色の地に鮮紅色が乗った傘が、桃の実のような色合いのキノコ。

 薄く紅色に染まった傘から「化粧をした初茸の仲間」という意味の名前で、「初めてのお化粧」ではない。

 成長するとおちょこ型だが若いうちは本当に桃のよう……なのに、カブトムシ臭がする上に食用という、まさかのギャップ系キノコ。

『お化粧倶楽部』の一員だが、他のメンバーはマット系ベースメイク中心のお姉様方なので、センター争いはケショウハツとクチベニタケの一騎打ちという噂。

「アニエスと一緒にお化粧したい」と訴えているが、キノコなので伝わらない。


「早く、結婚したいね」


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 コウタケ(香茸)


 中央にくぼみがある褐色の傘に鱗片が全体に見られ、怪獣感のある食用キノコ。

 干すといい香りがして、味も良い。

 乾燥させて食べるのが一般的で、生だと中毒症状を起こすので注意。

「久しぶりだね。大きくなって……!」とナタンとの再会を喜び、自らお土産に名乗りを上げた。

 ジェロームにも生えたのにクロードには生えない理由は「期待が重いから」らしい。

「あいつ、絶対普通に食べない気がするんだよね」と謎の警戒を見せている。


「精霊の沙汰」


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 コガネタケ(黄金茸)


 黄金色の粉で覆われた傘を持つキノコで、別名はキナコタケ……相当粉っぽいという評価だ。

 一応食用キノコだが生で食べると中毒を起こすので、茹でよう。

 というか、そこまでして何故食べるのか、キノコの勇者達。

 お金と黄金を聞き間違えて生えてきたら、フィリップにむしって投げられた。

「お金も黄金も大切なんだぞ!」と怒りながら、フィリップの靴に粉をまき散らしている。

 靴を金色に染めて満足したが、これはこれでアリな気がしてきた。


「へなちょこの思考はり理解を超える」


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 コフキサルノコシカケ(粉吹猿腰掛)


 傘は灰色や白っぽい茶褐色などで、年輪のような環溝がある。

 年々成長するので、大きいものは五十センチほどになることも。

 名前の通り座っても崩れない耐久性を持ち、頑丈で壊れにくいキノコ……もはやキノコというよりも、家具の説明。

 成長期の傘の裏にメッセージを入れると二度と消えないし、磨くと光沢が出て置物にもなる……やっぱり、家具かもしれない。

『木材腐朽菌倶楽部』の一員。

「アニエスを閉じ込めるなんて、許せない!」と窓枠を腐らせた。

 一仕事終えて「キノコ付きの窓って、いいかもしれない」と新たな方向性に目覚めた家具キノコ。

 聖堂ではこっそり模様を描きながら生えていたが、誰にもバレていない……というか、壁が崩れてしまった。


「脱出とキノコ隠滅」「会いたい」


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 コンイロイッポンシメジ(紺色一本占地)


 濃い青色の傘を持つキノコ。

 毒はないらしいが、色が色なので食べてはもらえない。

 以前、キノコの話し合いでクロードの髪色に一番近いキノコに認定された、青色キノコ代表。

 クロードのことを信頼しているが、理由は「青いから」らしい。

「クロードに相談してごらん。あいつは青いから信用できるよ」と訴えており、青への信頼度は揺るがない。」

 青を失ってしまうソライロタケのことを心配しており、雨が降ると自分の傘の下に入れてあげている。


「せめて、その隣に」


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 コンルリキュウバンタケ(紺瑠璃吸盤茸)


