第一幕 ツインテールは振り向かない
え〜、これはノベルゲーム感覚で読めるノベルというコンセプトのもとに執筆された、今までにない斬新すぎる実験的試みであります。
見た目はノベルの体裁を取っておりますが、読む際は読者様が脳内でノベルゲー的なイメージで読むことによってノベルゲーをプレイしているような感覚になれるという、ひと粒で二度オイシイ仕様となっております。この擬似プレイ感覚を是非お楽しみくださりませ。
いや、決してゲームとして書いたテキストをメンドいので小説でアップしたとかそういう裏事情などは一切なく、てゆうかゲーム作りたくてもシナリオ書けない人は無断で結構ですので本作をどしどしゲーム化していただければ作者としましては本望であります。
「やあ、みんな、おはよう! おはよう! 近所のおばさんもそこらの野良猫もついでにおはよう! この爽やかな朝と世界中のみんなにおはよう! 今日も充実した一日を送ろう!」
俺は、二本松 江理伊人! その名のとおり、スーパーエリート学生にしてイケメンセレブで若きカリスマな超天才。宇宙は俺のために存在していると言っても過言ではないほどの生ける伝説なのだ。決して頭の悪い六ッ子の七番目の隠し子などではない!
その俺の毎日が充実してないわけがない。いや、充実していなければならない。今日という一日もよくある日常などでは決してない。俺がスーパー金持ちとしてサクセスするための貴重な原資のひとつなのだ!
「おはよー、二本松くん。相変わらず今朝も無駄にテンション高いよねー」
「二本松くんおはよ〜。今日も変わらずイカれてるっぽいね〜」
道行く女学生たちが俺に積極的に挨拶してくる。将来有望な俺をゲットするべく、グルーピー共は下心丸出しで毎日のように媚びまくる。
「やあ! 君たちにもおはよう! 路傍の石でも俺は分けへだてなく挨拶してあげるからね! 俺に挨拶してもらえる君たちは世界一の幸せ者だよ!」
なにしろ俺はやがて世界が注目することになるスーパーカリスマ。そのおこぼれを庶民に配って回るのも人の上に立つ者の義務。将来になんの展望もなく平々凡々のうちに一生を終えるしかない連中に幸せのおすそ分けをしてあげなくてなんのカリスマか。セレブも結構辛いものだ。
キ〜ン〜コ〜ン〜カ〜ン〜コ〜ン(チャイム音)
今日も俺のスキルアップのためだけの一日が終わった。もちろん超天才である俺は成績もトップ。当然のように有名大学に現役で合格し、そのままキャリア官僚のエリートコースに乗りやがては国のトップに立ち世界をも動かす男なのだ。その俺が青春を送った場所としてこの学園もやがては名門校と呼ばれるようになるのだろう。今は地元の滑り止め校だけどね!
授業が終わり帰り支度。もちろん俺は帰宅部である。部活なんてのは将来のない庶民がとりあえず充実した青春送れたと錯覚するための思い出作りに過ぎない。一生の予定満杯で分刻み人生の俺には部活などにうつつを抜かす暇はないのである。
シャラ〜ン(効果音)
うん? なんだ? いま視界の端をちょっとよぎっただけの珍妙なヘアスタイルの女は。髪を両側頭部に2本束ねた、いわゆるツインテールというやつなのだろうが。いや、そんなもんはこの際どうでもいい。俺に挨拶もせず素通りとはいい根性しているな。てゆうか、あんなコ、うちの学園にいたっけ? まあ俺とて多忙な身なので女学生の顔などいちいち覚えていないから当然っちゃあ当然なんだろうけど。でもなんか気になる。この俺様に媚も売らずに素通りとは腹立たしい。もっとも俺の童貞はアイドルユニットのセンタークラスでもなければ捧げる気など毛頭ないので告られたとしてもすげなく断るつもりなので問題ないが。
というかそもそも高嶺の花すぎる俺様に告ってくる身の程知らずな女などこのド三流学園には当然いるわけもなく。いや、そんなことはどうでもいいか。とにかくあのツインテールは見過ごせん! 追いかけていってこの世の摂理と社会の常識というものを骨の髄まで叩き込んでやらなければ! それもカリスマの責務というもの!