arc-en-ciel(アルコンスィエル)#9
arc-en-ciel#9
―HIKARU―
姉ちゃんや珠莉さん、なにより穂稀に助けてもらって、無事必須単位の現場実習を終えた。
俺は3ヶ月前から、心療内科の担当医の所へ週1で通ってる…というのも、3ヶ月前・ちょうど穂稀と付き合った直後の発声リハビリ訓練の時、俺の担当医は「目を閉じて、頭に1番大切な人を思い浮かべて、大切な人の声を思い出して、深呼吸して、お腹に力を入れて、思い浮かべた大切な人の名前を呼んでごらん」って言うんやけど、それまでは姉ちゃんにしてたんやけど、俺の頭に真っ先に浮かんだのが穂稀で、穂稀の笑顔を思い浮かべて、深呼吸して、お腹に力を入れたら「ほ…」って1文字だけ小さく出せた。
俺はびっくりして、担当医は、「心から名前を呼びたい大切な人ができたんだね」と喜んでくれて、俺は穂稀という素晴らしい彼女ができた事を担当医に伝えたら、声が戻る日が近いかもと、月1の受診を週1にして発声リハビリ訓練を受けていて、1ヶ月前、「ほまれ」って言えた。
そして、発声が出来てきていて、声を出す感覚も戻せてきた。今日、絵本を音読出来たら、一旦通院終了となる。本当は言いたいけど、まだ、穂稀にも姉ちゃんにも、誰にも教えてなくて、無事、通院終了が決まったら、まず明日、穂稀は午前中だけバイトやから、バイト終わりに穂稀の好きなアニメキャラのイベントのクリスマスツリー前で待ち合わせしてて、そこで穂稀に大切な言葉を、いつもの手の声じゃなくて、俺自身の声で届けたいと思ってる。
担当医が用意してくれた〝笑顔の魔法〟という絵本の音読を、姉ちゃんや、珠莉さん、七瀬さん、何より大切な穂稀の笑顔を思い浮かべてスムーズに終わらせた俺は、俺の声で担当医にお礼を言った。
担当医は涙を流して喜んでくれた。
通院終了となる書類を、キーパーソンの姉ちゃんに書いてもらわないといけなくて、来週、姉ちゃんと来ることになった。その時に穂稀にも会ってみたいと担当医が言うので、穂稀も連れてくる事を約束した。
さ、明日、大切な人に感謝と愛を伝える準備をしよう。
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翌日…12月23日
―HOMARE―
今日は、朝8時から、モーニングの3時間だけバイトに入って、陽と待ち合わせして大好きなキャラクターのプリンちゃんのクリスマスイベントに行って陽と一緒に、七瀬さんと海美さんと珠莉さんにクリスマスプレゼントを買う予定。
絶対バイト頑張れる!
朝7時、最近夜は、陽の部屋で眠っていて、私はよく眠る陽のほっぺにキスを落として、「行ってきます。またあとでね」と呟いて陽の腕をそーっと抜け出した。
バイト後に陽とお出かけ、それもクリスマスやから、先週買った新しいワンピースに着替えてバイトへ…
陽が選んでくれた真っ白なニットワンピース。上着は黒のダウンにした。
バイト後が楽しみ過ぎて3時間が一瞬で終わった感じがするw
更衣室でメイク直しして、髪の毛を結び直して待ち合わせ場所のクリスマスツリー前へ
陽はまだ来てなくて、ツリーのプリンちゃんを眺めていた。
「ほまれ…早田穂稀さん」
私?知ってる人居たのかなと思ってキョロキョロしてたら、背中から抱きしめられた…
「おまたせ穂稀」
この優しい大好きなあったかい腕…
「陽?!声…」
「穂稀が俺にたくさん幸せをくれたから、戻ってきたよ」
「素敵な声…ふぅ……ぅ……」
涙が止まらない…
「穂稀泣きすぎw」
「だって…嬉しいやん…」
「俺、穂稀と付き合って、心療内科で大切な人を思い浮かべて、発声リハビリ訓練するんやけど、大好きな穂稀の笑顔を思い浮かべたら、声が出るようになって、昨日一旦通院終了まで辿り着いた。本当に穂稀のおかげで声を取り戻せたよ。穂稀、本当にありがとう。」
私は身体の向きを変えて陽に正面から抱きついた。
「陽…もっと名前呼んで?」
「穂稀…ほまれ……愛してる」
「うん…うん……陽…私も愛してるよ」
そして陽は私の手をひいて天使のプリンちゃんの居る教会に入り…
「早田穂稀さん、まだ1年あるけど、大学卒業してからも、永遠に俺の隣に居てくれませんか?」
「私でいいの?」
「穂稀がいいの。俺が愛してるのは穂稀だけ」
私は陽に抱きついた。
「陽が嫌がってもずっと離さないよ?」
「じゃあ、返事は?」
「永遠によろしくお願いします」
陽は私の左手の薬指にシルバーのリングをつけてくれた。
「穂稀、俺にもつけて」
陽から受け取ったおそろいのシルバーリングを陽の左手の薬指につけて、プリンちゃんの教会で誓いのキスをした。
私達は手を繋いで、イベントをまわり、海美さん、珠莉さん、七瀬さんへのクリスマスプレゼントを買いに行ってハウスに戻った。
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―HIKARU―
すっかり暗くなって穂稀とハウスに戻ると、姉ちゃんと珠莉さん、七瀬さんが庭でクリスマスツリーを眺めていた。
そっと近ずいて後ろから声をかける
「姉ちゃん、珠莉さん、七瀬さん」
「「「え…?」」」
