九頁 合理的虚構
今回から作風が変わります。よろしくお願いします。今までの冷えきった液体ヘリウムの様な目線から足をあらい、どうか生暖かい設定温度30の冷房の様に見守って上げてください。
あれから少しして、諸用があると言い放ち家をほんの1日空け、休日ができてしまった俺はこれといってすることもなく、ただ時間の流れを肌で感じていた。
魔力が少ないにも関わらず安定した威力での魔法の出力、それを可能たらしめたのはなんなのか、と。
異世界人、亮太、魔法知識皆無――の人間が考えるのも虚しくなる。難題を前に熟考し、真剣な面持ちで考える。
「おそらく、何かをイメージする、という段階で無意識にスキルは発動してしまうのであろうか」
――はて、なんであろう。
「なら、なぜだ? ……いや気にしなくてもいいか、おそらくこれが答えだ」
――他の答えがあるのであれば――他にこれより有用な説があるのであれば――それをこそ教えてくれと言わんばかりに安心した。
日も暮れてきた。明日からはまた再開であろうな。
徐々に熱を帯びて来ていた思考には終止符をうち、明日からに備えるのである。
遅めの朝、もうほぼ昼であろうか。今日からも試験に向けて特訓か……。
先日はあんなことがあり、散々考えさせられることもあったがそれも今は一段落と言ったところか。
そしてミリは言う。
「今日は亮太くんの魔力についてお互いのためにも、試験に向けても、調べておきたいの」
――それはそうであろう。彼ら曰く魔力はある程度は専用の器具を用いずに感覚でわかるそうだが、それが平均以下であった俺にあれだけの魔法が使えるわけもないのだからな。本来なら。
だがそんなことは百も承知。まして自分のことについて当事者の理解すら及んでいないというのは異常であるからな。
「わかった!」
そう答え身支度を終え、魔力を調査するためミリの元へ急ぐのであった。
〘視点回帰、測定後〙
さぁてこんにちは、平穏な日常。それを普通に、さも当然かのように送ることが出来ることを皆々様諸君はどのように考えるのであろうか。
いやそんなことはどうでもいい。どうやら俺には大した才能がない。それは今回のことでわかったつもりだ。
ひどいね、と何もなかったようにつぶやき、さも当然のように――お昼ご飯へと再び手をやる常識人のみんな。
おいしく、楽しい、幸せを体現したかのような時間の最中にさえ、このようなことをいうのは本当に申し訳ないと思う。
僕がこの世界で出来ること……それは、――せめてもの救いとして、賜った謎の異常スキルを駆使することくらいなのでね。
それだけのことができればもう十分ではないか、とそんな声が聞こえた気がするが。そういう訳にもいかない。実は学園の入学の試験に少々気がかりなことがありましてね。いやなに、大したことはありませんよ、ただほんの少し気になりましてね……。
〘視点回帰、測定前〙
魔素(及び魔力)密度測定器――通称“測定器”は球の様な形状をしていた。
そこへ手をやり測定開始。
すると案の定、測定値は平均以下……それもかなり驚きの結果だそうだ。
――曰く、この世界では生まれた時に空間に漂う魔素を効率的に魔力として体内で変換、運用できる様に有効化アクティベートを行うのがこの世界の通例であるらしい。
然り、あくまでそれはこちらの通例。もちろん俺は生まれた時にアクティベートなど行っていない。必要がないから――否、そんなものはなかったからだ。
ミリは言う。
その時にアクティベートしなかったのであれば、今亮太くんが持っている魔力は生まれたばかりの赤子と同等である、と。
どうしろというんだ? 人を生まれたばかりの赤子呼ばわりか?
いや、そこは論点ではなかったな、と我に帰り。
その事実が明らかになったことにより、ミリにはひとつの疑問が生じる。
2日前のアレはなんであるのかと。
無論、俺の予想が正しいとも限らない…加えてスキルのことは話せないときた。ならどうする??
誤魔化すしかないであろう!! それ以外にどんな手が尽くせる!?
「ミリ! 今測定してハッキリしたよ! もう! 多分魔法ってのはミリたちが言ってた以上にイメージが大事なんだ!」
希望に満ち溢れた青年さながらのテンションで告げるそれは、もはや事実でしかない。そうミリは捉えたのであろう。
「そうなんだね……でも今どき、子供にアクティベートを施さないなんて……なんでかしら……」
どうやら納得してくれたようだな、一部には。
まだ納得していただけていないそちらに関しては、
「うちは貧乏だったんだよ……」とはぐらかしておいた。




