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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
Come back to the real world
39/50

祭りの後

基本的に年中無休の店舗を相手にしているこの業界にとって、会社全体の休みと言うものが無く、忘年会や新年会と言った会社全体の行事が行われない。その為に気の合う仲間内だけでこれらを語った飲み会が行われる。

年が明け、新見 浩太は後輩の玉野、井原、笠岡をさそい、新年会としょうした飲み会を開催した。


「明けおめー、今年宜コトヨロー!」新見がかかげたジョッキに、3人は申し訳なさげに自分のジョッキをてがった。

「井原は来週くらいには一本立ち出来るな」新見がしずくしたたるジョッキをあおりながら言った。

「そ…そうっすね。明後日あさってから矢掛やがけさんの横で、アドバイス無しに試験してもらって、GOが出れば…」少しおどろおどろしい感じで答えた。

「笠岡は?お前も3ヶ月くらい経つよなあ。この玉野はオレの教えでお前くらいの時に、一人で走り始めたぜ」新見は隣に座る玉野の背中をバシッと叩いた。

「ボクなんかまだまだですよ。横乗りは浅口さんですけど、なんか分かりにくくって…新見さんに教えられた玉野さんがうらやましいなぁ」笠岡は少々知らっこく話した。

「まぁ、オレから教わったら早いわなぁ。なぁ玉野!お前、良くこんな場所で烏龍茶ウーロンちゃられるよなぁ」新見は今度は後頭部を軽く叩いた。

「そ…そうですね。ラッキーだったと思います。感謝してます」猫背気味ねこぜぎみの玉野が答えた。(この人、むっちゃ調子乗ってるけど、年末の貨物事故、大丈夫だったんかよ)横で聞いていた井原は思った。

しばらく宴会は続き、やがて調子に乗り過ぎた新見がつぶれた。

「オイオイ、大丈夫かよ。この人。大体、調子乗り過ぎなんだよ」鬱憤うっぷんまっていたのか、井原が辛辣しんらつに言葉をびせた。

「まぁまぁ、ここはボクが自転車で送って行くから、2人は帰ってもらって良いですよ」玉野が井原をたしなめつつ言った。

「まぁ、玉野さんは酒を飲んでないから大丈夫と思いますけど、そんな細い身体で本当にいけます?」笠岡は長身ながら線の細い玉野を見て言った。

「ハイ、全然、大丈夫ですよ」玉野は自分のベルトを外すと、酔った新見の尻辺りに当てて、自分の背中に密着させると、玉野の腹辺りでベルトをくくり付け、立ち上がった。するといとも簡単に新見の足は宙に浮き、そのまま自転車にまたがった。そしてベルトを新見の尻から背中にらした。

「おぉ、スゲー!」2人は鮮やかな玉野の体捌たいさばきに感動した。

「それじゃあ、お疲れ様です」そう言い残すと玉野の自転車は暗闇へと消えて行った。

「玉野さん、凄いっすね。ボク、玉野さんの下に付きたいっす」消えた自転車を見つめながら、笠岡が言った。

「だよなぁ。あんなチョケてる人より全然頼りになるもんなぁ。しかし玉野さんも、あんな人と付き合って良くやるよ」井原もみじみと答えた。


間もなく新見のアパートに着いた玉野は、肩に新見をかかえ上げ、階段を上がった。

「新見さん、ウチに着きましたよ」部屋の前に新見を降ろした玉野は、ポケットを探り、かぎを見つけた。鍵を開けると、新見を両腕で抱え上げ、部屋内まで運んだ。

「美香、ヤラせろよ」寝ぼけた新見は、玉野の口にキスをした。

「ウワッ!な…何するんです」新見を引きがした玉野は左腕のそでで口をいた。そして子供の様に眠る新見を見て、フッと微笑ほほえみを浮かべた。

鍵を掛け、ドアポストから鍵を投げ入れた玉野は、ふとつぶやいた。

「ケイちゃん、元気にしとるかなぁ」自分で関西弁をしゃべった事に気付かず、玉野はアパートを後にした。

物語の中で自転車の二人乗りをしている描写がありますが、時代背景的に二人乗りは警察の注意程度で済んだ頃のお話しです。

現在は自転車の道交法も改正され、厳罰化されています。自転車でも、二人乗り、飲酒運転、携帯やスマホの操作、傘を差しての運転など、全てが罰金の対象です。危険ですので絶対に止めましょう。

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