 根元が深い瑠璃色で、その上に半透明の白いカヌレが乗ったようなキノコ。

 下から覗くとカヌレ部分がホイールパスタのようで可愛い上に、暗いと黄緑色に光る。

 傘が1~2mmと小さく特別な味や臭いもない……その前に、何故食べた。

 その恵まれたルックスで色々とグッズも作られる、アイドルキノコ。

「ネックレスにぶら下がるのなら一緒に!」と便乗ぶら下がりを狙ったが、ピクシーズパラソル共々むしられて、ちょっとショック。

「せめて、髪飾りにでも!」と訴えたが、キノコなので伝わらない。


「それは嬉しいな」


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 ササイレラ・アクアティカ


 2010年に新種認定された、今のところ唯一の水中結実キノコ。

 白っぽい傘と柄は地味だが、真珠のように光る気泡をまとって水底にいる。

 川底に菌糸を張って生きるナヨタケの仲間だが、木が沈んでいたら喜んで食べるし、水辺にいたりもする謎のキノコ。

 キノコの傘は胞子を水から守るためのものだが、水中でこの形をしている意味は不明。

「アニエスが来た!」と念願の御対面に気泡を飛ばしてアピールしたら、クロードに絶賛されたので、満更でもない。

 せっかく生えたのにむしってもらえなかったという事実に、翌朝まで気が付かなかった。


「祈りの泉で願うことは」


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 ササクレシロオニタケ(細裂白鬼茸)


 大きなイボが特徴的な白いキノコで、柄の部分にささくれがある。

 全身美白した、ベニテングタケという感じ。

 一応毒とされているが可食ともされている……って、怖くて食べられない。

 アニエスの身辺や心理状況に心を配る、監視キノコ。

 国王に下された有罪判定を、全キノコに緊急通達した。

「キノコの戦じゃあああ!」という叫びは、キノコ達の心の菌糸に刻まれる名言。


「許さない」


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 スナヤマチャワンタケ(砂山茶碗茸)


 橙褐色の球形の中央に穴が開いた形で、浜辺の砂地のみに発生する珍しいキノコ。

 普段は砂に埋まってい頂部の穴だけが見えており、強風で砂が飛ぶと姿を現す。

 一応、球形の下に柄もあるが、当然砂まみれ。

「かくれんぼなら、自信があるよ!」と姿を見せて消えたが、アニエスに見つけてほしいジレンマを抱えるキノコ。


「脱出とキノコ隠滅」


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 聖堂に生えるキノコ御一行


 ぬめったり焦げたり日差しを浴びたりしながらも、アニエスをじっと見守るキノコ達。

「通りすがりのキノコ姫」という言葉が気に入ったらしく、「通りすがりに生えたい」と謎のブームが起こりつつある。


「通りすがりのキノコ姫」


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 セイヨウショウロ(西洋松露)


 大理石状の模様を持ち、小さな突起が無数に見られる塊状のキノコ。

 いわゆるトリュフで、三大珍味にも数えられる高級食用キノコ。

 白と黒で値段が違いすぎるのが、目下の悩み。

 お金が必要だと聞き、いつもよりも香りを増して生えてきた。

「アニエスの懐は、私達が潤す!」とエノキタケと盛り上がっている。

 アニエスの懐を潤すはずが、まさかの安値に衝撃を受けている。

「キノコに詳しいに決まっている。アニエスはキノコのお姫様だぞ!」と店主にお説教しているが、キノコなので気付かれない。

 アニエスと離れたくないが、高価格で売られたい、矛盾した思いが今日も香りを引き立てる。


「お買い物とキノコの山」「それでも一緒にいたいのは」


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 ソライロタケ(空色茸)


 空色の小さな傘を持つキノコで、毒の有無は不明。

 傷付いたり触れると黄色に変わる、繊細なキノコ。

 空色が綺麗というアニエスの言葉に、呼ばれていると思って急いで生えてきたら、何だか違ったしょんぼりキノコ。

「モフモフに生えるの、気持ちいい!」と今ではシエルの毛並みに夢中。

「場所によってモフモフ具合が違うよ……!」と毛並みの真実に気付いてしまったキノコ。


「聖獣は呼んだら呼びっぱなしだそうです」


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 タマゴタケ(卵茸)


 卵型、饅頭型、平らな形に変化する、赤いキノコ。

 似ている毒キノコも多く、安易に食べてはいけないが、食べたら美味しい。

「湯上り卵肌」という言葉は自分のことだと思って茹でられてみたところ、美味しく食べられてしまったことがある、うっかりキノコ。

「ここにアニエスがいるよ!」と自慢の赤い傘を震わせてアピールした道標キノコ。

 アニエスにむしられて一緒に馬車に乗る予定だったが、うっかり民衆の頭に取り残されて少し切ない。

 各ご家庭で美味しく食べられたので、とりあえず満足。


「キノコの道標」


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 タモギタケ(楡茸)


