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爆弾と呼ばれた男  作者: 岡上 山羊
新天地 東京へ
21/50

キャバレー

今夜も光一郎達は二人一組になってネオンの光がまぶしく光る歌舞伎町を流していた。

コンビは個人の性格をかんがみて、玉野が決めた。光一郎のバディは真島と言う、浦川の下に付く中の一番の若者だった。

歳も光一郎が19、真島が21と近く、真島自身が光一郎を認め、下に見ていなかった事から、最適と判断された。

光一郎はいまだ玉野直轄の部下と言う扱いで、他の若い衆からは、嫉妬する者もいたが、リーダー格の四人全員が光一郎を認め、押さえ付けている事でなんとか均衡きんこうを保っていた。

光一郎自身も、自分は玉野の命令しか聞かない事を明言していた。この事が玉野にとって唯一の危惧きぐされる材料だった。

「なぁ、光一郎。最近、備後組アイツらもワシらの事ビビッて、派手な動き無いのぉ?今日は、この辺にして、キャバレーでも行かへんか?」ジェルで髪の毛をピンピンに逆立てて、額に派手なバンダナを巻いた格好の真島が言った。

「んー、せやな、ワシも喉渇のどかわいて来たし、エエかも知れませんね」リーゼント頭の前にピョンと跳ねさせた毛をいじりながら光一郎が返した。

「バーボンで喉の渇きはうるおわんど」こんな冗談を言いつつ、二人はキャバレー"フェアレディ"に入って行った。

一応は酒を飲む訳だが、もしここで何かのトラブルなどがあって、その対応が出来なかったとなると、後で玉野にどんな仕打ちを受けても文句は言えない。飲みながらも二人は何気に店内に目を配らなければいけない。

「浦川の名前でジャックダニエルが入っとるやろ?それ出してくれ」真島は兄貴分のボトルを出させた。

「初めまして、百合です。お飲み物は水割りで良かったですか?」

キャバレーで働く割に清楚な感じのする女が二人の間に座った。

「アホか?ワシら見て、水割りっちゅう顔、しとるか?ロックに決まっとるやろ、ロックに!」真島は調子に乗った様に女に言った。

「あー、ワシはそのまんま!ストレートでエエ」対照に光一郎が静かに言った。

「じゃあ、冷水チェイサー作りますね」百合がロックアイス用のトングを持つと、光一郎はその手を押さえた。

「いらん!酒だけ入れてくれ」相変わらずの落ち着き払った態度で静止した。

「光一郎!お前、いくら強いからって、それはやり過ぎとちゃうか?」真島は光一郎をたしなめる様に言った。

「真島さん、若いワシがお言葉かも知らんけど、ワシ、このボトル、ラッパ飲みで一気に飲んでも酔いませんで」光一郎の落ち着いた口調は、真島には、ハッタリにも強がりにも思えなかった。

「そ…そうか、そらいらんお世話やったな」言っている真島の顔が引きつっているのが自分でも分かった。

百合が二人の酒を作り、真島が乾杯しようとすると

「スンマセン、ちょっと待ってもらえます?」と光一郎が制した。すると、光一郎はボトルを取り、グラスに指一本分、入った所に波々とした。

「ほな、乾杯」光一郎の行動に少し引いた真島は一口、チビリと飲んだ。と、一方で光一郎はグイッと一気に飲み干し、空になったグラスをゆっくりとコースターの上に置いた。

一同は唖然あぜんとなり、百合が「あの…もう一杯、お作り…」と言った所で、再びボトルを取り、グラスいっぱいに注いだ。

「光一郎!ホンマ大丈夫なんか?」最早、真島は完全に引いていた。

「言いましたやろ!喉渇いてますねん」と言うと、今度は半分ほど飲んだ。「お客さん、お強いんですね」と言った百合の左腕を光一郎はガッと掴み、洋服のそでまくった。

「これ、何やねん、ねーちゃん」百合の内肘うちひじには、紫色の斑点の様な、あざの様なものが見られた。

百合は掴まれた腕を引き離すと「きゃー」と叫び声を上げた。すると、ボーイの一人が飛んで来て「お客様、どうかされましたか?」と光一郎を睨み付けて来た。

光一郎はその場に立ち上がると、ボーイの襟首えりくびを左手で掴み、グイッと持ち上げた。ボーイの足は完全に浮いた状態となり、空中で足をバタバタさせた。

「この店、どないなっとんじゃ?ワレら、店の女を備後組のクソ共に売っとるんか」と叫んだ。

すると、奥からガラの悪い男達が三人現れた。

「お客さん!悪い冗談は止めて下さいよ!ウチで暴れてもらったら…」と言いかけた男に目掛けて、光一郎はボーイをそのまま投げた。

ボーイは男三人と共に倒れ、光一郎はジャックダニエルのボトルをテーブルの角に打ち当てて割ると、電光石火の如く男どもの元に行った。そして一番のリーダーと思われる男の襟首を掴み、割れたボトルを頸動脈けいどうみゃくてがうと

「オンドレ、調子乗っとったらコロすぞ」と静かに言った。

「わ…分かった、スマン、悪気は無かったんだ!一応、オレ達もここの用心棒で雇われてて」と完全におののいてしまった。

「ほうか?ほなら、持っとる覚醒剤シャブ、全部出せや」

男は言われるまま、ポケットから袋に入った白い粉を八袋出した。

「これで全部か?」光一郎は見かけの華奢きゃしゃ身体からだとは裏腹に、常人を超えたパワーと静かながら圧倒的な迫力を持っていた。男は目を見開いて、首を縦に振るのが精一杯だった。

光一郎はテーブル席に戻ると、残りのバーボンを一気に飲み干し、百合の腕を掴むと「真島さん、行きましょか?」と言った。「あ…あぁ、そやな」真島は言いながら"自分はエラい男と組まされたなぁ"と思った。

この物語はフィクションであり、20歳未満の飲酒は禁止されています。物語上、未成年に飲酒させていますが、これは未成年者の飲酒を助長させるものではありません。法律を守り、成年になってから飲酒しましょう。また、周りの大人も未成年者の飲酒を見たら、止める勇気を持ち、決して飲ませる、見逃す、と言った行動はやめましょう。

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