第四十二楽章 軽音部ライブ、開演!
ドラムのカウントの声を合図に、会場の灯りが絞られ、舞台の幕が上がった。
四小節目から、ベースの演奏が加わる。
舞台の両端には、大きなモニターが設置されていて、それぞれの画面に「伊万里実業高校軽音楽部ライブ」という文字が映し出された。会場のあちこちにぱらぱらと拍手があがる。
ステージ下座から、ふたりがセミアコースティックのギターを持って現れた。
古賀と、二里のふたりだ。
ぱらぱらと鳴らされた拍手に、ふたりそろって、マイクスタンドの前でおじぎをした。
ギターを構え、目線と呼吸とリズムをドラマーとリンクさせて、演奏が始まった。
「マリーゴールド(あいみょん)」と、モニターに表示される。
「うまいじゃん!」
鶴さんが、横で発した言葉に、ぼくも無言でうなずいた。
普段はぜんぜん練習していない様な素振りをしていたが、相変わらず、古賀と二里のふたりの歌と演奏は素晴らしかった。
ピッキングは正確で力強く、少しハスキーな歌声も、魅力的だった。
演奏の半ばからは、観客席は早くも総立ちになり、手拍子と歌声が自然と沸き起こっていた。
万雷の拍手を浴びながら、二曲目が始まった。
モニターには「ねぇ、(SHISHAMO)」と、表示された。
アップテンポなこの曲も、ふたりはしっかり弾きこなし、歌い上げた。
なにより、ふたりが舞台を楽しんでいるのが伝わってきた。
ぼくは、ふたりのことをすっかり見直してしまった。
演奏が終わり、ペットボトルの水を飲んでから、古賀と二里のふたりは舞台最前列から客席に向かって頭を下げ、手を振った。観客席からも大きな拍手と歓声が返された。
そのまま、古賀は舞台後部にあるキーボードの前に移動し、二里はその横のマイクスタンド前に、タンバリンを持ってスタンバイした。
古賀が、首にかかった髪の毛を後ろに払い、キーボード演奏を始めた。
優しく寂しげなピアノの音が、会場を包んだ。
その曲に乗って、舞台袖からギターを持ったふたりが現れた。
部長と、波多津薫だ。
ふたりが現れるやいなや、客席から、それぞれの名前を叫ぶ声がいくつも響いた。
波多津薫は、照れ臭そうな顔でマイクスタンドの前に立ち、ギターを構えた。
モニターに「打上花火(DAOKO×米津玄師)」と、表示された。
リフレインされるピアノに、部長のギターの音が乗り、波多津薫が、歌い始めた。二里のコーラスも、しっかりと決まる。
曲の途中から、ボーカルが部長に変わる。
波多津薫が、慎重にギターの音を乗せる。
観客席は、どことなく緊張感すら漂う演奏を、固唾を飲んで見守っていた。
演奏が終わった。
客席からは、爆発した様な拍手と歓声が巻き起こった。
「どうも、軽音楽部です」
部長がマイクを通して挨拶をする。また、拍手が起こる。
三年生から順にメンバーの紹介をし、各楽器のローディを担当している一年生も紹介される。
波多津薫は、例の雪だるまを持って、皆から歓声を浴びた。
「さぁ。いったん落ち着いたところで、速い曲行きましょう」
部長の言葉に、波多津薫のエッジの効いたギターが乗る。
モニターに「前前前世(RADWIMPS)」と表示され、客席のボルテージが一気に上がった。
部長が、笑顔で歌い始めた。




