仇討ち
彰のお陰で住処を手に入れた光一郎だったが、学校へ行く事はもう無理だろうと話した。
学校側には、施設を出て行方をくらました光一郎の事について、連絡は行っているだろうから、自分は学校を辞める旨の話しをした。
始めは光一郎のいない学校など、つまらないから自分も辞めると言う彰だったが、彰まで辞めてしまっては、この部屋の事まで学校に知られる事となるだろう。そうなってしまっては元も子もないと言う事で、彰だけは学校へ行った。
その間、一人きりになってしまう光一郎だったが、外出をして、もし補導でもされたら、これも元も子もない事となる。その為、彰が我慢して学校へ行くのだからと、部屋で暇な時間を一人で過ごす事となった。
その分、夜になれば、二人して昼間遊べない分、色んな所で遊び回った。
そして、軍資金が無くなれば、夜の雀荘にカモを探してイカサマ打ちを続けた。
そして土日ともなれば、普段の鬱憤を晴らす様に繁華街を荒らした。
そんな生活を続けている内に、二人は繁華街ですっかり悪名高い有名人となってしまい、街の不良共から目を付けられる様になった。
そしてある日、夜の街を歩いていた二人は、補導員に見つかり逃げる事になった。二人は補導員や警察に追われる事になった時、少しでもリスクを避ける為、互いに別々に逃げて、後で落ち合う為の店や場所を日替わりで決めていた。そしてこの日も、別れて逃げる事となった。
光一郎は補導員を上手く撒き、落ち合う場所で彰を待った。しかし彰は待てど暮らせど、その場所に現れなかった。
「まさか?アイツに限って捕まったんか?」光一郎は街中を探し回った。すると目立たない路地裏で彰は傷だらけで倒れていた。
「オイ!彰!しっかりせぇ」光一郎は彰を抱き起こした。
「スマン、光一郎!逃げとる時、変な五人組に絡まれてなぁ、ドジってもうたわ」
光一郎は一旦、彰を部屋に連れ帰った後、一人で繁華街に戻った。
彰から「相手は五人組で一人はモヒカン、一人はドレッドヘアの男がいた」と聞きつけ「そんな目立つヤツらすぐ見つかる筈や」と再び戻った街中を探した。そして、直ぐに男達を見つけた。
「オイ!お前ら待てや!先っきお前らワシの仲間、可愛がってくれたやろ」と五人組を呼び止めた。
「ハ〜ン?何や?ワレ等やろ?最近この辺でイチビっとる言う悪ガキ二人組は」
どうやら光一郎達の悪名を聞きつけ、二人を狙った連中らしかった。
「何がイチビリやねん?天下の公道で遊んどって何か悪いんか?」五人組を相手にしても光一郎は一切怯まなかった。
「ワレ!中坊やろ?言うとくけどワシ等"岡山組の玉野さん"知ってんねんど」一番のリーダー格であろうドレッドヘアの男がヤクザの名前を出し、凄んで来た。
「そんな無名人知っとんがそんなにエライんか?」生まれた時から生に対する執着心のない光一郎にはヤクザなど、恐ろしい存在でも何でもなかった。
「オイ、コイツも可愛がったろうぜ」五人組が一斉に光一郎に襲いかかった。
光一郎は今までも、幾度かの喧嘩の中、複数人を相手にした事もあったが、最高で三人だった。しかも精々、高校生くらいの半端な相手だった。でもそんな事は関係なかった。光一郎にとって初めて出来た仲間を痛め付けられた事が許せなかった。
何をどうやったのか?とにかく怒りに任せて五人組に対して暴れ回った。そして気が付けば、足元に五人の男達は倒れていた。
「身体中が痛い。結構ヤラれてもうたなぁ」五人を倒し、帰ろうとしたその時、低音の効いた声が聞こえてきた。
「そこのクソガキ!ちょう待て」と呼び止められた。声の方を振り返ると黒のダブルのスーツに身を包み、暗い夜の街中にも関わらず濃い目のブラウンのサングラスをした凄みのある男が立っていた。
「こらアカン、ホンマモンや」いくら恐れを知らない光一郎と言えど、まだ中学生にとっては流石に、この凄みには身が縮む思いがした。
「ちょう、ワシに付いて来い」サングラスの男はより一層凄みを増した。
「何や!ワシの人生15年で終わりか…」光一郎はやり過ぎてしまった自分の命が尽きる事を覚悟した。




