動揺
光一郎が岡山組に戻ると、真島が玉野に事の顛末を話している所だった。
「なるほどな…如何にも光一郎らしい…」玉野は光一郎の思惑が分かっている様に頷いていた。そこへ、光一郎が現れ、玉野は光一郎を呼び、ソファに座らせた。
「ほんで…女は口を割りそうか?」玉野は珍しく、サングラスを外し、ジャケットの胸ポケットに引っ掛けた。
「何とも言えませんわ。ただ、店を取り込むんは早い内に…今から行ってもエエくらいですやろ。店が岡山組側に付いたら、女の口も軽くなりますやろ?」光一郎はリーゼントの横髪を手櫛で撫でた。
「なるほどな、オイ!河野、根来、行くぞ。後、根来、金庫から百万円や」
玉野は再びサングラスを掛けて立ち上がった。河野 修一は、リーダー格の一人で、根来はその下に属する一番下の舎弟だ。二人共、武闘派と呼ばれる中にあって、どちらかと言えば、頭脳担当の交渉、恐喝を得意としていた。
「若頭?ワシは帰って宜しいか?」光一郎は出て行こうとする玉野の背中に問うた。
「あぁ、女は任せた。拷問なり強姦なり、好きにせぇ」と吐き捨てて事務所を後にした。
光一郎は帰りに、いくつかの買い物をして、帰宅した。部屋に入ると、百合は、縛られたまま、瞳を閉じていた。
光一郎は寝ているのかと思ったが、百合の身体が微妙に左右に揺れ、何やら音が漏れて来る。どうやら、有線放送に合わせてハミングをしている様だった。
「エラいご機嫌やなぁ」光一郎は、買って来た物を百合の近くに置くと、百合のスカートを捲り上げ、下着を脱がし始めた。
「な…何すんだよ!アンタ、やっぱり獣だったのか?強姦なら好きにしろよ」と強がりに似た叫びを上げたが、光一郎は全くお構い無しに、下着を剥ぎ取ると、買って来た物の中から、何か取り出し、それを百合に履かせた。
「何?これ?」百合は想像していた事と違う展開にキョトンとなった。
「紙オムツや。ここで糞尿垂らされたら敵わんからな」
そう言うと、また、買い物袋から何かを取り出し、百合を縛り付けていたロープを解いた。代わりにチェーンを取り出し片方を柱に結び、南京錠を掛け、もう一方を百合の腰に巻き付け、同じ様に南京錠を掛けた。
これで、百合は柱を中心に半径50cmの自由が与えられた。
次にプリンとオレンジジュースを百合の側に置いた。
「何?何なの?アンタ」百合は玉野の言う、煮るなり焼くなりを覚悟していたので、光一郎の、この行動が理解出来なかった。
「言うたやろ、アンタは情報源や。かと言って覚醒剤中毒や。全部話したかて、簡単に開放は出来ん!しばらくはこの生活が続くと思とけ」
そう言うと、別の部屋に行き、クッションと毛布を百合が手の届く所に置いて「ほな、おやすみ」と言って照明を豆球だけにすると、寝室の方に行ってしまった。
「アイツ…何、考えてんだよ」百合は豆球のオレンジ色の世界の中、プリンを食べながら、目尻から流れる物を感じていた。




