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第六幕 ツインテールに限って

「こら! 二本松くん! 廊下を走っちゃダメじゃないの!」


 全力疾走する俺を咎める声。この声は学園のマドンナと呼ばれる美人女教師のものだ。性格&勤務態度は至ってマジメなのにセックスアピールは抜群という、エロゲーにでも出演した方がしっくりきそうな女教師なのだ。この人になら俺は童貞を捧げてもいいとさえ思っている。そうだ。ここはこの美人女教師としばらく会話でもして心を落ち着け、現状の整理をしよう。ついでに悩みでも打ち明けるフリからの関係構築もいいかもしんない。ひと昔まえのVシネとかにありそうなパターンだし。が、振り向いた瞬間、俺はまたも悲鳴をあげずにおれなかった。


「うわあああああっ!」


 なんとその女教師もツインテールなのだ! なんでイイ歳した社会人の、しかも教師がツインテールなんぞにしてんだ。どんな低予算エロゲーでも、そんなやる気のない設定ありえないだろ!


「まあ! なんなの? その態度! 悲鳴をあげれば見逃してもらえるとか思ってるんじゃないでしょうね!?」


 女教師は両手を腰に当てたお約束の上からポーズで俺を誘惑してくる。が、せっかくのそのサービス精神もツインテールのせいで全部台無しだ。


「アンタこそ何考えてんだ! 生徒ならまだ目はつぶってもらえるにしても、さすがに教師がツインテールはマズイだろ! だいたいそんな髪型で出勤してよく職員会議が開かれなかったな! それともなにか? 教頭あたりと不倫でもしてんのか!? まさかこの学園の教頭がツインテール好きの変態だったとは驚きだ! こんなことが父兄会にでもバレようものなら連日学園にワイドショーの取材が殺到するぞ! 恥を知れ!」


「は、はあ? 何わけ分かんないこと言ってんの!? 私は見ての通りツインテールなんかしてないし、教頭先生とも不倫なんかしてません! 意味不明なことを言ってごまかそうとするんじゃありません!」 


 チッ! この女もしらトボけてやがる。先刻の女と同じようにツインテールじゃないなどと言い逃れをしている。しかしこのセンセイのうろたえた態度から察するにどうやら不倫は図星だったようだ。あんなハゲ教頭と寝る安い女など俺の眼中にはないから一向に構わないけどな! ならばもう容赦はせん!

 

 シャキン! (効果音)


 俺はおもむろに懐に忍ばせておいたバタフライナイフを取り出す。俺はセレブゆえ暗殺組織や誘拐犯に狙われた時のため、常に自衛のために凶器を携行しているのだ。あと学園がテロ組織に占拠された場合とか。世界のカリスマはあらゆる危機を想定し、対策を講じておかねばならないのだ。それをこんなツインテールごときに行使するのはいささか気が引けるけどな。


「きゃあ! キ、キミ、なんでそんなものを持っているの!? 校則違反よ! いますぐそれをこっちに渡しなさい!」


 女教師はさすがに怯えているようだが職務に忠実なのか気丈にも俺に命令してくる。もちろん、俺がツインテールの女の命令など聞く道理などない!


「悪いがその命令は聞けないなあ。俺が校則に従うのは、まずアンタのそのツインテールを切り落としてからだあ!」


 言いながら俺は女教師に掴みかかる。女教師も必死に抵抗するが、気迫に勝る俺に分があった。ましてやぶら下がってるツインテールを掴むなど造作もない。格闘家ならツインテールになどするべきではないのである! まあこの女教師は格闘家でもないんだが。

 が、


 スカッ! (効果音)


 またもツインテールは俺の手をすり抜け掴むことができない! ならばとナイフで切り裂いてやろうとも思ったがそのナイフも素通りして髪の毛一本切り裂けない! なんなんだこれは! もしかするとツインテールってのはそもそもそういうものなのか? ならツインテールにするってのは結構実用的なんじゃないか? いや、そんなわけはあるまい。分からない! なにがなんだか、もう俺には分からない!


「うわああああああああーッ!!」


 俺は錯乱し、悲鳴をあげて校庭に逃げ出した。もちろん、そこにはグラウンドで部活動に汗を流す女生徒がたくさんいるのだが、その全員がツインテール! 一体この世の中はどうなっちまったんだ! これは俺を陥れようとする、何者かの陰謀に違いない! そう結論した俺の取るべき行動はただひとつ!


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