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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
極道の世界へ
9/50

命名

玉野から「明日から来い」と言われた光一郎だったが、彰も自分自身も思いのほか怪我が酷く、玉野に連絡を入れ一週間延ばしてもらった。

一週間後の朝、玉野に負けまいと、彰と二人してパリッとリーゼントをキメて事務所に向かった。

彰は親に「行く所が出来たからもう二度と帰って来ん!探さんといてくれ」と言い残して部屋を解約してもらった。

親は一応心配そうにしたが当の彰は「あらぁ多分芝居や!本心は面倒なんを口減らし出来でけたってくらいにしか思とらん」と語った。

光一郎にとっては、始めから親などいなかったので理解出来なかったが、施設の大人達と同じ様なものだろうと思った。

事務所に着いた光一郎はドアを勢い良く開け「お早うございます」と気合いを入れて挨拶した。その威勢の良さに玉野はニッコリ笑い「おう!待っとったど!怪我の事を心配しとったけどその必要はないみたいやなぁ」と返した。

「一週間も待ってもろてスンマセン!ワシは光一郎言うて、コッチは相棒の井上彰言います」

光一郎が二人合わせて自己紹介をすると、玉野は珍しく目を丸くして「ほうか?光一郎?何、光一郎や」と聞いて来た。

光一郎は生まれた時からの経緯を説明して、「一応、田中と言う名字があるけど、そんなん捨てました」と説明した。

すると玉野は意外そうな顔をして、その後、納得した様に「ホンマか?ほなら光一郎?お前、ワシの養子になれ!これから先、戸籍がないのんも何かと障害が出るやろ。今日からお前は"玉野光一郎"や」と光一郎にとって耳を疑う様な提案をして来た。

「玉野光一郎…何かムッチャ嬉しいです!初めてホンマモンの名前をもろたみたいや」とらしくない感じで子供の様に喜んだ。

それを見て玉野は「ほうか?そない喜んでもうたら、コッチも嬉しいわ!ほんで、彰、言うたな?お前、光一郎にほだされて、とか甘い考えで事務所ここに来たんちゃうやろな?覚悟はちゃんと出来とんか?」と光一郎と違い、凄んでみせた。

これは言わば玉野の親心とも言うべき資格試験だった。彰もそれを察知したのか「分かっとります!光一郎にも言いましたけど、命捨てて来ました」と気合いを入れて返した。

その言葉を聞いた玉野はソファから立ち上がり「ヨッシャ、分かった!エエか?二人とも、岡山組ウチはこの世界でも武闘派で鳴らしとる組や!弱っちぃヤツ、タマ張られへんヤツはいらんから、その辺は覚悟しとけよ」と打って変わって険しい表情で叫んだ。

「分かりました!オレらでタマ張って岡山組クミの為に働きます」

こう叫ぶ光一郎の脳裏には、始めてここに来た時と同様に、彰と二人でのし上がる事をイメージしていた。

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