 鮮やかな黄色の傘を持つ、食用キノコ。

 特技は群生で、味も良く、いいお値段。

『木材腐朽菌倶楽部』の一員。

 以前にクロードにお詫びキノコとして捧げられた経歴があり、ジェロームには手土産キノコとして生えている。

 今回はご挨拶キノコとして生えており、ジェロームに対しては「久しぶり!」と好意的。

 フィリップ接近に伴って警戒挨拶体勢に入り、王子二人に生えて激励している。

 お詫びキノコ、手土産キノコ、ご挨拶キノコとしてクロードやジェロームに生えた経験あり。

 アニエスに「ジェローム、ここにいるよ!」と教えてあげた、お知らせキノコ。

「アニエスがいるって教えてあげたから、きっと褒められるに違いない」とドキドキしながら傘を開いて待っている。

「……まだ?」とジェロームに訴えているが、キノコなので伝わっていない。


「国を支える力の源は」「それでも一緒にいたいのは」「王子の告白」


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 ツチグリ(土栗)


 褐色のヒトデのような外皮の真ん中に球体があり、皮を剥いたオレンジのような見た目。

 成熟すると球体の中心部分に穴が開いて胞子を放出する。

 一応食べられるが、一般的にはあまり食されない。

 しつこくアニエスに絡むフィリップに現実を見せるために帽子に生え、その重みでフィリップの最後の砦を奪い去った。

「これ以上うるさくするなら、また胞子をぶちまけるよ」と脅しているが、キノコなので伝わっていない。

 対フィリップ用に胞子の蓄えを増やすことを検討中。


「責任を取るのなら」


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 トキイロヒラタケ(朱鷺色平茸)


 濃い桃色の傘を持っており、次第に色褪せて淡黄白色になるキノコ。

 食用だが、成長すると硬く繊維質になるので若いうちに食べておきたい。

 美しいピンク色は加熱すると色褪せるので、生でスライスしてマリネがおすすめ。

 アニエスの髪と同じピンク色の傘が自慢なので、加熱調理に怯えている。

「そうだよ。ピンク色の髪は綺麗だよ。ピンク最高!」と叫ぶ途中で、クロードに素早くむしられたポケット入りキノコ。

 ポケットからちらりと覗くピンクボディも悪くない、とご満悦。


「早く、結婚したいね」


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 ドクササコ (毒笹子)


 黄土褐色の中央がへこんだ傘を持つ猛毒キノコで、攻撃の陰湿さに定評がある。

 体内潜入後、潜伏4~5日後から手足の先と陰茎のみを執拗に攻撃し、激痛を1か月以上継続させる。

 何故、そこを狙うのかは謎。

「陰茎激痛罪をお見舞いしたのを忘れたか?」と傘を開いて威嚇中。

 アニエスの意思により猛毒戦士が直接攻撃できないので、代わりに最前線(口の中)に特攻を仕掛ける勇敢なキノコ。

「ほーら、齧れよ。齧っちゃえよ」と挑発しながらも、毒の成分を割り増しして攻撃中。

「おまえ、うるさいからしゃべるな!」と国王の口の中に生えて会話を妨害している。

 ついでに齧られる気満々の、勇敢なる特攻キノコ。

 カエンタケ大先輩が毛根の抹殺を宣言するのを見て、密かに憧れている。


「キノコは置いていけ」「会いたい」「アニエスの願い」


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 ドクツルタケ(毒鶴茸)


 真っ白で綺麗なキノコで、ササクレ・ツバ・ツボすべて真っ白。

 一本で成人一人分の致死量を超える毒を持つ、猛毒キノコ。

 デストロイングエンジェル(破壊の天使)の名を持つ、最強の戦士のひとり……一本。

「アニエスを泣かせたのはおまえか」と、ひたすら生えて威圧中。

「うっかり食べたぶんはノーカウント」と言って、たまに口を塞いでいる。

 クロード登場で攻撃を中止して床に転がっていたが、雷でこんがりキツネ色になった。

「ちょっと熱いけど、この色も悪くない」とイメチェンがお気に召した様子。

 真っ白仲間のササクレシロオニタケに「いい焦げだね」と褒められて得意気に傘を開いている。


「会いたい」「精霊の沙汰」


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 ドクベニタケ(毒紅茸)


