arc-en-ciel(アルコンスィエル)#10
arc-en-ciel#10
12月24日
―HIROMI―
今日は珠莉は早番で私は日勤、2人共主任をやってるからシフトは9.9割一緒なんやけど、今日は新人ナースちゃんに珠莉が早番を教える日で、めちゃくちゃ久しぶりに違う勤務になった。。家でも一緒やけど、早番は3時間も日勤より早く上がってしまうから寂しい。。。
でも今日は日勤終わりにちょっと寄り道する予定。
陽と穂稀ちゃんの幸せに完全に乗っかった形で珠莉にプロポーズしちゃったから、クリスマスプレゼントと別に指輪を送るつもり。昼休憩にネットで同性カップルのペアリングを扱うお店というのを見つけて買いに向かってる。
お店に行くと、凄く綺麗で可愛いのが並んでて、裏に無料でその場でイニシャルを彫って貰えるらしく、シンプルなペアのローズゴールドのリングで裏に〝H_J〟と彫ってもらった。
お店を出て、違うお店で皆へクリスマスプレゼントを買った。
色違いのストラップ。
なんか、柄にないかもやけど、みんなで色違いとか嬉しいなーって。
さ、温かい家族と最愛の人が待つ家に帰ろう。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
―JYURI―
今日は3時間も海美より早く仕事上がって、久しぶりにバスで帰る。いつも海美の車で出退勤してるから新鮮なんやけどぉ、クリスマスプレゼントを買いに歩いてる今も、ずっと繋いでいたい大好きな手が隣になくて、すっごい寂しい。。
買うものは決まってるから早く買って帰って誰かと話そう。。
ハウスに帰って、荷物を置いて着替えてリビングに行くと、ソファーに穂稀ちゃん…近づくと、穂稀ちゃんの膝に陽君が眠ってた。
「珠莉さんおかえりなさい」
「ただいまぁ。陽君よく眠ってるね」
「喋ってたら寝ちゃいましたw」
「子供みたいw」
「ですよねw」
「ねえ、穂稀ちゃん、私は、穂稀ちゃんと陽君、美華ちゃん、海美も家族やと思ってるんやけどぉ」
「はい。私にとっても皆さんはかけがえの無い家族ですよ?」
「いつまで敬語なの??珠莉さんってさん付けなの?」
「なんだか外すタイミングが⋯」
「はい、言ってみて?じゅり」
「んー⋯珠莉ねぇはダメですか?勝手にお姉ちゃんみたいに思ってるので」
「いいよー。そして敬語辞めてみようか?」
「じゃあ、珠莉ねぇも穂稀ちゃんやなくて、穂稀って呼んでほしいなーって……」
「もう。穂稀可愛すぎるよぉ」
「可愛くはないけど、珠莉ねぇ、これからもよろしく……ね?」
「はぁ可愛い可愛い可愛い。海美はなんて呼ぶぅ?」
「七瀬さんがロミジュリって言ってたから、ろみねぇ⋯とか?」
「いいねぇ」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
―HIROMI―
ハウスに帰ると、珠莉は
穂稀ちゃんとリビングのソファーで話していた。
ひそひそ笑い合う2人は本当に姉妹みたいで可愛い。
「ただいま」
近寄ると、穂稀ちゃんの膝を枕に陽が眠っていた。
そんな安心出来る存在が陽にあるという事に嬉しくなる。
「おかえりぃ」「おかえりなさい」
「海美、穂稀が珠莉ねぇって呼んでくれて、敬語も辞めてもらったのぉ」
「いいねぇ、私にも敬語辞めてみようか」
「ろみねぇ⋯よろしくね?」
「穂稀、ありがとう。あ、ちょっと珠莉かりていい?」
私は珠莉を部屋に呼んだ。
私が上着とカバンを置いてる間に、私のデスクの椅子に座った珠莉を、ペアリングを持って後ろから抱きしめる。
「3時間って長かったねぇ」
私は3時間の寂しさを埋めるように唇を重ねて、同時に、珠莉の左手の薬指に愛の証を送った。
