その結末は血に塗れ
ヨガイラがどこに行ったのか。
カノンは不安になる。あの人はどこかおかしい。
最初は神様みたいに美しく神々しい人だと思ったでも。でも本当にそうなのだろうか?
「ヨガイラが……アイツが、マルールの言う通りにしないから俺たちまでこんな目に合わせたっていうのか?」
レッドの声が掠れている。
彼は泣きそうな顔になっていた。
「マルールのせいで俺たちはこんな目に……?
……カルパティアは? そこの男の子はどうしてだ?」
「お前たちの村以降は適当だよ。
力のある男の多いところから選んだ」
「それで、国を守ったつもりだったのかよ」
彼は言葉を吐き捨てる。
額を手で覆った。
「俺は、誰かが犠牲にならなければと思って逆らわなかった。
俺たちが役割を果たしていれば他の奴らまで半獣にされないと……でもカルパティアが来て……。
でも、でもまだ俺は信じてたんだ。半獣を増やす以外の方法を取るってな。
なのに、まだ……!」
「くだら、んな。
魔王を8年も見つけられなかったのに、何をゴチャゴチャと……」
大佐が一歩足を踏み出す。血は止まらない。
「まあ、だがお前は賢い方だったな。生き残る術が何か、分かっていた。
他の奴は抵抗するだけして、正に犬死にしやがった!
全く、作る、コストと合わない……」
「犬死にねえ」
背後から声がした。
カノンはギョッとなり振り返るがレッドは振り返らなかった。
ヨガイラだった。彼の顔には異様な笑みが浮かんでいる。
足元に何かあるのが見えた。あれは……。
「テメェの娘もそうなんじゃねえの?」
「ヨガイラ、貴様……まさか……」
大佐は真っ白な顔でヨガイラを睨んだ。
「そのまさかだよ!」
彼はゲラゲラ笑うと何かを投げた。
グチャっと音がする。
それはマルールだった。手足が別々の方向を向き、首が逆向きになっていた。
大佐の咆哮とヨガイラの笑い声が部屋に響く。
カノンはその場に座り込んだ。
あの、どこかおかしくてでも素直で可愛いマルールの変わり果てた姿に涙が溢れる。
「マルール! あ、ああ、マルール……私の可愛いマルール……」
「お前のマルールはもういないんだよ!」
嗄れたヨガイラの声はまるで悪魔のようだった。
レッドは泣き噦るカノンを抱き締めた。
「……マルール……マルール……」
大佐は変わり果てた娘を抱き狂ったように彼女の名前を連呼する。
その姿にカノンは憐れみを覚える。
だが、彼のやったことは結局こういうことなのだ。
誰かの大事なものを奪うということ。
それが巡り巡って彼にやってきた。
「これで分かったでしょう。自分のしたことがどういうことか……。
さようなら、大佐……」
ピンショーが手をかざす。
今度は誰も止めなかった。
ポキッと音がして、大佐の首がダランと垂れる。
カノンは必死でレッドに縋り付く。
どうしてこうなってしまったのだろう。
何かこうなる前に出来ることがあったはずなのに。