 鮮やかな赤い傘を持ち、輪を描くように並んで発生して菌輪を形成する、メルヘンなキノコ。

 胃腸系の中毒症状を起こす毒キノコで、匂いはないが味は辛い。

 ……キノコの勇者は何でもかんでも食べ過ぎだと思う。

「アニエス、頑張って。菌輪見せてあげるから!」と一生懸命生えている。

 今日も綺麗に輪を描いた自分にうっとり。

 輪になりすぎて、ドーナツに親近感が湧いて来た。


「聞いて、くださいますか」


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 ナメコ(滑子)


 赤褐色の傘とヌメリを持った、群生が得意なキノコ。

 価格も手頃で、ご家庭でも愛される有名キノコ。

 アニエスの危機にキノコ人生……菌生最大級のヌメリを出して、靴を再起不能にした戦果あり。

『木材腐朽菌倶楽部』の一員。

「キノコもアニエスが大切だよ! アニエスのためなら、ぬめるよ!」と生えてきたが、クロードに大切だと言われて感激のあまりぬめっている。

 聖堂ではステンドグラスでぬめり、割れ落ちた際の飛散防止に役立った。


「俺がそばにいる」「会いたい」


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 名もなきキノコ達(アニエスを助け隊)


 アニエスのピンチに生えてきたキノコ達。

 目立つ色やぬめりを駆使し、胞子を飛ばしたりして頑張った。

 サビーナの注意を逸らすことには成功したが、アニエスは意識を失ってしまい、動揺を隠せない。


「これでお互い様」


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 ニセニクハリタケ(偽肉針茸)


 木にへばりついており、背面は淡橙褐色~茶褐色の縞模様でビロード状、腹面は針がびっしりと生えてフサフサしている。

 シナモン様の香りがあり、乾燥しても香りが残る。

 アニエスが猫のもふもふと言っていたので「キノコだってフサフサでもふもふだよ」とアピールしているが、馬車内がシナモンの香りに包まれ始めた。

 アニエスに撫でてもらうため、フサフサの強化を菌糸に誓う。


「アニエスに触れたいから」


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 ノボリリュウタケ(登竜茸)


 灰褐色で、木串の束のような柄に、馬の鞍のようなでこぼこしたものが乗っている。

 山で見かけたら何だかわからず「ん?」と首を傾げてしまいそう。

 食用ではあるが、十分に加熱しないと中毒症状があるらしい。

 だが、それ以前に食べてもいいのか悩む形。

「こんなに気まずいことはない」とアニエスが言うので、自分がキノコ達に囲まれた気まずい話を披露しようとやってきた。

 アニエスとクロードが至近距離でいちゃついていて、嬉しい反面ちょっと気まずい。

「見たい」と「恥ずかしい」の狭間でじっと耐える忍耐のキノコ。


「番の愛は重いらしい」


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 バービーパゴダ


 バービーパゴダ

 パゴダとは仏塔のことで、簡単に言うとピンク色の五重塔キノコ。

 あるいはお祭りで見かけるトルネードポテトのトルネードしてないバージョン。

 火災と野ブタによる食害に押され絶滅危惧の状態だが、あまり気にしていないパリピキノコ。

 よくわからないままノリで生えてきたら盛大なキノコ祭りだったので、嬉しくて胞子が震えている。

「ブタが来たら教えて」と少し警戒しながら、傘を揺らす。


「会いたい」


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 ハタケシメジ(畑占地)


 淡灰色~褐色の傘を持つ食用キノコ。

 見た目は傘に模様のない、やる気のない椎茸。

 歯ごたえシャキシャキ&深い風味で食用としていい感じらしい。

「畑占地という名前だから、畑に生えてみたかった」と言って畑に生えて以降、すっかり気に入ってその後も畝の上に鎮座している。

 クロードに褒められて誇らしげに傘を開く、文字通りの畑キノコ。

 クロードが新居に招いてくれるらしいと聞いて、喜びのあまり胞子が止まらない。


「負け戦の代償は」


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 ハナオチバタケ(花落葉茸)


