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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
Come back to the real world
36/50

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「朝、早くから弁当やサンドウィッチを作ってくれるなんて、母ちゃんに大事にされてんだなぁ」途中でコンビニエンスストアで買った菓子パンをかじりながら、新見は感心した様に言った。

「イヤ、母はいませんので」玉野はついでに買ってくれた缶コーヒーのプルトップをひねった。

「じゃあ何?彼女か?」新見は少しニヤけた。

「自分です。自分で作ったんです。これ、いただきます」玉野は淡々と話した後、コーヒーを一口飲んだ。

「えーっ!マジかよ!自分で作るって。キモいな、お前」新見の心無い言葉に、一瞬ムッと来た玉野だったが、何も言い返さずにサンドウィッチを噛った。


空がすっかり明るくなり始めた頃、一軒目のスーパーマーケットに到着した。新見は玉野を荷台に乗せ、荷物を指示しながら荷役にやくを手伝わせた。

「それ!その黒酢ドリンク、一ケースで最後な」

新見は初日で商品を完全に把握はあくしきれていない玉野に対して、時折、罵倒しながら、助手の様に手伝わせた。玉野も少しでも覚えられる様にとメモを用意していたが、実際にはメモを取る暇も与えられずに、こき使われた。しかし、この対応が、呑み込みの早い玉野を、逆に早くに成長させる事になった。

二人で10件の配送を終えた頃、時刻は10:48を指していた。

「まだ、こんな時間かよ!新記録じゃん!流石はオレ」新見は玉野の手伝いを棚上げして、あたかも自分一人の手柄の如く、自画自賛した。

(なんかこの人、横暴だなぁ。まぁ仕事を教わってるんだから、文句は言えないけど、それにしても、この人と一緒にいたら、ストレスが溜まるよ)新見の姿を見て、玉野はそんな事を考えていた。この事も玉野の成長を早めた一因かも知れない。


この仕事は商品名、積み込み技術、運転技術、店舗までの道順、ルートの取り方、各店舗の特徴や決まり事など覚える事が山の様にある。その為に通常は、経験者でも、3~4ヶ月は横乗りを要する。しかし、全くの未経験者である玉野は、1ヶ月目には運転を任され、3ヶ月経った今、一人立ちを果たしたのだった。

「明日から一人立ちか。やっぱ先生が優秀だと成長も早いわなぁ。オレが教えた事、ちゃんと守って頑張れよ」新見は相変わらずの身勝手な物言いで、玉野を激励した。

「今まで、ありがとうございました。色々と思い出して頑張ります」玉野は謙遜けんそんして言ったが、内心は、この横暴な男と一日中、一緒にいる事から解放された事を安堵あんどしていた。


家に帰った玉野は、野菜炒めと馬鈴薯ジャガイモと玉ねぎのみそ汁をこさえて、一人でしょくした。明日からは、一人で配送をしなければならない。シャワーを浴びて早目に就寝した。

その夜、悪い夢を見た。親の顔も知らない玉野だったが、自分の父親が何者かに殺害され、怒り狂った玉野がかたきつ為に、単身殴り込みに行き、そこで返り討ちに合ったと言うものだった。

夜中に目を覚ました玉野は、余りのリアルな風景に、身体中から汗を吹き出させていた。

「何だ?あの夢は。まさか、ボクが記憶を失う前の現実リアルか?それに父親が出て来たけど、あの人は本当の父なんだろうか?だとしたらボクはヤクザの息子って事になる。それとボクも含めて皆んな、関西弁で喋ってたぞ。ボクは関西出身?じゃあ何で今、東京にいるんだろう」色々と思い出そうと試みたが、結局、何も思い出せないまま、再び眠りに就いた。

朝を迎え、昨夜の汗をシャワーで流した玉野は、弁当とパックサンドを作りそれ等をリュックに詰め込むと、自転車にまたがり、会社に向けて出発した。

途中、老人が歩道橋の階段を昇ろうとしている所に出くわした。玉野は自転車を停めて老人の方へ歩み寄った。

「あの、お爺さん、手をお貸ししましょうか?」玉野の優しい問い掛けに老人はニッコリ笑った。

「お若いの、有り難い申し出じゃが、ワシはこの通りまだ若いモンには負けんでな」とその場でジャンプして見せた。玉野が呆気に取られていると、後ろから女の声が聞こえた。

「お爺ちゃん、またそんな無理して。一人で散歩は控えてっていつも言ってるでしょ?あの、スミマセンでした」老人の孫娘と思われるその女は、玉野に軽く会釈した。二人で階段を昇って行く姿を見送りながら玉野はつぶやいた。

「何か、あの二人、リュウさんとケイちゃんに似てるなぁ」無意識に出た言葉に、言った本人が驚いた。

「えっ?リュウさんとケイちゃんて誰だ?」玉野は激しい頭痛に襲われ、頭を抱えてその場にうずくまった。そして1~2分後、ハッと我に還った様に思い出した。

「そうだ!変な世界に行って、リュウさんとケイちゃんに出会って助けられたんだ」玉野はしばらくその場から動けずにいた。

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