前科8 栗見さんと盗聴
ついにゲットしてしまった……。栗見さんの連絡先!
僕の方から何か送るべきだろうか。
でも、特に用も無いのにメッセージ送ったら迷惑か。
ベッドの上で悶々としていると、不意にスマホが震えて悲鳴を上げてしまった。
それが栗見さんからのメッセージだと気が付き、二度目の悲鳴を上げてしまった。
『布里須くん、今なにしてる?』
うわー! 栗見さんからのメッセージーだー! スクショ! 印刷! 額縁買ってこなきゃー!
っていけない。返信しないと。
『特に何も』
うわ〜我ながらつまらない返事。慌てて言葉を付け足す。
『もうすぐ寝るところ』
これじゃ会話終わっちゃうじゃん! 僕のバカ!
『そっかー』
ほら、栗見さんも返答に困っちゃってるよ。
どうやって話題を繋げようか知恵を振り絞っていると、向こうから追加のメッセージが送られてきた。
『ねね。寝落ち通話やってみたい』
寝落ち通話……だと? それって恋人同士がやるやつじゃん! ってことは僕ら実質恋人じゃん!?
なんて気持ちの悪い思考は心に秘めておいて。短く端的に返す。
『いいよ』
震えるスマホ。三度目の悲鳴をぐっと堪え、スマホ以上に震える指を抑え、勤めて冷静に通話応答ボタンを押す。
『布里須くん、こんばんは〜』
栗見さんのコソコソ声。耳元で囁かれているようでドキドキする。
「こ、こんばんは」
『へへ、なんか変な感じだね?』
「そ、そうだね」
『わたし、寝落ち通話って初めて』
「僕も」
『なんかドキドキするね』
「うん……」
『緊張しちゃって、眠れなぐぅぅぅ』
ギャグ漫画かな?
「く、栗見さん? ほんとに寝たの?」
『むにゃむにゃ』
むにゃむにゃって言いながら眠る人、実在するんだ。
『むにゃむにゃ、もう盗めないよぉ〜』
泥棒は夢の中だけに留めておこうね。
『うぅ〜ん。うわぁ〜』
栗見さん、寝言激しいタイプみたいだ。
ってかこれ、通話繋がったままで大丈夫かな? このまま寝言聞いてて平気かな? なんか凄くイケナイ事をしている気がする。だけど、もっと栗見さんの声を聞いていたい。
『いやだぁ〜、いやだぁよぉ〜』
うなされてる。何か悪い夢でも見てるのかな。可哀想に。
『刑務所は嫌だよぉ〜』
よし、弁護士になろう。
本日の罪状:なし(現行の法律では罪にならず)