 淡い紅色の傘は1~2cm程度で、柄は非常に細く針金のよう。

 こういう形のキノコのランプを売っているのを見たことがある。

 毒があるかハッキリせず、食べ方も特にないらしい。

 ……食べ応えがなさそうなキノコに、世間が冷たいと思う。

「アニエスはできるよ!」と応援しに生えてきた。

 すぐにむしられると思ったのに、特等席で二人のいちゃいちゃを見守ることになり、ちょっとドキドキしているときめきキノコ。

「これが、オトメノカサの言っていた、いちゃいちゃ……」と興奮気味。


「俺がそばにいる」


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 ハナビラタケ(花弁茸)


 白い傘が薄い膜状の波を打っていて、フリルの塊に見えるキノコ。

 食用で、歯切れの良さが特徴。

『木材腐朽菌倶楽部』の一員。

 菌糸を心材に進入し、木を腐らせて土に返す仕事も請け負っている働き者。

「アニエスの桃花色の髪を飾るのは、私!」と気合いを入れて生えたが、あっという間にクロードにむしられた。

「こうなったらポケットからちらりと覗くイケてるキノコになるしかない」と路線を変えることにした、現実を見るキノコ。

 聖堂のステンドグラスの周りを囲ったらとても華やかになったので満足している。


「まるでキノコの女神様」「会いたい」


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 ハンガリアンスイートトリュフ


 見た目は白い芋だがサッカリン並みの甘さを誇るトリュフで、そのままデザートとして食べられるという反則キノコ。

 キノコ界では珍しい甘さが自慢で、乾燥させてもまだ甘い。

「甘い」と聞いたので、アニエスに本物の甘さを伝えようとしたら、恋の甘さを教えられてしまった甘々キノコ。

「甘さが菌糸にしみる」と何だか楽しそう。


「一緒に幸せになりましょう」


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 ヒイロタケ(緋色茸)


 半円球で扁平な緋色のキノコで、全身錆びついたサルノコシカケという感じ。

「木材腐朽菌倶楽部」の一員。

 放って置くとどこまでも勝手に盛り上がるオトメノカサに、ブレーキをかける役割だが、ほぼ機能していない。

 オトメノカサのはしゃぎぶりを止めつつ「気持ちはわからないでもない」と心の中で呟く、本音と建て前は別のキノコ。

 本音としては「もっといちゃつけ」である。


「少しずつ、慣れてね」「会いたい」


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 ピクシーズパラソル(妖精の日傘)


 青い傘がガラス細工のようにキラキラ輝くキノコ。

 長さが2cmほど、厚さは2mmほどと小さく、壊れやすい。

 毒があって食べられない……こんなに小さいのに、試した勇者がいるらしい。

 ネックレスになってアニエスの首にぶら下がるのが夢。

「少し体を鍛えたから、ネックレスにぶら下がりたい!」と訴えているが、クロードにそっとむしられた。

「まだ菌トレが足りないのか」と落ち込んでいる。


「それは嬉しいな」


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 ヒトクチタケ(一口茸)


 樹木の側面に沿ったハマグリ型で、下部はクリーム色、上部は褐色で光沢があるキノコ。

 木にめり込んだ栗饅頭という感じ。

 美味しそうな名前に、美味しそうな見た目だが、美味しくないらしい。

 隙あらば撫でられたい、ちゃっかりキノコ。

 クロードが「アニエスに触れたい」と言ったので「アニエスに触れられたい!」と熱い思いを吐露したが、キノコなので伝わっていない。

「アニエスにむしられるチャンス!」と慌てて生えてきたが、結局クロードにむしられた。

 アニエスに触ってはもらえなかったが、何だかじっくりと見つめられたので満足。

 いつかアニエスに撫でられる日を夢見て、今日も艶を出している。


「アニエスに触れたいから」「まるでキノコの女神様」


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 ブドウニガイグチ(葡萄苦猪口)


