表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

航の就活

「絵里香さん、いつからそこに?」


「ほんの二時間ほどです。家の野生児がお邪魔してると思いまして。何処かにお出掛けでしたの?」


 あたしは、翼さんの車を降りるとエリーに黙ってここへ来たことを謝った。

 そんなことでエリーは怒らないことを知っているからだ。


「で? 何処に行ってたのかしら?」


 これは、部が悪い、三人で帰ってきたところを見られてしまったのだ。


「あのね、翼さんの家の近所に桜の名所があるんだって。名前が桜トンネル、かっこいいでしょ?そこに連れていってもらってたの」


「今は、夏よ。麗華」


 うっ、桜の話題は無理か……でも、私の口から翼さんの彼女のことを言うのは違うと思うし。


「僕の彼女の命日だったんです。だから、豊川に帰ってました。航も同級生のよしみで面識があるもので。線香をあげに来たんです。麗華ちゃんは、おまけですよ」


 にこやかに、答える翼さん。


「だからって、私を置いて行くの? 麗華」


「うぅ……」


 あたしは、言葉に詰まる。


「慕われてるねぇ? 航」


 翼さんが、あたしたちに声をかけて、ボトルシップの店の鍵を開けてが、航に言った。


「勘弁してくれよ~~ 俺は、就活のことでいっぱいなんだ~」


「それですわ。航さん、時期がズレてません? どこにも内定をもらえなかったのですか?」


 エリーの強い口調に、航の中のか弱いお嬢様の第一印象が崩れていったらしい。航は、開いた口が塞がらなかった。やがて諦めた口調で告白した。


「三つもらったんだが……どうも、ブラックだと噂があるところと……社長の横領が発覚して経営困難になって、取り消しになったのと、これは、滑り止めに受けたんで、行く気が無いと言うか……」


「経済学科を出てるそうね。リゾート開発に興味はあるかしら? 私でしたら、兄にあなたのことを話して、人事に話をつけてくれますわ」


「三条グループに、入りたいなんて言ってないぞ!!」


 航は、エリーとあたしを睨む。


 エリーは、クスクスと笑って言った。


「社長の妹の私がいうのもなんですが、わが社は、福利厚生には定評がありますわ。それに私がするのは、兄に話をすることだけ。来月の一日までに、エントリーシートを出して下さい。特別に試験をするそうよ。問題が無かったら、面接をするそうよ。あとはあなた次第だわ」


 今日は、七月二十五日。あと、一週間も無かった。

 航は、あたしたち、お嬢様たちの遊びに乗せられたと思いながらも、その日から就活の勉強を始めた。


 カウンターでエントリーシートを書いていると、エリーはいつの間にか、カウンターの中に入って、家からリンゴを多量に持ち込み、器用に皮を剝き、アップルティーを作っていた。残った実で、アップルパイを焼くという。

 その手際の良さに航も翼なんも驚いていた。

 

「エリーは、器用なんだ」


 エリーのことを褒められて、あたしもとても嬉しくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