手柄
店の何処かから連絡があった訳ではなかったが、玉野が言うには「備後組の若いモンが岡山組の領地を荒らしとるから、ソイツらを締めて来い」と言う事だった。
とにかく光一郎は彰と二人して繁華街を見回った。
光一郎からすれば何でも良かった。早く玉野に彰の事を認めさせなければと言う焦りがあった。彰は二手に分かれようと言ったが、相手が何人組でいるか分からない以上、二手に分かれるのは危険だと諭し、時間はかかるかも知れないが、お互いに左右を別々に見ながら回って行く事にした。
しばらくして「おい!光一郎、アイツら、前に見た事ないか?」と彰は光一郎に右側を見る様に促した。
光一郎が言われるがまま見ると、以前に確かに見た事がある備前組の若い衆を含めた五人組が見えた。
光一郎は"占めた"と思った。敵の面子を見ると、光一郎一人でも倒せそうな連中だったからだ。それが五人組となれば、堂々と光一郎も加勢して二人して倒せば、内訳はどうあれ玉野に彰を認めさせる事が出来る。
「オイ!お前ら!備前組のクソどもやろ?最近、何かここら辺でイキッてくれとるらしいのぉ」
光一郎が開口一番に声をかけると、相手のリーダー格と思われる男が「なんじゃい?このクソガキが!コロされたいんかい?」と返して来た。
案の定、まだ顔が売れていない光一郎の煽り言葉に乗って来た。こうなると、占めたものだ。
光一郎は、一番弱々しい坊主頭の男に「彰!お前はアイツ行け」と言うと、自分は後の四人を相手にした。
先ず、相手の一人がパンチを繰り出して来た所をダウンヘッドで躱し、その腕を掴んで後ろ手に回した。
二人目がかかって来た所に掴んでいた男の背中を二人目の男、目掛けて蹴り飛ばし、同士討ちさせた。
そして倒れた二人に目掛けて、近くに置いてあった椅子を叩き付けた。
それを見た残りの二人が前後から襲い掛かって来た所を、持っていた椅子を持ったまま、自分を軸に回転して椅子を振り回した。椅子が一人の顔面に当たり、一人はスウェーして避けた。それを見た光一郎は避けた男の腹に蹴りを入れた。
男が前屈みになった所に後頭部に目掛けて椅子を振り下ろした。
こうして、あっと言う間に四人を片付けた。
彰の方を見ると、彰は特訓の成果かどうかは分からないが、坊主頭の男を倒していた。が、彰の左頬に痣が出来ていて、頭から少しの血が流れていた。
「彰!よう頑張ったのぉ」光一郎は彰を労った。
しかし彰は浮かない顔をして「光一郎!ワシ、この世界でやっていけるんやろか?」と寂しそうな顔で答えた。
それを見た光一郎は、彰の肩を掴み寄せると「エエか!彰、これはお前一人で四人やった事にしとけ!ワシは手助けでちょっと一人だけ加勢しただけや。エエな」と囁いた。
「イヤ…ワシは…」言い訳しようとした彰の言葉を遮って「ワシの言う通りにせぇ!ケンカなんかいつかは馴れる。それよりかは、今は若頭にお前を認めさすんが先決や」
光一郎はこう言うと、倒れた五人組の男達の証拠写真を撮ると「ほな、行くぞ」と言い、繁華街を後にした。




