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第五幕 ふぞろいのツインテールたち

 なんだ? なんだ? なんなんだ? あのツインテールの女は!? 俺に挨拶しないばかりか妙な術で俺をたぶらかし、あまつさえ俺に反抗的な態度とりやがって! 俺は世界のスーパーセレブになる男だぞ!? その俺を目の前にしてあのツインテールの女は何故あんな態度がとれるんだ!? 俺の人生にそんな挫折などあってはならない! こんな躓きなど決してあってはならないのだ! これは夢だ! 幻だ! ツインテールの女なんか最初から存在などしていなかったに違いない! きっとそうだ! いや、必ずそうなのだ!


 ドッシ〜ン!! (効果音&画面激しく縦揺れ)


「きゃああ! いったぁ〜い」


 廊下の角を曲がった所で女学生とぶつかってしまった。俺の方はなんともないが、女のコはしたたか尻もちついたようだ。俺もパニクっていたとはいえ申し訳ない。しかし今の声から察するに相手は毎朝挨拶交わしてる顔見知りの女のコに違いない。そうだ、今の悪夢から開放され、俺は再び平穏な日常に引き戻されたのだ。不幸中の幸いとばかりに俺は極力紳士的な態度で女のコを気遣ってあげる。


「ごめんごめん。大丈夫だった? 廊下を歩くときは周囲に注意してないと危ないよ? でもそのおかげで俺と口を聞けるんだから、その散漫な注意力にキミは感謝なのかな? よかったね」


 俺が優しい言葉をかけつつ手を伸ばす。


「もう〜。いきなりなんだからびっくりしたじゃないのぉ〜。プンプン」


 そう言いながら女のコは俺の手を取る。が、同時に俺は愕然とした。そのコは確かに毎朝挨拶を交わしてる見知ったコなのだが、何故かツインテールにしている! 今までこんな髪型だったっけ? いつものボブはどうした? なんでツインテールにしてんだ?


「てめえーッ!! さてはさっきの女の仲間だな? そうやって俺に揺さぶりかける魂胆なんだろ! お前らの目的はなんだ!」


 俺はこいつらの目論見を即座に見破り、目の前のツインテールの女の襟に掴みかかる。


「ひいいっ!? 一体どうしたの? 二本松くん! 私よ、私。ほら、いつも朝会ってるじゃない。何をそんなに怒ってんの?」


「とぼけるなあ! その目立つツインテールが何よりの証拠だ! お前らそうやってツインテールで俺に近付いて、一体何がしたいんだよ!」  


「ツ、ツインテール? 私、ツインテールなんかしてないよねえ? よく見てよ。いつもと同じ、地味〜なボブカットじゃん」


 この女も白々しいボケをかましてくれる。誰がどう見ても立派な(?)ツインテールではないか。ここまで育てるのに何年かかるかも分からないほどに成長したツインテールをぶら下げておいて何をかいわんやである。

 いい加減頭にきた俺はその事実を突きつけるためにも目の前の女のツインテールを無造作に掴む。


 スカッ! (効果音)


 ま、まただ! またも俺がツインテールを手に取ろうとすると幻のように俺の手をすり抜ける。まるで何人も触れてはいけない、神聖なる霊的存在のように!


「なに? それ? なんか新しい遊び? ははぁ〜ん。わかったぞお〜。そんなわけ分かんないこと言って、私と付き合いたいんでしょう? それでなに? 私にツインテールにしてほしいのぉ〜? ぷぷっ」


「ち、違う! そんなんじゃねえ! 俺はお前みたいな庶民と付き合うつもりはないし、あまつさえツインテールなんか興味のキョの字もないんだ! やめろ! そんな目で俺を見るな!」


「いいっていいって。無理しなくっても。私も最近別れたとこだしね〜。二本松くんがそんなに好きってんなら、ツインテールにしてあげてもいいよ。すっげえ面倒くさいけど」


「だから違うって言ってんだろ! 俺はツインテールなんかどうだっていいんだよ! ツインテールの方が俺にちょっかいかけてきてるんだろ! 俺はツインテールなんか見たくもないんだ!」


 俺はその場の空気に耐え切れず逃げるようにその場を後にした。あのツインテールの女のいたずらっぽい笑顔が見るに耐えなかっただけだ。決して逃げたわけではない! この俺がツインテールの女に恐れをなして逃げるなど、断じてあってはならないッ!!

 それにしてもあの現象は一体どう説明すればいいのだ!? なぜあの女どもはいきなりツインテールにしていたのか? そしてそのツインテールは触れることはできてもなぜ掴むことはできないのか? まるで悪い夢を見ているようだ! 夢なら早く醒めてくれ!


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