陰謀
「若頭?岡山組のヤツら、こんままにしといてエエんですか?」
備後組では壊滅させられた大阪支部において東京から幹部が呼び寄せられ、話し合いが持たれていた。
「とにかくや!その…何ちゅうた?"鉄砲の玉野"の弟分か養子か何か知らんけど…その若造を何とか出来んのか?」
若頭と呼ばれるその男…磯貝俊英がかけている真っ黒なサングラスの奥の眼光が鋭く光っていた。
「玉野光一郎です!若頭の"タマテツ"は鉄砲玉見たいに一人を確実に仕留めに来る鋭さを持ってます!でも光一郎は、まるで爆弾ですわ!大勢の中に飛び込んで行っても、爆弾落としたみたいに全員、半死半生にされますんでね。ホンマ厄介ですわ」
岡山組の若頭、玉野 哲也は若い駆け出しの頃から一対一の勝負には滅法強かった。極道の世界では一番の猛者とも言われていた。その鉄砲の様な鋭さから付いた渾名が"タマテツ"だった。
「爆弾…"タマテツ"の右腕だけに取り分け"爆弾のタマミツ"っちゅうトコかい?」磯貝は内ポケットから取り出したショートホープを咥えた。横に立っていた舎弟の山本 啓太は慌ててジッポーライターで煙草に火を点けると「爆弾のタマミツですか?ほんまそんなトコですわ」と同意した様に答えた。
「その爆弾にアキレス腱はないんか?」磯貝はショートホープを一旦口から離すと、'フーッ'と天井に向けて煙を吐いた。
「あるっちゃぁ、あります!粋がっとるだけで、大した事ない、彰っちゅうヤツですわ!アイツ拉致るか何かしたら多分、冷静さを欠いて袋のネズミになりよるかも知れませんで?」こう言う山本の額には汗が滲んでいた。
「ヨッシャ!ほなら、直ぐにその彰、言うボウズか…拉致って来んかい」
磯貝は、金庫からトカレフを出して山本に差し出した。
「やるって…そんな小物を殺って、どないしますのん?」少し間抜けなこの山本は、磯貝の言っている意味を履き違えた。
「お前はホンマにアホやのう?今、自分で言うたやろ。拉致や!それ使うて、サッサと拉致って来んかい!」磯貝は近くにあった袖テーブルを蹴飛ばした。
「わ…分かりました」山本はトカレフを懐に忍ばせると、事務所を飛び出して行った。




