第二十ニ楽章 緊急招集!
いきなりLINEの通知が鳴ったのは、ぼくが自室で波多津薫から借りた「超有害行脚」のDVDを観ていた時だった。
「明日(もう今日か)の予定!」
「夕方6時に、鶴さんの夢竜に集合」
「服装は、上は白T、下ジャージ。持ってくる物、ギターとノート!」
「ご飯はおいしい“まかない”が出ます。お母さんに言っておくこと」
と、四件が一気に来た。
もちろん、送信したのは波多津薫だ。
“まかない”?
……よくわからないけど「了解です」と、返信した。
次の日。
夕方になると、ぼくは母親に「遅くなるからほっといていい」と言い残し、鶴さんの“夢竜”に向かった。
ヒグラシの鳴き声を聞きながら、自転車を走らせる。
店に着き、まだ暖簾が仕舞ってある入り口を潜ると、カウンターを布巾で拭き掃除している波多津薫と、厨房で炭を起こしている鶴さんが同時に「お疲れ様!」と言った。
「あ……あの」
ぼくが狼狽えると、波多津薫は「高田君、こっち」と、ぼくを二階に連れて上がった。
この間あがった鶴さんの部屋の手前の小部屋に、無造作に黒いエプロンが置いてあった。
「じゃあ、着てみて」
言われるがままに、ぼくは、それを身につけた。少し大きいが、とりあえずは、着る事が出来た。
「うん、なかなか似合ってる。じゃ、下で仕事の説明をするね」
波多津薫はそう言うと、足速に階段を降りて行った。
仕事……?
ギターの練習をするんじゃないの……?
ぼくは頭の中を「?」でいっぱいにしながら、波多津薫の後に続いた。