「ん…ん?これ…」
「改めて、珠莉、ずっと一緒にいてください」
「綺麗……海美、改めてよろしくお願いします。」
そう言いながらペアリングの片方を私の左手薬指につけてくれた。
リビングに降りると、もう陽も起きていて、美華ちゃんお手製のクリスマスディナーが並んでいた。
みんなでワイワイ話して、美味しい料理とこの温かい空間に酔いそうになる。
「穂稀ちゃんのロミジュリの呼び方が急に変わってるやない」
「ろみねぇと珠莉ねぇに敬語無しでって事になりまして、、ろみねぇと珠莉ねぇも穂稀って呼んで貰うことに……」
「えーいいなぁ。私もー……美華でいいし、敬語も使わんでいいんやで?」
「美華さん…美華さんも穂稀って呼んでね?」
「あぁ可愛い!」
「わかるぅ。珠莉も穂稀に、珠莉ねぇって呼ばれて、可愛いって抱きしめたくなったもん」
「えーっと、俺が代わりに抱きしめときます」
「陽///」
「ヤキモチか!!!wうちの弟、実は嫉妬深いみたいw」
「穂稀限定やけどね」
もぅ、陽、デレデレやんw
夕飯が終わって、19時30分…プレゼント交換が始まった。
皆が笑顔で居ると、美華ちゃんがケーキをカットしてくれて、全員にプレゼントがあるという。。。なんやろ?
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
―MIKA―
可愛らしいクリスマスケーキをカットして、紅茶と一緒に頂きながら、私から皆に話し出す。
「皆、ハウスのリフォームをするから、来週までに斜向かいのハウスと同じ大きさの私のもう1つの家に移ってちょうだい」
「「「「えっ????」」」」
「あっちは1階にLDKと、大浴場と1部屋、2階は大きな2部屋なのよ。各部屋もちろん鍵付き、防音、各部屋にトイレとシャワーがあるから、2階にロミジュリの部屋と陽と穂稀の部屋ができる感じになるわね」
「ちょっと待って美華ちゃん、それはいいけど何で急にリフォームなん?」
「私の両親の夢がね、今は私自身の夢なんやけど、それを叶える準備がととのったのよ。私の両親はお世話になってる地域の高齢者が入れる施設を作りたかったんやけど、区役所に相談し始めてすぐに2人共次々に病に倒れてしまって結局2人共そのまま亡くなって、私はすっごい寂しくて、家族が欲しかったけど、1度結婚に失敗してるから、パートナーは考えてなくて、図書館で仕事して、たくさんの人とお話ししてて、シェアハウスを思いついたの。でも仲介業者は入れるつもりなくて本当に縁頼りで、その縁頼りの結果、居酒屋で、介護士の海美と看護師の珠莉に出会えて、陽も家族になってくれて、更に家族になってくれた穂稀も介護士の卵で、もう運命だと思ったから、椿ホームにも、海美と珠莉をこちらで雇いたいと話しをして、ちゃんと合意を頂いたし、いくつか資格を取得して、あとは担当医師と栄養士を見つけなきゃいけなかったんだけど、縁って本当に強くて、先月、ある女性に出会ったの。」
先月
図書館での仕事を終えてカフェに入り、なかなか混んでいたから先にテーブル席をキープしておいて注文へ、キャッシュレス専用機へ行くと前の女性が操作方法がわからないらしくあたふたしてらっしゃったので、声をかけた。
コーヒーを注文され、私も注文し終わる頃には満席で、テーブルをキープしておいて良かったと思って居たら、さっきの女性がコーヒーを手に空席を待ってらっしゃって、私と相席で良ければと声をかけた。
その女性とコーヒーを飲みながらお話しをしていてなかなか話しに花が咲き、メッセージアプリを交換、次の週にまた近くへ来る予定があるというので、ランチをする事になった。名前は美奈子さん。
