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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
猛獣の檻の中で
3/50

光一郎には校舎の裏にお気に入りの場所があった。

サブローや他の大人達からは「他人は絶対に心から信用すんな」と言われていた。その事もあり、光一郎は出来るだけ他人との関わりを持たない様にしていた。

そんな光一郎にとって一人っきりになれるこの場所がお気に入りだった。

たまに煙草を吸いに来る、少しツッパった不良生徒がいたが、そんな半端者には光一郎にとっては目障り以外の何者でも無かった。少しにらみを効かせると大概の者は「何やアイツ、ヤバそうやぞ!」とか「関わらん方がエエんちゃうか?」などと言って、その場を立ち去った。


そんな、ある日の事だった。あきらと言う少年と出会ったのは。

井上彰はたまに来る半端な不良生徒とは違い、ただ、そこに来ただけだった。

取り敢えず鬱陶しいと思った光一郎はいつもの様に彰にも睨みを効かせた。

しかし彰は「何や!何、凝視メンチ、切ってくれとんねん」と言いながら光一郎に擦りよって来た。

殴り合いをしたかった訳ではなかった光一郎だったが、自分の居場所を奪われる訳にいかないと思い、彰を一方的に殴り倒した。

手加減はした。ただ戦意を喪失させるくらいに殴ったはずだった。

しかし彰は、その場を去ろうとした光一郎の足首を掴んで「待てや!まだ負けとらんど」と言って来た。

それからは、どれだけ殴る蹴るを繰り返しただろうか?結局、気を失うまでやるはめになってしまった。


昼食時になってそのまま帰ろうとした光一郎の前に立ち塞がる様に校門の前に彰が立っていた。

「ワシはまだ負けてへんからなぁ」と絆創膏だらけの痛々しい顔を精一杯凄ませて言った。

致し方がない思いに駆られた光一郎は「付いて来いや」と言い放ち、彰に付いて来る様に促した。

恐らく、この時の彰は喧嘩が出来る場所に行くと思っていたに違いなかった。

しかし、彰の思惑は外れ、連れて行かれたのは雀荘だった。

「打てるか?」空いていた麻雀卓の椅子に腰を落とすと右足を組んで彰に聞いた。

「お…おぅ!」強がる訳でも無く、肩透かしをくらった気持ちで彰は返した。

彰は光一郎が思った以上に麻雀は強かった。しかしイカサマをしている気配は無かった。

「お前、何でイカサマなんかしよんねん!」カモにした二人の大人が店を出たのを見送ると、彰は光一郎に突っ掛かった。

「何や、お前…ワシがイカサマしとったん分かっとったんか?」

全く悪びれもせず言葉を言い放つ光一郎に、彰は胸ぐらを掴みに掛った。

「早よ大人になるためや、それがワシが生きて行くって決めたこの世界のルールや」光一郎は反抗もせずに静かに言った。

「そうなんか…」彰は掴んだ光一郎の胸ぐらをゆっくり放すと

「ワシにもその世界の仲間に入れろや!それでお前に殴られた事許したる」と言いながら背中を向けた。

「エエんか?お前の嫌いなイカサマ…覚えなアカンぞ」光一郎は再び椅子に腰を落とすと、彰の背中に語りかける様に言った。

「おぉ、ワシもお前と一緒や!早よ大人になりたい」

背中を向けた彰の肩が小刻みに震えていた。

「ほなら、お前は今日からワシの相棒や」光一郎は生まれて始めて損得抜きに人を信じようと思った。

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