「永遠」「行方」「絵画」の単語から連想ゲームで短編小説
※ちょっと世界線の違う現代だと思ってください
小さな窓から差し込む光が明るく照らす部屋の中で、筆をすべらせる音だけが響く。
一人の男が、そこで見たすべてを小さな世界に落とし込む。
小さな世界は永久を生き、人をつなぎ、新たな物語を創り出していく。
男はそんな世界を生涯描き通づける【開闢師】として生きていく。
これは、出会い、別れ、そして様々な記憶を空白の「世界」に写していく、そんな物語。
男は小高い丘の上で黙々と筆を動かす。
聞こえてくる音は筆を動かす音と鳥のさえずりだけ。
その場所は誰の邪魔も入らない場所。
白紙だったはずの世界には新しく、美しい世界が作られていく。
見るものすべてを魅了するようなその洗練された運びを止めたのは一人の少女の声だった。
少女は男を師と呼び、世界の描き方を教えてほしいと男の旅についてきている。
どうやら少女は食事の用意ができたことを知らせに来たらしい。
男は軽く返事をした後、重い腰を上げるようにゆっくりと立ち上がると少女のほうへと向かっていく。
作りかけの世界は男の背中を何も言わずに見つめている。
少女は男がおいしそうに食べている様子を眺めて微笑んでいる。
男は食事が終わると再び小さな世界のほうへと向かっていく。
その後を追いかけるように少女も歩き出す。
小さな世界と年季の入った筆は男が来たことを喜んでいるように見えた。
おもむろに筆を持ち上げると小さな世界に降ろしていく。
少女は男が筆を運ぶ様子をじっと見つめている。
男の世界にはその地で男が感じた出来事が乗せられる。
記憶を写し、その地で経験した出来事を綴っていく。
少し時間がたったころ、少女は男にある質問をする。
それはこの仕事、開闢師の始まりについてだった。
男はおもむろに口を開き語りだす。
開闢師の始まりは江戸時代中頃、一人の画家が自分の書いた風景画に記憶が宿っていることにきずく。
その風景画は見るものにそれを描いた時の記憶を見せることで一躍有名になった。
そうして生まれたのが開闢師だという。
最初の開闢師の家系が本家となり、そこからさらに分家ができていったのだという。
そして男は本家の血筋だ。
だが実際は記憶を乗せられるのは本家だけで、
分家は結局今の今までその技術を会得していないらしい。
今は両家の現後継ぎが世界中で旅をしながら風景画を描いている。
そしてすべての開闢師は人生で最後の世界を作るとき、
小さなアトリエを建ててそこで最後の世界を作る。
その小屋に残された世界は開闢師が生きた証として永遠にアトリエの中に残される、
ということになっている。
男の話を聞き終わると少女は思ったよりも歴史が長いんだな,と感心そうにしている。
そうして話し込んでいるうちに小さな世界の完成は近づいてゆく。
物語が完成した時に初めて記憶がつながる。
男はゆっくりと筆を置くと
「次はどこへ行こうか」
男は少女に問いかける
少女は優しく微笑む
「そうですねぇ…あっそうだ!私ずっと行ってみたかった場所があるんです!」
「じゃあ次はそこに行こうか。」
旅にで出る準備が整う
少女の行きたい方向へと足を向ける
男の足取りは少女に出会う前よりも少しだけ、
ほんの少しだけ
軽くなっているように見えた
初投稿です。
最初は「こんなんで話が書けるのか,,,,?」と思っていましたがいいのができてよかったです。






