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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
青春の旅路の果てに
47/50

ずっと二人で

今から7時間ほど前にさかのぼる。爆弾のタマミツについて、浜松町界隈で見掛けたとの目撃情報を元に、備後組若頭、磯貝 俊英は、コルトパイソンをふところに忍ばせて街を流していた。浜松町駅から少し外れた飲み屋がのきを連ねる一角で、遂に磯貝はターゲットを視界に入れた。

「ヤ…ヤツか?んー、雰囲気や身なりは変わってもうとるけどヤツに間違いなさそうやな」磯貝はターゲットに向けてコルトパイソンを構えた。しかし、玉野 光一郎は一軒の飲み屋に入って行ってしまった。

「チッ!拳銃コイツを持って店内に入ったら、厄介な事になる。仕方しゃあない。出て来るまで待つか」磯貝は店の近くで身をひそめてタマミツが再び姿を現すのを待つ事にした。しかし、待てど暮せどタマミツは姿を現さない。

「クソッ!ヤツめ!悠長に酒なんぞあおりやがって。出て来たら、絶対に一発で仕留しとめたる」磯貝は手持ち無沙汰ぶさたな分、時折コルトパイソンを取り出し、息を吹きかけてハンカチで拭いた。磯貝なりの執念の表れであろう。しかし、身を潜めていたのが生け垣の近くだった事から、この行動が磯貝にとって命取りとなってしまったのだった。

時間がどれだけ過ぎただろうか?足元には50本以上のタバコの吸い殻が捨てられていた。

「クーッ!エエ加減にせぇよ!一体、何時間、飲んどるんじゃ!」磯貝のイライラが頂点を極め様とした時だった。

「お疲れ〜!また明日から頑張ろう」若者達が楽しげに出て来た。この風景が、磯貝の苛立いらだちに拍車を掛けた。それがコルトパイソンの異常を見逃してしまったのだ。生け垣の近くで銃を出し入れしていたものだから、銃口から小さな赤虫が大量に入り込んで、薬莢やっきょう近くまで達していたのだ。

玉野と景子は思慕の情を交わすかの如く一緒に歩き出していた。

「クソッ!散々待たせた挙げ句、姉ちゃんとイチャイチャかい!エエやろ、その最愛の姉ちゃんの前で無惨むざんな最期をげろや」磯貝はコルトパイソンを構えた。その時、玉野は背後からただならぬ殺気を感じた。

「危ない!」玉野は景子をかばう様に防御姿勢を取った。それとほぼ同時に磯貝のコルトパイソンは火を吹いた。"パーンッ"乾いた音が辺り一面に鳴り響いた。ムクッと起き上がった玉野は警戒しつつ音が鳴った方角に歩き出した。すると、そこにはダブルのスーツを着用し真っ黒なサングラスを掛けた男が、拳銃を握った手を血で真っ赤に染めて倒れていた。

「コイツ!磯貝か?フッ!性懲りもなく…どうやら暴発させよったな?コイツは…アッチに行っても、このまんま生還、出来でけへんな」玉野はそう言い残すときびすを返して景子の元に歩み寄った。

「タマミツさん、大丈夫だったん?」上目遣いで景子が心配そうに聞いて来た。

「あぁ、大丈夫!自爆しよった。それよりケイちゃん。その…タマミツって言うん止めてもうてエエかな?タマミツはケイちゃんがった世界で死んだんや。光一郎って呼んでくれ」玉野は少し照れて後頭部をきながら言った。

「ウン、分かった。じゃあ、アタシも景子って呼んでくれる?」景子は頬を赤らめている。

「お…おぉ…け…景子」2人はお互いに寄り添いながら玉野のアパートに帰って行った。


その日、部屋に入った2人は、お互いを求め合う様に、一つになった。もう二度と会う事は無い!そう思って来た分、2人だけの濃密な時間を共有した。


「景子、ここに引越してくるか?」ベッドの中、景子の肩を抱きながら玉野は聞いた。

「ウン、これからはずっと一緒だよね」景子は玉野の引き締まった胸に顔をうずめた。

「もちろんや!もう絶対に離れへん」

2人は再び溶け込む様に一つになって行った。

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