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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
Come back to the real world
42/50

Welcome back Mr.Niimi

新見を抱えて自宅アパートに戻った玉野は、新見の服を脱がせて、自分のパジャマに着替えさせてやった。身体には、あちこちに打撲痕だぼくこんがあり、恐らく腕は折れている事だろう。しかし、玉野の経験上、朝には完治しているはずだ。ムコウの世界にどれ程滞在するかは分からないが、コッチの世界では、一晩しか時間が経たない。しかし、身体はムコウの世界にいる時間だけ経過しているのだ。

「ちょっと長い夢になると思いますが、起きた時、絶対に良い夢だったって思えますよ。行ってらっしゃい、新見さん」自分のベッドに新見を寝かせた玉野は、畳の上に寝そべり、タオルケットを掛けて眠りに就いた。

やがて朝になり、いつもの癖で早くに起きた玉野は、ベッドの上の新見を見た。「もう少し、旅は続いてるみたいだな。傷は…やっぱ、もう治ってるよ」微笑ほほえみを浮かべた玉野は、買い出しの為に外出した。

近くのコンビニエンスストアで新見の好きそうな食料を色々買い込み帰宅した。部屋に入ると新見が目を覚ましているのが直ぐに分かった。

「やぁ!お帰りなさい…て言うのも変か?お早うございます」

新見は玉野の顔を見ても、どこか浮かない表情のまま、まるでキツネにつままれた様な様子だった。玉野は自分が助けた事を隠す為に、嘘をついてとぼける事にした。

「いやぁ、驚きましたよ!昨夜ゆうべ玄関で何か音がしたと思ったら新見さんが倒れてるんだから!あっ!何かいます?腹減ってるでしょう?」

玉野は、手に持っていたコンビニの袋をかかげた。

するとようやく新見は口を開いた。「あっ…あのう?どちら様でしたっけ?」(そうやろな。どこまでか分からんけど、記憶障害は起こしとるわな)しかし玉野はとぼけ続けた。

「嫌やだなぁ?僕ですよ。た・ま・の!新見さんの会社の後輩の玉野光一郎ですよ」記憶を無くしている事が分かっている玉野は、わざと説明っぽく自己紹介をした。すると、少しだが、記憶が戻った様だった。

「あぁ、玉野君ね!でっ…僕は何でここで寝てたの?」やはり、まだ記憶が混濁こんだくしている様だ。

「何か昨日、飲みすぎたんですかね?二人で飲みに行って、新見さん、電話で彼女さんと話した後、僕に20万貸してくれって…その後、ATMで別れて、そしたらその後、何でか僕の部屋の前で倒れてるんだから!ビックリですよ」またまた説明っぽく話して新見の記憶を誘発させようと試みた。

「えっ?じゃあケイさんは?女の人、一緒にいませんでしたか?」(ケイさん?やっぱりこの人もリュウさんのトコに拾われとったんやな)

「何言ってんです?何か悪い夢でも見てたんですか?でも、もう大丈夫ですよ!ちゃんと戻って来れたんだから」玉野は意味深に話した。

すると新見は記憶を手繰たぐり寄せる様に考え込んだ。玉野の感が正しければ、新見の記憶障害は自分よりはマシなはずだった。

「それより、また明日から仕事なんだし、とりあえず腹ごしらえして、ゆっくりして下さいよ」

玉野は大盛りカップうどんを新見に差し出しながら言った。新見はまだ考え込んでいる。しかし玉野の誘導もあり、確実に思い出していっている様だった。玉野は更に誘導を続けた。

「それより、これどうします?」玉野は昨日貸した20万円を新見に見せながら言った。

「そっ…そうだった!美香に謝らなきゃ!電話、電話っと」新見は玉野の言葉で思い出した様に辺りを探り出した。どうやらかなり思い出したらしい。

「はい!これでしょ?」玉野は新見の携帯電話といなり寿司と巻き寿司が3個づつ入った助六を差し出した。

「どっ…どうもスミマセン」新見はかしこまって受け取った。そして、恋人に電話を掛けた。新見の態度は昨夜のそれとは打って変わって優しさを含ませていた。そして恋人に、出来た子供を産んで、結婚しようとプロポーズを始めた。その様子を玉野は涼しい目で見つめていた。

しかし、電話を切った後の新見のある一言で玉野は動揺した。

「ねぇ、玉野君?君、タマミツって人知ってるっすか?」ここで動揺を見せる訳にはいかない。玉野は冷静さを保った。

「タマミツ…?はて、誰ですか?それより、その変な敬語、止めて下さいよ!何があったか知りませんけど、やりにくいんで、今まで通りタメ語でお願いします」と玉野は飄々と答えた。

「えっ?あぁ、ゴメン!そうか、玉野君も知らないのか!実は、オレが見た夢の中にもその名前が出てきたんだ」

この言葉で玉野は表情と雰囲気を変えてしまった。「夢で聞いた?タマミツを?」(まさか、リュウさん、ワシの事を喋ったんか?)

「どっ…どうしたんだよ?玉野君?」狼狽する新見に、玉野は我に返った。

「イヤッ!スミマセン!何でもないです。それより、結婚するんですね?じゃあ、この20万円お祝いで受け取って下さい」玉野の雰囲気はすっかり元に戻っていた。すると、今度は新見の雰囲気が変わった。

「イヤッ!ありがたいけど、辞退させてもらうよ!オレは今まで玉野君みたいに堅実に生きて来なかった!これから美香と子供を守って行く為に、一からしっかりと生きて行こうと思うんだ」

新見は、今までに見た事がない様な凛々しい顔つきになっていた。

「フッ、何か、昨夜ゆうべはとても良い夢を見られたんですね」玉野は、涼しい顔をしながら言った。

「何か分からないけど、玉野君がたまに見せる雰囲気、昔お世話になった懐かしい人を見てる様に感じるよ」新見の目線が遠くなった。それを見て、玉野は思った。(こう言う絆を求めてワシは生きて来たんかも知れへん)

「新見さん、明日から仕事ですけど、少しだけやりませんか」玉野は酒を飲む仕草で言った。

「ウン、イイねぇ」新見は笑顔で答えた。

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