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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
新天地 東京へ
29/50

鬼神の如く

「誰じゃあ!誰がりよったんじゃあ!」玉野の怒号が事務所内に響き渡った。

「スンマセン、アニキ。三田村等、五人が備後組の残党と裏から手回しして、彰を呼び出して、埠頭倉庫で私刑リンチされたみたいです。彰は何とか事務所ウチに辿り着いたんですが、二言三言喋った後…クッ…」電話口の向こうの市橋も悔しさを噛み殺して話しているのが分かった。

「市橋、大阪そっちの事は任せた。キッチリ始末カタ付けろ」そう言い残して玉野は電話を切った。

「光一郎、聞いた通りや。お前の悔し…オイ!光一郎は?」光一郎に向け話していたつもりの玉野は、いつの間にかいなくなった光一郎に気付いた。

「アイツ…まさか?」玉野の危惧した事は当たっていた。光一郎は誰にも告げずに単身、大阪に乗り込む為、東京駅に向かった。


新大阪駅に着いた光一郎は、いつか彰を救出した時と同様にタクシー乗り場の先頭に割り込み、急ピッチで西成にある備後組事務所に向かわせた。


今回は、光一郎は素手まるごしだった。しかし、復讐の鬼神と化した光一郎は、事務所がある雑居ビルの前にタクシーを停めさせると、脱兎だっとの如く二階まで駆け上がった。

二階に上がった光一郎は、引き戸をお構い無しに蹴り、ドアは室内に向け、吹き飛んだ。ドアは室内にいた二人に直撃し、残った者達は三田村等を含め、総勢12人となった。

「な…なんじゃい、貴様は!」奥に座っていたリーダーと思われる人物が、椅子から立ち上がった。

「オドレ等、覚悟は出来とるのぉ。ワシの相棒をったヤツ等は全員、ブッコロす」静かな物言いに反比例して、光一郎の身体から発せられる闘気が、その場にいた全員を萎縮させた。

「し…し…死ねやぁ」リーダーの横にいた男が拳銃を撃ち放った。銃弾は光一郎の右肩辺りに当ったが、光一郎は微動だにせず、「うぉりゃー」と咆哮ほうこうを上げ、リーダーの方に向かって行った。二発目の銃弾が放たれると、光一郎はジャンプしてけたかと思うと、そのままデスクに着地すると同時にリーダーの顔面を蹴り上げた。

蹴られたリーダーは、拳銃を持つ男に折り重なる様に倒れ、デスクから飛び降りると、拳銃を持つ手首の上に着地した。拳銃は手を離れ、直ぐ様拳銃を奪うと、今度はガラス製の灰皿を手に取り、リーダーと拳銃の男の鼻目掛け、目一杯に振り降ろした。

ひるんだ残りの10人だったが、二人が拳銃を持っている。

二人の間隔はいており、一度に仕留めるのは無理と判断した光一郎は、50kgはあろうカウンターデスクを持ち上げ、固まった8人がいる方に目掛けて投げ付けた。8人中5人がデスク諸共もろとも、窓ガラスを突き破り落ちて行き、残りの3人も、大きくて重たいデスクの衝撃に、完全に気を失ってしまった。

光一郎は残りの2人を睨み付けると、真っ直ぐに近付いた。拳銃を持つ男は二発、射撃をしたが、手が震えてしまい、一発目は光一郎の頬をかすめ、もう一発は完全に的を外すに留まった。

「オドレ等、もう終わりや」そう静かに言うと、光一郎は二人を殴り倒し、最後に足を両脇に抱えると、窓に向けて次々と投げた。

全てを終わらせビルを降りると、二階から落ちて来たデカいカウンターデスクと7人の男達に騒然となっていた。

「早よ警察や!警察呼べ」

騒ぐ群衆を背に、光一郎はゆっくりとその場を後にした。

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