 赤紫褐色の傘を持ち、見た目と名前の通り葡萄色で苦いキノコ。

 当然食べられないが、毒はないらしい。

 綺麗な色だが、雨で退色しやすい。

「葡萄はいいよ! 見て、この葡萄ボディ!」と自慢の傘を揺らしている。

 その後、まさか葡萄でいちゃいちゃされるとは思わず、照れたせいで傘の赤みが少し濃くなった照れ屋キノコ。

「アニエスとクロードにチューされたらどうしよう」と真剣に悩んでいる。


「その葡萄は間接キスです」


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 フユヤマタケ(冬山茸)


 黄褐色の傘で、湿った環境ではぬめりが出る。

 その名の通り、小雪が舞う時期に見かけるシーズンオフキノコ。

 時期的に間違うキノコもなく安心して食べられるので、汁物でどうぞ。

「寒いの得意!」と生えてきたものの、アニエスが寒いらしいと知り「汁物になってアニエスを温める!」と鍋に飛び込む気満々。

 だが、鍋がない。


「別の意味で落ち着かない」


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 ベニテングタケ(紅天狗茸)


 赤い傘に白いイボが水玉模様のように見える、絵に描いたザ・毒キノコという見た目。

 スー〇ーマ〇オなら1upしそうだが、実際は食べると危険。

 運命の赤い菌糸を感じ取っては生えてくるキノコで、クロードのひとめぼれの相手でもある。

「何があってもアニエスを守る」という言葉に「よく言った。我々もアニエスを守る!」と決意を新たに傘を開く。

「我々もアニエスを守る」と訴えるべく生えてきた、やる気満々のキノコ。

 ブノワが水玉模様に埋もれているが、これはこれで似合っている気がする。

「クロードが来るまで、アニエスは我々が守る!」と意気込んで天井に生えた見守りキノコ。

 しかしずっと逆さまになっているせいで何だか頭に血が上る……いや、傘に胞子が溜まってきた。

「我々の王を害した上に、キノコのお姫様に手を出そうとは許せない」と心のままに巨大化し、聖堂の屋根を突き破った。

 クロード登場に一安心だが、大きくなりすぎたせいでよく見えず、「クロード、やっと来たか。……来たのか?」と周囲のキノコに聞いている。

「新居を飾るのは任せて! ずっとアニエスのこと守るから!」と意気揚々と巨大化して生えた、アニエス大好きなキノコ。

 新居でもアニエスと一緒にいられると思うと、嬉しくて傘が開いていく。


「アニエスに触れたいから」「ごめんなさい」「普通で良かったようです」「会いたい」「アニエスの願い」「一緒に幸せになりましょう」


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 ベニナギナタタケ(紅薙刀茸)


 鮮やかな朱色の棒状のキノコで、猛毒キノコのカエンタケに雰囲気が似ている。

 毒々しい見た目に反して毒はないが、美味しくもない。

 ルックスを活かして料理に彩りを添えることもある。

 フィリップに釘を刺すと聞いて「いざとなったら、あのキノコの大先輩を呼んじゃうぞ、って脅すよ!」と協力を申し出た、大先輩の前座キノコ。

「アニエスに近寄るな! 大先輩を呼ぶぞ!」と怒っているせいで、赤みが三割増し。

 カエンタケ大先輩にはいつも胞子がお世話になっている。


「俺がそばにいる」「キノコは置いていけ」


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 ベニヤマタケ(紅山茸)


 鮮やかな赤い傘を持つキノコで、群生が得意。

 食用であり、ペリペリとした独特の質感と彩りが楽しめる。

 いつかベニヤマタケ串をアニエスとクロードの二人に食べて欲しいが、串に刺されたら痛いのか心配。

 串に刺されたことのある先輩の話では「ちょっとチクッとする程度」らしい。

 王族がいると聞き、「王冠もチクッてする?」と何故か王冠に刺さる気満々。

 だが、肝心の国王は王冠をかぶっていなかった。


「オレイユ王族とキノコの御挨拶」


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 ヘビキノコモドキ(蛇茸擬き)