美奈子さんはその日の夜にメッセージをくれて、たくさんの話しをした。美奈子さんは栄養士で、娘さんは昔、家を出ていったまま帰ってきていなくて、職場はわかっているけど会いに行けてないらしい。
私はシェアハウスをやってる事、これから高齢者施設をたち上げるため栄養士と医師を探している事を話したら、美奈子さんは栄養士で、循環器内科医師の知り合いも居るから聞いてあげると言って頂いて、翌週、美奈子さんとのランチに行くと、美奈子さんがご主人と一緒に来られた。
「美奈子さん!」
「美華さん。うちの主人で内科医の龍斗です」
「家内がお世話になりまして。ありがとうございます。」
スーツに身を包んだご主人に名刺を頂いた。
〝天久総合病院 医院長 天久龍斗〟
ん?天久?…美奈子さんは今日はこのランチの後ここの近くの娘さんが働く施設に行ってみたいと言っていた。
「美奈子さん、施設に行くのは何時から?」
「外観を見に行くだけだから時間は決めてないのよ。娘が居るかもわからないんだから。偶然でも会えたら嬉しいんだけどね」
「娘さん、介護士なの?離れてる理由は聞いてもいい?」
「看護師なのよ。娘は同性愛者で、私たちはその当時受け入れてあげられなくてね。」
「今の時代ではおかしくない事なのですが、私も後継者が欲しかったので出ていけと言った事、今更後悔しています。」
「娘さんを連れ戻したいんですか?」
「いやいや。もう後継者は育ててますから。せめて謝罪して和解できたらまた、たまに一緒に食事したりしたいんです。」
「娘さんの勤めてる施設の名前を聞いてもいい?」
「椿ホームってご存知かしら?」
やっぱり…天久なんて沖縄っぽい名前なかなか無いし…
「もしかして、珠莉のご両親ですか??」
「「えっ??!!??」」
「美奈子さんにメッセージで話してた私のシェアハウスには可愛らしい同性カップルと、大学生カップルがいます。同性カップルは椿ホームの介護主任と看護主任。高月海美と天久珠莉です。」
美奈子さんもご主人も凄くびっくりされていて、私が立ち上げる施設の栄養士と担当医師を是非と引き受けてくださった。その日は珠莉と海美は夜勤明けの日で、改めて、美奈子さんとご主人をハウスに招待する事を約束して、実は今日も来られる予定だ。
「⋯というわけで、海美と珠莉には私の施設で介護士長と看護師長を、海美はケアマネージャーも兼任でお願いしたいの。もちろんちゃんと今の椿ホームよりお給料は多く出すし、陽と穂稀ちゃんもうちで働いて欲しい。ハウスのお家賃はもし、子供が増えても1組25000円、他に1つお願いしたいのは、4人共、これからも私と家族で居て欲しいかな。だから、どちらかと言うと、皆へのプレゼントって話し出したけど私がプレゼント貰う感じかもしれないわね」
「つまり、美華ちゃん、今のこのハウスをリフォームして施設にするんやね?」
「そう。そして、私と知り合って、栄養士と担当医師を引き受けてくださった方がもうすぐくるんやけど、これが名刺。娘さんに出ていけと言った事を後悔していて、連れ戻したいとかではなく、謝罪して和解したいと仰ってたわ…珠莉」
「珠莉???」
「パパとママが…」
「今は珠莉のセクシャルも受け入れてらっしゃるみたいよ」
その時、ちょうどインターホンがなり、
美奈子さんとご主人が到着された。
珠莉はちゃんと話して和解し、海美をパートナーだと紹介すると、美奈子さんは娘が増えたと喜んでいた。
その日、珠莉の頬に流れた涙は凄く綺麗で、それ以来
美奈子さんは週2回は遊びに来ている。
翌週には全員ハウスの引越しを済ませて、施設へのリフォームが始まって、2ヶ月後、ゆかりほーむが完成。
ありがたい事に半年後には入居者様も満室になった。
#11へつづく