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私の紹介

春休みが明けて中学二年生になった私は、2‐1の教室へと足を踏み入れる。

「久しぶり莉緒。また一緒なクラスだね。春休みどうだった?」

「真紀ちゃん久しぶり。んー私は正直何もしてないかな。ずっとごろごろしてた。」

「そんな生活してちゃだめだよ。ちゃんと体を動かさないと。」

「へへっ。やっぱそうだよね。」


一年生の頃とは全く変わらない元気さで話しかけてくるのは、保育園からの知り合いの寺門真紀。

胸元まで伸ばしている綺麗な茶髪のロングが特徴的で、一年生の頃から私なんかよりが友達が多くいて、学校では知らない人はいないというくらいの有名な女の子である。


「ねぇ、莉緒知ってる?今日転校生が来るんだって。」 

「そうなんだ。ていうか、なんでそんなこと知ってるの?」

「私たちと同じ学年色の靴を履いた知らない女の子が職員室に行ってるのを見たって、教えてくれたの。」 

「そうなの。」 

「あれ?転校生が来るっていうのに、莉緒は盛り上がらないね。」

「まあ、正直興味はないかな。新しく友達を作ろうなんて今更思わないから。」

「げっ、莉緒って意外と辛辣?」


私には真紀のように友達を作りたいという願望はない。

別に人が嫌いだから友達を作らないわけでもなく、ただ友達という物に価値を感じなく、小学生の頃から、いや保育園の頃から本能的にそうだったと思う。


真紀とこうやって話しているのは、たまたま保育園の頃から一緒で、たまたまクラスが同じだからっていうだけ。

他人から話しかけられたら普通に受け答えして、仲良くはしない。


真紀もその一人にすぎないのだ。


春休み中の真紀の思い出を一通り聞いた後、私は黒板に書かれてある座席表を見て、窓側にある机にカバンを置いた。

周囲を見渡せば真紀の姿はもうこの教室にはなく、代わりに有象無象らが教室内を闊歩するようになっていた。


真紀はきっと他のクラスにでも行っているのだろうと思う。

わざわざ友達に会いに別のクラスのところに行くなんて私の頭の中では考えも及ばない。


なんで真紀はあんなにも友達のことを好きになるのだろうか。

いや、なんで私はこんなにも人のことを好きになれないのだろうか。


いざ、朝早くからの学校で自問自答してみようとするが、なにか気持ち悪くなり考えるのをやめてしまう。


はっ!

また、こんなことを考え始めちゃってる。


中一の時から、突然衝撃を与えるようにして私の頭に現れるこのマインド。

なんで考えようとするのか、こんなことを考えて何を求めようとしているのか、自分でもさっぱり分からない。


でも、この気分の悪さだけが今、自分に分かることなのだ。


_______________________________________________


「キーンコーンカーンコーン」

約2週間ぶりに聞くチャイムの音。

この音が聞こえては、すぐに先生が朝礼を始めるように日直の生徒に指示を出すのだが、今日は珍しく遅かった。


私は真面目に黒板の方を向いてじっと待つわけでもなく、窓側の机という特権を生かして、空に浮かぶ雲をずっと眺めていた。


あの雲は少し自動車に似ているな。

あ、あの雲はドーナツに似ているな。


なーんて、中学二年生になってもそんな子供みたいなことを想像して、暇な時間をつぶす。

別に楽しいわけではないのに勝手に時間はつぶれてしまい、あっという間に授業の終わりのチャイムを耳に挟んでは、次の授業の時間も同じことを繰り返す。


どうせ今年もこんな退屈な日々を過ごすことになるのだろう。

まあ、別に私はそれでいいんだけど、、、、。


チャイムが教室に鳴り響いてから、約5分ほどが経過したと思う。

まだ先生は来ていないようで、相変わらず教室内はガヤガヤと動物園のようにうるさい。


そんな中、私は黙々と妄想を膨らませているわけであるが、今日は運が悪く快晴よりの天気のせいか時間つぶしのおもちゃは少なかった。

朝礼からこんな退屈になってしまうのなら、もっとペースを考えて雲の妄想を広げておけばよかった。



うーん、何かいいものはないか。簡単に時間がつぶせる物。


窓の向こうにある何か心が動かされるようなものを探しに、私は目をギョロギョロと動かしていく。

この時、首はむやみに動かしてはいけない。


頬杖をついて、さりげなく外の景色を楽しむような人。

なるべくそんな風に思われたいためだ。


目線を雲の部分から徐々に下げていき、そして、できる限り視野を広くして周囲の風景を見渡し始めていく。


一年生の頃に見た風景とは似ていると言えば似ているのだが、久しぶりのこの風景を目にしたおかげか何か新鮮味を感じるような気がした。

なぜか一度入ったことのあるビルやうっすら遠くに見える白色を被った山など、普段は目にも止めないようなものでもそれとなく面白く感じる。


でも、その新鮮味や面白みというものは10秒も持たないものであった。


謎の高揚感が心の中で生き生きと生きていたが、すぐにぽっくりと死んでしまう。


いろんな景色や背景が目に映るがそれは全て無の背景であり、面白いもの探しをしている私は、横へ横へと目線を動かしては、目線を下にさせる。


そんなことをひたすら繰り返す。ただ、繰り返す。


そして、とうとう私の在籍している校門といわれるものが見えたのである。


何も変わらない、何も面白くない。

そう、心に呟いてしまったが、


今は前言撤回させていただこう。









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