「陽…?!?!?!」
振り向いた姉ちゃんの目には涙が…
「姉ちゃんが俺をちゃんと育ててくれて、珠莉さんもお姉ちゃんみたいで、七瀬さんもお母さんみたいに温かい空間と毎日美味しい料理を作ってくれて、穂稀にも出会えて、毎日毎日、たくさんの幸せを知ったおかげで声が戻ってきたよ」
姉ちゃんがすごく温かい手で頭を撫でてくれた。
「陽。おかえり……そして、珠莉、美華ちゃん、穂稀ちゃん、本当にありがとう」
「あと、さっきな、まだ大学は1年あるけど、穂稀にプロポーズしてきた」
「本当に穂稀ちゃん、海美の妹になるんだねぇ。こんな可愛い妹、羨ましいなぁ」
「陽が成長してる…って事は珠莉の妹でもあるやろ?」
「えぇ???」
「法律的にはまだ認められてないけど、珠莉は私とずっと一緒に居てくれないの?」
「海美…離れないから、絶対に離さないでね」
「当たり前やん」
「素敵なクリスマスね。お母さんは嬉しいよ。そんなお母さんから、明日のクリスマス会でみんなにプレゼントがあるから楽しみにしててねー。さ、私お風呂入ってくるわー」
「珠莉、コンビニ行かへん?」
「行くー」
七瀬さんがお風呂に行って、姉ちゃんと珠莉さんがコンビニに行って、俺は少し寒そうな穂稀を背中から抱きしめた。
「穂稀、改めてこれからもよろしく。」
「こちらこそですよー」
「穂稀が嫌がっても絶対に離れないから」
「こんなに好きで仕方ないのに、もう離れられへんわー」
こんなに素敵なクリスマス、生まれて初めてや。
穂稀がそばに居てくれて、こんな良い家族に恵まれて、俺は本当に幸せです。
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―JYURI―
海美と、ハウスの近くのコンビニに歩いて行く。
「海美…さっきの嬉しかったよぉ」
「一生離れたくないからなぁ」
「ふふ…珠莉も……」
「世間や法律は認めてくれなくても、私が愛してるのは過去も今も未来もずっと、来世までもずっとずっと珠莉だけやから」
「海美、ありがとう」
「あ…雪や」
「めっちゃ綺麗やねぇ」
「ホワイトクリスマスやな」
コンビニでお酒を買ってハウスに戻り、お風呂上がりに海美と乾杯する事にした。
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-HOMARE-
素敵過ぎる一日を振り返りながら窓の外にチラつく雪を眺めてる。今は陽がお風呂に入って居て、窓の外の明かりに指輪をかざして、初めて聴けた陽の声を思い出して幸せを噛み締める。
「幸せ過ぎて、バチが当たりそう……」
「当たらへんよ……」
戻ってきた陽に背中から抱きしめられた。
「俺の方が幸せ過ぎてバチが当たりそうなんやけど」
「陽……もっともっと名前を呼んで?」
「穂稀の名前は何度でも何億回でも呼びたい」
「ひーかーる」
「穂稀……愛しすぎて、歯止めが効くかは解らないけど、正面から抱きしめたい」
「歯止め効かなくてもいいよ///」
私は身体の向きを変えて陽に抱きつき、唇を重ねたら陽に唇を重ねたままお姫様抱っこみたいに抱えられた。
「私、重いよ……」
「重くないね……穂稀、愛しすぎてどうしようも無い……」
「私も愛してるよ」
外には白い天使の舞う素敵なクリスマス。
こんな幸せなクリスマス。生まれて初めてやな……
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12月24日
―MIKA―
私は7ヶ月前からちょくちょく通う区役所へ
亡くなった両親の夢で今は私の夢を叶える為。
私は、arc-en-cielと同じ大きさの家をもう1つ両親から相続している。
私の両親は亡くなる前、ホステル経営をしていたけど、地域のお世話になってる高齢者の方が入れるケアハウスを作ろうとしていた。
しかし、区役所に相談しはじめてすぐに2人共病に倒れてしまった。
両親が亡くなって、凄く寂しくて、家族は欲しいけど、1度失敗した結婚はもうする気になれなくて、シェアハウスとして若者に貸す事を思いついたけど、仲介業者を付けずに、紹介や自分で知り合った子達を集めようと考えて居たら、たまたま呑みに行った居酒屋で海美と珠莉に出会った。幼い異父の子を抱える海美、両親と縁を切った珠莉、ストレスから声を忘れた陽。私は3人と家族になりたくて、arc-en-cielに誘った。
海美は介護士でケアマネージャーも持ってる、珠莉は看護師、陽と更に家族に加わってくれた穂稀ちゃんも介護士の卵…これはあと、栄養士や、連携医師を見つけて、いくつか資格をとって、区役所の申請が通れば夢が叶うって気づいて、思い立ったら即行動型の私はサクサク進め、たまたまご夫婦で医師と栄養士という方々に出会い、着いて頂けることになり、椿ホームに伺い、海美と珠莉をこちらで引き取りたいとお願いし、書類を揃えて区役所に提出。
申請が通ったという連絡を頂いたので、今日は許可証を頂きにきた。
分厚い封筒を区役所で受け取り、自然とリズミカルに歩き出す。
今日はクリスマスイヴ、帰って家族の為にたくさんの愛を込めてクリスマスディナーを作ろう。
#10へつづく