第二部 第十一楽章 もう一度、君と話したかった。
放課後。
「我ながらワンパターンだな」と思うけど、ぼくは、校門のすぐ側に立って、ただ、波多津薫が現れるのを待っていた。
とにかく、ふたりで話がしたい。
……そう思って待ってはいるけど、波多津薫になんと言えばいいのかは、わからない。だけど、あまりにも宙ぶらりんなこの状況を、せめて、なんとか変えたい。
それが、どんな結果になるにしても。
それから五分もしないうちに、男子生徒の格好をした波多津薫がギターケースを背負って現れた。
隣りには、当然のように、木須裕子。
「あれ? お疲れ様です、高田先輩」
芝居掛かった調子で、木須裕子が言う。波多津薫は、黙ってぼくを見つめている。
その瞳には、怒りの炎も、哀しみの涙も浮かんでいなかった。
なんだか妙に「澄んだ」瞳を、波多津薫は僕に向けて、黙っている。
「あの。か……波多津さんと、はなしたいんだけど」
ぼくは、振り絞るようにしてなんとかそう言った。
木須裕子は、ニヤリと笑って、波多津薫の腕を掴んだ。
「先輩。高田先輩がこう言ってますけど」
妙にあざとい仕草で、波多津薫の顔を斜め下から見上げる。
「いいよ」
意外なほどあっさりと、波多津薫はそう言った。
「……そうだね。ちゃんと話さないとって思ってた。いいよ。一緒に帰ろう、高田君」
「隆君」ではなく「高田君」と呼ばれた事に、なんだか、凄く胸が締めつけられた。
もう二度と会えなくなるような予感に、ぼくは戸惑った。
「ふたりにして」という波多津薫の言葉に、木須裕子は口を尖らせて帰って行った。
実業祭の帰りと同じ道を、ぼくと波多津薫は、同じ様に夕陽を浴びながら歩き出した。
ただ、あの日と違って、足取りはとても重かった。




