第二部 第五楽章 バーーーンと、大批判。
「いるよなぁ、その手のやつ」
木須裕子がぼくらに言い放った「聖飢魔Ⅱ批判」の内容を聞いて、鶴さんは、腹を抱えてゲラゲラと笑った。
「笑い事じゃないよ!」
波多津薫が例によって弾いていた「鬼」の演奏の手をを止めて、ふくれっ面を見せる。
夢竜の二階、いつもの練習部屋だ。
「……まぁ、その子の言う事も一理あってな」
そう言いながら、鶴さんはタバコに火を着ける。
「例えば……エース清水なんかは、元々はソウルだかファンクだかでプロデビューしてたのを、ダミアン陛下が、なんとか頼み込んで引き抜いたらしいしな」
鶴さんが、意外にもあっさりと木須裕子の意見を肯定する。
「だからって、似非メタル呼ばわりは許さないですよ」
ぼくは、少しムキになる。
「……聖飢魔Ⅱの面白さは“音楽の多様性”だと、おれは思ってるからなぁ。……そもそも、聖飢魔II自体、別にメタルにこだわってなさそうだし」
と、鶴さんは涼しい顔だ。
そうかもしれないけど、でもやっぱり、馬鹿にされたままはとても悔しい。
「で、その“木須”ってどんな子なの? 実業祭には出てたか?」
鶴さんがなにやら興味深そうに訊くと、
「一年生だから、あの時は弾いてないよ。えっと、背はちっちゃくて、可愛い顔してて、気が強くて……」
なんだかイマイチわかりづらい説明を、波多津薫が始めた。こういう事の言語化作業は、この子はちょっと苦手だ。
「……あと、青いSG使ってる。結構キズとかあって、古そうなやつ」
それを聞いて、鶴さんが、何か考え込む。
「……それって、ひょっとして、星のステッカーが貼ってないよな?」
鶴さんの質問に、ぼくは、木須裕子のギターの事を思い返した。
裏側にいくつも貼られてた、星型の白いステッカー。
「ありました! たしかにありましたよ」
ぼくの言葉に、鶴さんの顔がひきつる。
「え? なに。何か知ってるの?」
波多津薫が、身を乗り出す。鶴さんは、どこか一点を見つめて、ぶつぶつと口の中で何かをつぶやいている。
「……木須……青いSG……マジか……」
ぼくと波多津薫は、なにやら様子のおかしい鶴さんの顔を、ふたりしてじっと見つめた。