 灰褐色の傘に黒褐色のイボを持ち、ヒョウ柄のようにも見えるキノコ。

 肉は白色で特徴的な味はないが、毒キノコなので口に入れてはいけない。

 ……キノコの勇者は、今日も食べてはいけないものに挑んでいるらしい。

 どこかのおばさまが好むような柄だけあって、噂話が大好きなおばちゃん気質で、オトメノカサとは情報交換をする仲。

 ロマン溢れる泉の話を聞いて「いいわねえ。そういうものは、若いうちに堪能しておいた方がいいわ」と後輩キノコ達に伝えている。

「恥ずかしさも、若さよ」と照れるアニエスを見守りつつ、「アニエスに恥ずかしい思いをさせるなんて」とも言う、矛盾を恐れないキノコ。

「たまにはアニエスから攻めるのもいいわ! 若いっていいわ!」と大興奮で揺れている。

「大変。嫁入りキノコの用意を急がなくちゃ」と何だか楽しそう。


「無意識の惚気と馴れ初めの泉」「事故の記憶と違和感」「一緒に幸せになりましょう」


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 マツタケ(松茸)


 褐色の繊維状鱗片に覆われて白い肌が見える、言わずと知れた高級キノコ。

 松が生えていると何となく根元を見てしまうのは、このキノコのせい。

 食用キノコ界の重鎮の一人……一本。

『菌根菌倶楽部』の一員で、ホンシメジと仲がいい。

 ブノワにアニエスを頼まれたのが嬉しくて、食用キノコ代表として全力で生えに来た。

 今宵のルフォール邸はマツタケの香りに包まれる予定。

 アニエスにおよばれした上に王子様達に見られるという栄誉に輝いた、お呼ばれキノコ。

 ナタンの謝罪を受け入れ「うちのキノコのお姫様をよろしく」と自ら手土産になった。

 たまにはアニエスにも食べてほしいが、そこをぐっと我慢するのが菌糸の紳士。


「無意識の惚気と馴れ初めの泉」「普通で良かったようです」


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 ムキタケ(剥茸)


 薄い黄褐色の半円形の傘を持つ食用キノコ。

 傘の下にゼラチン層があるので皮を剥きやすいのが名前の由来。

 調理するとゼラチン状になり柔らかくなるのが自慢。

 ルフォール家の侍女になるという言葉に「あの家ではキノコあしらいが必須だよ」と教えるために生えてきた。

「共にアニエスを守ろう」と声をかけられて、やる気でゼラチンがぷるぷるしている。

「アニエスのためなら、全身ぷるぷるになってもいい」と決意を語ったが、キノコなので誰にも届かない。


「既にアニエスの変態だそうです」


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 ムラサキシメジ(紫占地)


 淡紫~紫色の傘を持ち、成熟すると傘が反り返り褐色に変色する変身キノコ。

 食用だが生で食べると中毒を起こす……キノコの勇者は加熱を待てないらしい。

『落葉分解菌倶楽部』の一員。

「アニエスを縛るとは何事だ!」と縄を腐らせたら、アニエスにお礼を言われ、キノコ達にもよくやったと褒められ、一躍ヒーローになった。

 アニエスがキノコ隠滅と言うから消えてみたが「これはこれで楽しい」と何かに目覚めた。


「脱出とキノコ隠滅」


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 ムラサキヤマンバ(紫山姥)


 暗赤褐色~暗紫褐色の傘の地味姿のキノコ。

 房状の毛髪状菌糸束が同時発生することが多いせいで、山姥扱いされる。

 沢山集まってアニエスのピンクの髪を隠す第二の菌生を送るのが夢だったが、クロードの登場で出番がなくなった。

「夢破れ、風に揺れる菌糸束」

 川柳も嗜む、風流キノコ。

 その後フィリップが鏡の前で菌糸束を乗せてみたが「菌糸の情けだ。内緒にしてやる」と口を……胞子を閉ざした気遣いのキノコ。


「責任を取るのなら」


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『木材腐朽菌倶楽部』御一行


 代表のナラタケ(楢茸)は生立木の根に寄生して枯死させるほどの実力者。

 ヒイロタケ(緋色茸) 、コフキサルノコシカケ(粉吹猿腰掛)、 ナメコ(滑子)、 ハナビラタケ(花弁茸)が出動。

「アニエスをいじめるやつの家なんて、腐らせてやる」と一斉に聖堂内を覆って腐敗させた解体集団。

 怒りのあまり木材どころか石材にも菌糸を伸ばしているが、一部のキノコはヒラヒラ具合とぬめりに夢中。


「会いたい」


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 ヤコウタケ(夜光茸)


