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第六十四楽章 日常に、戻る。

 十一月も終盤に入ると、夜の町の気温はなにやら一気に下がった。


 道ゆく人々の服装もカラフルな物からモノトーンな物に変わっていき、それにもなんだか、季節を感じさせられる。


 ぼくは夢竜でのバイトを終えて、


「先に行ってろ」


 という鶴さんの指示を受け、飲み屋街の一角にあるらしい「Zトレイン」というライブバーに向かっていた。


 背中には、アンジェラスの入ったギターケース。


 ギターの稽古では、最近は、聖飢魔Ⅱだけでなく、他のバンドの曲も練習メニューに入ってきた。


 鶴さんが特に力を入れているのは「レッドツェッペリン」の曲。


「来年もまた演ろう。次は“ツェッペリン”練習しといてな」


 秋祭りのあと、ぼくらは中田マサユキさんにそう言われた。

 一人づつ握手をさせてもらって、記念写真も撮った。リズム隊のふたりはそれぞれの道具にサインをもらい「リーダーに自慢する」と、喜んでいた。


 練習部屋でレッドツェッペリンの「移民の歌」のCDを聴いた時、


「“アダムの林檎”って、これが元ネタなんですね」


 と呟いたら、


「パクりじゃねぇ。オマージュ!」


 と、ぼくは鶴さんに軽いゲンコツを喰らった。


 波多津薫とのLINEでのやり取りは、最近、少し頻度が減った。


 文面では元気そうだけど、実際にはわからない。


「そろそろお見舞いに行きたい」


 と、LINEを送っても、


「すっぴんだしお風呂はいってないし、絶対ムリ!」


 としか、返ってこない。……別に、気にしないのだけれども。


 軽音部は、二人体制で副部長になった古賀と二里の指導のもと、毎年恒例らしい「クリスマス慰問コンサート」に向けての練習が始まっていた。


 先の実業祭で波多津薫のローディーについていた一年生女子は“ギター歴三年”の猛者だ。


 しかも、波多津薫とバンドを組んでいるぼくを何故か“ライバル視”しているらしく、ぼくにしょっちゅう「ギターバトル」を挑んできて、ぼくはここでも、自分の実力のなさに落ち込む日々を過ごしていた。


 とはいえ、すべては順調に過ぎていた。


 あとは「近々である」と学校で伝えられた、波多津薫の退院を待つだけだ。


 気がつくと、目印の“商工会館”まで来てしまっていた。


 路地に入り少し歩くと、右手に「Zトレイン・2F」というネオン看板が掛かっていた。

 “ひょい”と見ると、細長く急な階段の先にも、通路が続いている様子だった。


 ぼくはおっかなびっくり、その階段を登りはじめた。












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