第二部 第二十楽章 ついに、三人で!
鶴さん、金立オーナー、ぼくの順にステージに上がり、最後に制服姿の波多津薫が現れた瞬間、観客席からは拍手、口笛、大歓声があがった。
「薫姫」コールが巻き起こり、波多津薫がはにかみながら手をあげて応える。
ドラムスティックが叩かれ、演奏を始める。
鶴さん、波多津薫とアイコンタクトを交わし、ぼくは、アンジェラスで軽快なビートを刻む。
アンコール一曲目は、レッドツェッペリンの「rock and roll」。
中田マサユキさんの盟友で、自身も大ベテランミュージシャンの金立オーナーが、流石の貫禄でボーカルを務める。ベースとドラムは、ここナッシュの常連出演バンドの"金立オーナーお墨付き"のふたりだ。両者とも凄い安定感で、ぼくでも安心してギターが弾ける。
とにかく、ノリが良くて楽しい曲だ。お客さんの反応も上々で、弾いているこっちもそれに乗せられてテンションが上がる。
ついつい先走りがちになりそうなところを、ベースとドラムの正確な演奏に耳を傾けて、うまく自分を抑え込む。
間奏に入り、波多津薫がステージ最前線でギターソロに入る。波多津薫の周りに観客が殺到して、手を伸ばす。
波多津薫は、満面の笑みを返しながら、ギターを弾いていた。
演奏が終わった。
手を振り、汗を拭きながら、金立オーナー達がステージを下りる。
ステージに、ぼくたち三人だけが残った。
……やっと、この三人で舞台に立てた。
去年の秋祭りで果たせなかった夢が、場所は変われど実現できた歓びに、ぼくの身体が少し震えた。
鶴さんが用意していた打ち込みドラムのスティックカウントに合わせて、波多津薫のファシストが美しいアルペジオを奏でる。
あの時、波多津薫に聴かせるために、死にものぐるいで練習した曲。
「 BRAND NEW SONG」のイントロだ。
鶴さんの雷鳴の様なレスポールが、そこに絡まる。
ぼくはピックを持つ手と右足で、小さくリズムを取った。
視線を感じてそちらを見る。
波多津薫が、笑っていた。
その目が「しっかりついて来い」と言っているのがわかった。
ぼくは頷き、ふたりに続いて弦を弾いた。




