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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
Come back to the real world
37/50

貨物事故

老人と孫娘に出会って、ムコウの世界に付いて思い出した玉野だったが、それ以来ムコウの世界に行くまでの記憶を思い出す事無く、2ヶ月余りが経ち、忙しい年末を迎えていた。この頃になると、入荷に遅れが生じて、夕方の宵積よいづみにも支障を来たす様になる。

「玉野、お前のトコ、後、何が足りねぇんだ?」

3番バースに着けて宵積み中の新見が、隣の4番バースに着けている玉野に声を掛けた。

「ボクは後、コーヒーフレッシュだけですね」玉野はピッキングリストを見ながら答えた。

「やっぱ、お前もか?オレ、ちょっと見てくるよ」そう言って、新見は外の様子をうかがいに行った。外は入荷の大型トラックがズラリと並び、フォークリフトが所狭ところせましと走っていた。隅を見ると、フォークリフトが一台、オペレーターを待つ様に停まっていた。入社して2年半になる新見は、フォークリフトの資格は無かったが、何度か操作した経験があった為、ドサクサにまぎれて荷役を手伝う事にした。1m×1mのパレットに積まれた大量の荷物の中から、新見はコーヒーフレッシュだけを探し出し、中抜なかぬきを試みた。

通常パレットは荷台の後ろから順に引いていかなければいけない。しかし、新見はこの日、恋人の高梁 美香との約束があり、早く帰りたい余りに、ベテランオペレーターでも難しい中抜きをしてしまった。

「オイ!ストップ!あぁ、危ない!」大型トラックの運転手の怒号が響き渡ったが、時すでに遅く、コーヒーフレッシュは荷崩れを起こし、パレット一枚分が台無しになってしまった。

「あぁ、やってもうたなぁ。困るで。荷台が真っ白になってもうたやないか」運転手が怒るのも無理は無い。コーヒーフレッシュが破けて中身が飛び出して、荷台に溢れてしまっていた。こうなると次の配送が出来なくなるので、荷台を洗わなければいけない。騒ぎを聞きつけた玉野や事務所の社員も総出で清掃に当たった。

「お前、資格もないのに何、勝手にリフトを動かしてるんだ!いつも、急がば回れと言っとるだろ!とりあえず、こっちは皆んなに任せて、事故報告書を書いて来い」普段、温厚な所長の矢田もオカンムリだった。新見はしょげて事務所に向かった。

「ホンマ、かなわんなぁ。次の神戸行きの積み込みに間に合わんで」雑巾で荷台を拭きながら、運転手はブツブツと文句を言っている。それを聞いた玉野が反応した。

「運転手さん、関西から来てるんですか?」何故、そう聞いたのか?玉野自身も分からなかった。

「そやで。大阪の門真っちゅうトコからや。兄ちゃん、知っとんか?」全く、関西訛かんさいなまりがない男の問いに、少々、不思議に思いながら聞き返した。

「変な事を聞きますけど、岡山組って知ってます?」玉野は手持ち無沙汰で半分は無意識で聞いていた。

「岡山組?あぁ、あのヤクザのか?何や、半年ほど前に、敵対する組…確か、備後組やったっけ?殴り込みにうて、壊滅させられたんちゃうかったっけ?虚覚うろおぼえやけど、極道映画みたいで恐いなぁ」運転手は身を縮める様に腕を抱え込んで見せた。

「ふーん、そんな事があったんだ」何となく記憶を取り戻すきっかけになるかと思った玉野だったが、運転手の言う様に、映画の世界の話しでも聞いてる様でピンと来ないでいた。

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