ぷろろーぐ
息が凍る真冬の寒い夜。
月明かりも無く真っ暗な視界。背丈の高い木が幾星霜と並んでいる森、その中を僕は彩音をしっかり背負って走っている。
後ろを確認するため振り向いてみると鬼共の怒号が聞こえる。もうすぐそこまで迫っているが捕まってしまう訳にはいかない。彩音を救うため僕はそんな声は無視してひたすら山を駆け上る。
しばらくそうしていると山の頂上まできてしまっていてそこにはさっきまで曇っていた空はすっかり晴れ渡り、太陽が黎明する方向は神秘的な薄紫色で、太陽から離れるにつれて薄紫は茜を帯びつつサファイアのような青い空が広がっている。
そこからは広大な青い海も見えた。朝やけに照らされた海は空の色を写しどこまでも青かった。
空と海が僕らを出迎えた。二月の凍てついた風が僕の頬を撫でる。
僕は彩音に海を見せようと半身になりながら話しかける。
「彩音、海だよ、見えるかい。」彩音は言葉を発すことはなかったが子供の様に目を輝かせて海を見つめている。
その姿を見てまた僕は胸が締め付けられるような圧迫感を覚えさらに脱水症状だろうか、視界も揺れだし倒れ込みそうになるが、彩音をあいつらに渡す訳にはいかない。
返事は無いとわかっているが僕は彩音に「もう少しの辛抱だ。」と呟き目の前の崖に近い勾配の坂を見つめ、彩音を落とさないよう彩音を背中にしっかり抱き直し一度深呼吸を挟み新鮮な空気を肺に入れる。覚悟を決めた僕は足元に気をつけてそこを滑るように降りる。
黒に染まる君に言いたいことがあるんだ。