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第五十一楽章 聴かせたい歌があるんだ(緊急)!

波多津「おつかれー」


「おつかれ!」高田


「具合はどう」高田


波多津「ちょっとだるいくらいで、ぜんぜん平気」


波多津「部長とはうまくやってる?」


「もちろん」高田


「見てて勉強になる事ばかりで、やりがいがある」高田


波多津「うまいもんね」


波多津「ムカってくるぐらい笑」


「笑

 うん。凄い」高田


「最近は、ボーカルも特訓中」高田


波多津「ボーカルもやるの?」


「うん」高田


波多津「わたしは、アコギ持ち込んでたまに弾いてるよ」


波多津「屋上とかで」


「笑」高田


「そんな入院患者、初めて聞いた」高田


波多津「たしかに笑」


波多津「病気になったら、今までそうでもなかった曲とか、急に好きになる」


波多津「こんなん言うと、ホントに悪いみたいけど笑」


「良くはないから(汗)」高田


「例えば、どれ?」高田


波多津「最近くり返しちゃうのは真昼の月かな」


波多津「なんかすっごいはげまされる」


「たしかに。チャリティーソングにもなってたし」高田


「ほかには?」高田


波多津「戦慄のドナドナ笑」


「自虐ネタじゃん笑」高田


波多津「笑」


波多津「さて、ぼちぼち治療だ。またあとでね」


波多津「地獄で会おう」


「うん。頑張って」高田


「また」高田


***


 波多津薫とのLINEのやりとりを終えて、ぼくはスマホをそっとテーブルに伏せた。


 夕方の六時半。


 窓から射し込む夕陽で赤く染まった室内では、秋祭りで演奏する「BRAND NEW SONG」がリピート再生され続けている。


 自分の手のひらを見る。


 潰れて癒えた血豆の下から、また、新たな血豆ができている。

 最近は、もう、この痛みに慣れてきている。


 この痛みは、練習の証しだ。

 そして、今、初めて目標を持って生きている事の証しだ。


 さっきの波多津とのLINEで、思いついた事がある。鶴さんと部長には反対されるだろう。だけど、どうしてもやってみたくなった。


 深呼吸をひとつついて、ぼくは、ギターケースを抱えて自転車に飛び乗った。


 夢竜に向かって、夜の市街地を走る。


 本番まで、あと、十日。

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