第四十楽章 実業祭!
あれだけの暑さが嘘だったかのように、九月の終わりになると、朝晩にはちょっとした上着を羽織りたくなるくらいに、町は涼しくなった。
ぼくは今、渡り廊下の側に張られたテントの下で、クラスの模擬店が販売する焼き鳥を焼いている。
毎年かわらずの盛況っぷりで、前もってストックしてあるパック詰めの「焼き鳥セット」が飛ぶように売れていく。
今日は「実業祭」の二日目だ。
ぼくは、午前中で店番を終わり、午後から鶴さんと合流して、軽音部のライブを観る事になっている。
あの日、部長のおかげで波多津薫と仲直りできてから、ぼくは、それまで以上にギターの練習をするようになった。指先や手のひらにに血豆ができても、そこをテープでぐるぐる巻きにして弾き続けた。
いつまでも、波多津薫と鶴さんの足手まといでいるのは嫌だった。
波多津薫は波多津薫で、あの後で部長に怒られたらしい。
「どんな事を教えているのか、見せてみろ」と言われ、テキストとノートを提示したところ「小学生に高校数学おしえるみたいなマネするな」と、お説教をくらったらしい。
かくして、ふたりの座学の時間は、
「たのしいおんがく」だの、「はじめてのバイエル」だのが、教科書に採用された。
基礎の基礎から習う音楽はとても面白くて、ぼくは、夢中になって勉強した。
「いまり秋祭り」での披露曲は、
「蝋人形の館」と「BRAND NEW SONG」に決定し、みっちりと練習が続いていた。
最近では、鶴さんが「だいぶ上手くなったなぁ」と言ってくれるくらいには、弾けるようになってきた。
ふたりに褒められるのは素直に嬉しくて、その後の練習に、さらに熱が入った。
交代の人が来て、ぼくは“お役御免”になった。
テントを出る時「薫に“頑張って”ってつたえて」と数人の女子生徒から声を掛けられた。
ぼくは「わかった」と言って、テントを出た。
校門の側で、鶴さんと待ち合わせた時間が、近づいていた。




