第二部 第二楽章 どうしたものやら
「裕子に見られた!?」
小上がり席の食器を引き上げて来た波多津薫が、すこし大きな声をあげた。
夢竜の厨房だ。
今日はギターの練習日なので、ぼくたちふたりは、いつものように店の仕事を手伝っていた。
「うん。……どうしようか」
ぼくは、洗い物の手を止めずにつぶやいた。
「うーん。なんていうか、あんまり、世間には知られたくはないんだけども」
波多津薫も、眉をひそめて困った顔をしてみせた。
……よく言うよ。いつも自分が積極的に来るくせに。
思った事が、顔に出たのだろうか。
「なに? なにか言いたい事ある?」
波多津薫は、露骨に不機嫌そうな顔でそう言った。
「い、いや。なんでもないよ」
ぼくは、洗い物の手を止めずに言う。
その時「ギィ」と、裏口のドアが開く音がした。
「ごめんね、遅くなって」
佐知子さんが、いつもより遅めに入って来た。にこにこといつもどおりに笑っているけど、目に見えておおきくなったお腹は、明らかに重くて大変そうだ。
「無理しないで、休んでればいいのに」
波多津薫がそう言った。だけど、
「動いてないと不安だから。さ、上で休んで。あとで、ご飯持っていくわね」
と、佐知子さんは笑った。
ぼくらふたりは手早く後片付けを終えると、佐知子さんの事を少し心配しながらも、いそいそと二階に上がって行った。




