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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
Come back to the real world
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帰阪

年が明け、正月三が日が休みになり、玉野は急遽、大阪へ向かう事にした。今まで積極的に記憶を取り戻す行動は取って来なかったが、年末に大阪から来た大型トラックドライバーと話した事で、記憶を取り戻したい願望が芽生えたのだった。

大晦日に仕事を終えると、そのまま夜行バスに飛び乗り、バスの中で眠った。

翌、早朝の5時に大阪駅に着き、市営地下鉄御堂筋線で難波駅に向い、そこから南海本線に乗り換え、萩ノ茶屋駅に向かった。あらかじめ調べておいた岡山組の事務所がある場所だ。

駅を降りて、10分ほど歩いた所にそれはあった。ぎょう々しく構える門構えの、人を威圧する様な建物だった。玉野は辛うじて建物が見える物陰に隠れて様子をうかがった。元旦と言う事もあり、屈強そうな男達が、建物の周りを囲っている。玉野は恐ろしくなったが、しばらく、そのままでいた。

すると、後ろから肩を叩かれ、図太い声が聞こえて来た。

「兄ちゃん、ここで何しとんねん」玉野はビクッと身体を硬直させ、恐る恐る振り返った。そこには、岩石の様な顔に角刈りのかつらをかぶせた様な男が立っていた。

「す…スミマセン、前を通りたかったんですが、怖そうな方達が沢山いたもので、通るのを躊躇ためらってしまって」玉野はそれらしい理由を返した。

「そないか?それはまなんだな。せやけど安心してくれ。岡山組ウチは素人さんに手ぇ出す様なモンはらへんからな。気にせんと通ってくれ」玉野はその言葉を聞いて、軽く会釈した後、その場を去ろうとした。すると、男が呼び止めた。

「兄ちゃん、どっかでうた事なかったかのぉ?」玉野は男と目を合わせない様に「イエ、知りません」と言い残し、そそくさと退散した。

「やっぱ、玉野のアニキや光一郎がらんかったらさびしいのぉ」去り際に門の近くで話す別の男達の会話に、玉野は確信めいた思いをいだいた。それは"自分はかつて、この場所にいた"と言う事だ。もちろん確証は無いし、記憶が戻った訳でもない。あの日、ゴールデン街で目覚めてから、経験した事を合わせると、そうとしか思えなかった。

玉野は大通りでタクシーを拾うと、近くの大きな駅前へ行く様に告げた。タクシーは天王寺駅で停まり、玉野は駅前のネットカフェへと入って行った。

個室に案内された玉野は、早速パソコンを立ち上げ、何やら検索を始めた。

"備後組の事務所、襲撃される!相手は岡山組の猛者か?"

"岡山組のタマミツこと玉野光一郎!備後組を壊滅に追い込んだか?"

"タマミツに恐れを成す備後組の面々!"

"近隣住民は語る!街の治安は警察により守られているにあらず!岡山組の'タマミツ'のお陰だ!"

"街のダークヒーロー、タマミツの素顔"

"行動不能にしても、決して殺さないタマミツの強さの秘密とは?"

玉野が「岡山組・タマミツ・玉野光一郎」と打っただけで、様々なゴシップ記事が画面に羅列られつされた。玉野は一つ一つ記事を読んで行ったが、そこに書かれている内容はおおよそ自分の事が書かれたものとは思えなかった。しかし、時折写真付きで紹介された記事もあり、そこに写り込んでいる人物は、言われなければ分からない程だが、間違い無く自分自身だった。

「ボクは元は岡山組って言うトコのヤクザだったのか…しかも強かった?」玉野は自分を主人公にしたフィクション小説でも読んでいる様な気分になった。ただ、安心したのは"誰一人、殺害していない"と言う事だった。玉野はパソコンをシャットダウンすると、コーヒーを一口啜ひとくちすすった。

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