前科5 栗見さんとチャリパク
ガチ日本刀の一件以来、栗見さんと少しだけ仲良くなれた。
廊下ですれ違えば挨拶するし、たまに教室で話しかけてきてくれるし、授業中に目が合うこともある。
だけど、それ以上の進展が無いまま、悶々とした日々が続いていた。
そんなある日の放課後。
学校から駅への道を歩んでいると、一台の自転車が後ろからやってきて、急ブレーキ気味に僕の横で止まった。
「布里須くん、おっすおっす〜。うしろ、乗ってくか〜い?」
自転車に乗った栗見さんだ。
「なんてね! 二人乗りは犯罪だからダメだよ!」
栗見さんが言うと説得力が違うや。
「布里須くん、一緒に帰ろうよ」
「う、うん」
栗見さんと一緒に下校できるなんて。今日はツイている。
栗見さんはわざわざ自転車を降りて、自転車を押しながら僕の横を歩んでくれた。
「そういえば栗見さん、今日はチャリ通なんだね。普段は電車だよね?」
何気なく口にした言葉に、栗見さんの足がはたと止まる。
「え、今日も電車で来たよ?」
「あれ、じゃあその自転車なに?」
「あれ、この自転車なに?」
「え?」
「え?」
え?
本日の罪状:窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
判決:ちゃんと返したのでセーフ(アウト)