第五十四楽章 緊急提案!
演奏が終わると、スタジオ内に自然に拍手が起きた。
ぼくは、隅っこにいるリーダーに、笑顔を向けた。リーダーは、無言でサタニックサインを返してくれた。
今回の演奏。ぼくは思い切って早弾きを放棄して、チョーキング……いわゆる“鳴きのギター”を主軸にアレンジして弾いてみた。さらに、ピッキングがうまくいかないで躓いていたところを、タッピングで弾いてみた。
これが、思った以上にハマった。
「いいじゃん。かっこいいよ」
鶴さんが、笑顔を見せる。
「確かに。無理して弾いてリズムを乱すより、こっちの方がすっきりしてますね」
部長も、興奮気味にそう言った。
よし。
現状で自分にできる、最高の「BRAND NEW SONG」は、見えてきた。あとは、これを煮詰めていくだけだ。
「もう一曲は、蝋人形だっけ」
狡決亜Ⅱのドラマーさんが、鶴さんに訊ねる。
「はい。どうします、そっちも一回やってみますか」
鶴さんが言うと、リズム隊のふたりは“いつでもどうぞ”とばかりにOKサインを作ってみせた。
「あ、あの!」
ぼくは、思い切って声をあげた。
「どうした?」
鶴さんが、きょとんとした顔をする。スタジオ内の全員が、ぼくを見る。
「あの……。曲を変えませんか」
ぼくの一言に、鶴さんが唖然とする。
「お前、あと一週間しかないのに、なに言ってんだよ」
そうだ。
こんな残り時間で曲の変更をするなんて、素人のぼくにはあり得ないだろう。
だけど。
「……真昼の月が、やりたいんです」
ぼくは、真っ直ぐに鶴さんの目を見て言った。