 日中は白い傘だが暗闇で緑色に光る神秘的なキノコで、世界一といわれる光の強さを誇る。

 雨上がりや梅雨時に生え、寿命は三日ほどの生き急ぎ系キノコ。

 無毒で食べられなくもないが、水っぽくてカビ臭い……何故そこまでして食べたのだ、勇者よ。

 キノコは素晴らしいというクロードの主張に「よくわかっているな! キノコは暗闇で光ることもできるぞ!」と誇らしげに生えてきたが、昼間なので光っていなかった。

「まだトレーニングが足りないのか」と筋トレ……菌トレを再開する。

 キラキラの代名詞としてクロードに挙げられ、「期待に応えるため、昼から光らないと」と筋トレ……菌トレに励む。

「昼も光ったら、アニエスのアクセサリーになれるかも」と新たな夢を抱く。


「まるでキノコの女神様」「精霊の沙汰」


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 ヤマドリタケモドキ(山鳥茸擬き)


 黄褐色の傘を持ち、湿気が多いとヌメルるキノコ。

 ヤマドリタケ(ポルチーニ)によく似ており、同様に美味しい。

 モドキという名前ではあるが、味と香りには自信がありパスタがおすすめ。

「アニエスの幸せを願う」というブノワの言葉を聞き、「キノコ達も皆アニエスが大好きだよ!」と訴えに来た。

 とりあえず、今日こそは焼かれたいが……鍋の気配がする。


「無意識の惚気と馴れ初めの泉」


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 ヤマブシタケ(山伏茸)


 軟らかい白い房状の無数のとげを丸い形に垂らしたキノコ。

 ふわふわモコモコの毛玉に見えなくもない。

 若いうちは真っ白で、段々褐色を帯びるらしいので、色の変化も楽しそう。

 食用で、健康食品でもある。

「絡んだ! 絡めたぁぁ!」と絶叫するオトメノカサに押されて生えてきた。

 てっきり自慢のフサフサが絡んだのだと思ったら違ったので一安心。

 アニエス達と一緒にお出かけできるので幸せ。

 その後「こんな風に指を絡めていた」とオトメノカサにフサフサを編み込まれた。


「それは嬉しいな」


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 ワカクサタケ(若草茸)


 緑色の厚い粘液層で覆われ、成長すると黄色に変化するキノコ。

 雨露に濡れると、緑の宝石のように輝く。

 緑色だが葉緑素の色ではないので、光合成はできない。

 毒があるという説もあり、食用には適さない……食べた人に、何があったんだろう。

 実は緑色なのは粘液で本体は違う色らしいが、それを聞くと「エッチ!」と言って更にぬめるので、よくわからない。

「恥ずかしいならぬめると隠せるよ!」と、一生懸命ぬめってアニエスを守ろうとしている。

 アニエスと一緒にぬめぬめツヤツヤするのが夢。


「負け戦の代償は」


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「キノコ姫」第3章にお付き合いくださり、ありがとうございました。

いずれ第4章を書くつもりです。

それに向けて「第3回推しキノコ募集」をしています。

詳しくは活動報告をご覧ください。


次のキノコをお届けするまでの間は、英語版MushroomPrincessをお楽しみください。

(大丈夫……私も読めませんが、ぽぽるちゃ先生のイラストが可愛いので……フィリップがキノコ総攻撃されているので……(笑)


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[一言] ちょっと推しキノコを追加をば 見た目枠でブリーディング・トゥース 学名がまだ無いから悪魔の歯とかイチゴのホイップクリームとか呼ばれる 同じく見た目で バスケットスッポンタケ 別の科なのにアカ…
[良い点] あああああああああああああああああああ(キーボードの故障ではない 毎回本編とこれを往復しながら次を待つんすよ~ 読んでるこっちがもきゅもきゅしちゃう。ひゃーい! [一言] 三章完結おめでと…
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