第六十一話 一級建築士への道は果てしなく遠く、高い頂に続く道
「大体がなんでキミ、そんなユキコと仲良さそうなんだい? まさか、二人で会ってましたとか言わないよね? 流石のわたしでも、こればっかりは容赦とかありえないからね」
「ないないないないないないです! ないです! Limeだけです!」
「それにしてはやり取りがスムーズ過ぎる……。個別に会ってないなら、ユキコとはそんなに話もしたことも無いはずだよ? そうだよね?」
俺だけじゃ信用ならないとでも思ったのか、今度はユキコさんにも確認を取る。
「ないね。何度か短い電話ぐらいはしたことあるけどさ。こんなやり取りしたのは今日が初めてかな。基本文字ベースで抑えてたし」
「抑えてた? つまりユキコは、もっとやるつもりがあったってことなのかい?」
今日の先輩何だかとってもキレてます。二重の意味で。言葉の端も逃しません。
「いやいやいやそうなるだろうから、不用意な接触はしなかったってことだよ!」
ユキコさん、慌てたように両手を胸の前で突き出してふるふるしてる。
「当たり前だよ。人の彼氏をなんだと思ってんだい。こっそり連絡しあってただけでも、相当許しがたい話だよ?」
ああ先輩。その視線、ちっとも両手に向けられてないですね。
でも先輩も、同じぐらいふるふるするから大丈夫!
「私もまさかサヤカがここまで激しく反応するとは思わなかったんだよ。ちょっとサヤカ、なんか今日は余裕なさすぎなんじゃないのかな?」
あっ。ユキコさん、先輩の視線に気づいてそのまま胸を抑えてしまう。
ウッ! マユさんよ。その唐突な肘鉄はなんですか……。
み、見てないですよ。濡れ衣です。ホラ俺はこんなにも平常心。
「そりゃあねぇ。一昨日までラブラブだったと思ってたら、お隣の幼なじみは出てくるわ、親友だと思ってた女は裏で彼氏とこっそり連絡取り合ってるわ……。これで一体わたしのどこに余裕が生まれるって言うのかな。そんなもの、わたしの方が教えて欲しいぐらいだよ?」
そう言って深く、深く溜息をつく先輩。
お騒がせして、大変申し訳なく思っております……。
「そう言われれば確かに……。何かに導かれるようにして全てが集約してるよね」
ホントなんなんだこの週末は。因果律でもバグってんのか? シュウ博士とその機体には即刻帰って頂きなさい!
「ね。だから、今のわたしは結構余裕とかないよ。言うことがあるなら、早いうちの方がいいからね。わたしオススメしちゃいます」
「じゃ、じゃあ、一ついいですかね?」
俺は先輩のオススメに従い、さっきからずっと思っていたことを聞いてみる。
「いいですとも。何なのかな? まさかまた別の女が出てくるとか、ないよね?」
「ありません! まったくもう。俺を一体何だと思ってるんですか」
マユはともかく、ユキコさんは先輩側の人間でしょうがよ!
「えー、手が早い? 一級フラグ建築士? 鈍感王?」
ハハッ。ワロス。俺がモテる? ありえない。とても面白い冗談だ。
まぁどれ一つとして俺に当てはまらないってのも、悲しいものがあるけどな。
「なんかすげーこと言われてますけど、最後のは俺ちゃんと先輩に応えてますよ」
受け止めた愛には、精一杯返していこうと思います! イチャラブ大好き!
「わたしにしか応えてないから、今こうなってるんじゃないのかな?」
「? 複数に応えてたら、それこそ浮気や二股以上って奴なんじゃ?」
そもそも俺にハートくれるのなんて、今のところ先輩しか居ないわけですし。
そもそも成立しない話なのであった。残念……ではもうないな!
「別に、そのまま受け入れるだけが答えじゃないよ。まぁ今はそれはいいとして、キミの言いたいことってそれで結局なんなのさ?」
そうだった。結局聞きたいことまだ聞いてない。
「えーとですね、なんか、さっきからずっと思ってたんですけど……」
そう言いかけて、俺は先輩とユキコさんを交互に眺める。
「なんだい。ハッキリしないね。そんなに言いづらいことなのかい?」
先輩がやや焦れたのか顎を突き出して、んって話の先を促してくる。
「ええまぁ……。その、先輩とユキコさんって、なんか喋り口調と雰囲気が似てる気がするんです。だからかなんなのかわからないですけれど、さっきみたいにやりあってると途中からなんだか先輩とやりあってるような感じがして……」
結果、ああやってはっちゃけちゃうわけですよ。
それが妙に仲がいいと思われてる原因じゃないかなーって、俺的には思ったりするわけです。
「あー。それ言っちゃう? いや気のせいだって。それユウ君の気のせいだから」
あーうん。ユキコさんのその失敗したーみたいな表情と、微妙に引きつって固まった先輩の様子を見て俺の気のせいって線は今消えた。はい消えたー。
「……もしかして、これって聞かないほうが良かったって奴ですか?」
「まぁ、出来ればね」
何だか固まったままの先輩を横目に俺はユキコさんとひそひそ話で確認し合う。
「よし、わかった。忘れます。先輩とユキコさんは似ていない。先輩の方がもっと可愛い。ついでに綺麗。でもおっぱいはユキコさんの勝ち……かな……」
しまった。最後に思わず本音が漏れた。いや違うんです。そうじゃない。
俺は別にサイズ至上主義者じゃないんです! ホントです!
「君、今大分失礼なこと言ってるからね?」
ユキコさん超ひくひくしてるけど、何だかどことなく嬉しそう?
いや他の二つは圧倒的に先輩の勝ちですからね?
えこひいき? そうですね。それがどうかしましたか?
「可愛い……。綺麗……。おっぱいってキミねぇ!」
あ、先輩途中までは呆然としてたのに最後で見事に復活だ。
「いやいやいや。先輩ぐらいあれば、俺は十分満足ですからね。不満に思ったこととか、今まで一度もないですからね!」
「当たり前だよ! そんなこと言い出したらわたし、捻り潰す自信あるからね!」
ひぃっ!? キュンっとなったよ! まったく洒落になってねぇ!




