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また君に会えるなら
「楠木蓮に会いたいか?」
禍々(まがまが)しいオーラを放つ歪な球体の中からそんな声が確かに聞こえた。
目の前で起きている超常的な現象など一切気にならない程、少女にとってその言葉の持つ衝撃は大きかった。
「蓮? ……今、楠木蓮って言ったの?」
「ああ、そうだ」
荘厳な声音にぶつけるべき質問が次々に湧き上がって来たが、その中で少女が咄嗟に口にしたのは、偶然にも核心に近いものだった。
「あなたは、一体、なんなの……?」
「……眼前の闇へ入れ。その先に全ての答えはある」
答えになっていない返答。しかし、その言葉を聞き少女は決意を決めた。
彼にもう一度会うことが出来るなら。何を迷うことがあるのだろう。
「……待っててね」
呟くや否や、少女は勢い良く深い闇の中へ飛び込んだ。