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前科3 栗見さんと殺人未遂


 翌日。昼休み。


布里須(ふりす)くん、ちょっと……」


 教室の扉に半身を隠すようにして、廊下から栗見さんがちょいちょいと手招き。誘われるまま教室の外へ。


「どうしたの?」

「えーっと……人気の無い場所行かない? 二人きりで」


 え、それもう告白の流れじゃん。


「い、いいよ」

「ありがと。……屋上、いこ?」


 違うじゃん殺害の流れじゃん。ガチ日本刀の目撃者を消そうとしてるじゃん。


「あ、屋上カギ閉まってるね。ここでいっか」


 屋上に入れなかったので階段の踊り場で向かい合う。誰もおらず、しんと静まり返っている。

 やっぱり告白じゃん。いや殺害の可能性も捨てきれないじゃん。


「あ、あのさ……」


 来る。どっちだ。告白か。殺害か。

 赤らんだ頬。潤んだ瞳。……いや絶対告白でしょこの雰囲気。


「ガチ日本刀の件なんだけど……」

「僕も大好きです!」

「え?」

「え?」


 あ、告白じゃなかった。


「あぁ、日本刀、カッコいいよね。わたしも好き」

「うん……」


 恥ずかしい。でも殺害でもないっぽい。良かった。


「それで、昨日のガチ日本刀の件だけど……」

「うん」

「先生に……密告してない?」


 密告て。言い方よ。


「してないよ」

「よかったぁ」

「仮に密告するとしたら、先に警察にするよ」

「布里須くん!」

「冗談だよ」

「もー」


 プンプン怒る栗見さん可愛い。


「よかったぁ。密告されたらどうしようかと。内心に響くよねぇ」


 内心どころの話じゃないと思うよ。


「安心して。栗見さんを悲しませるような事はしないから」


 あ、今のセリフちょっとカッコ良くない?


「布里須くん……」


 ほら、栗見さんの瞳もうるうるしてる。


「共犯……だねっ!」


 共犯にされた。

 でも共犯者の絆って一番強いって言うし、まぁいっか!


「それにしてもガチ日本刀といい会計忘れといい、栗見さんって結構うっかり屋さんなんだね」


 そんなところも可愛いけど。


「うん。たまに……つい、やっちまうの」


 その言い方は故意っぽいよ。


「たまにって、どれくらい?」

「一日二回くらい」


 やっちまい過ぎだよ。


「わたし、ほんとドジで、うっかりしてて……。もう高二なのにおかしいよね」

「そんなことないよ!」

「そう?」

「多少罪を犯しても……それを掻き消すくらい栗見さんには素敵なところ沢山あるよ!」

「あ、ありがとう……?」


 嬉しさと困惑が入り混じった表情が浮かぶ。


「でもやっぱり直したいんだ」

「まぁ犯罪はあんまりやらない方がいいもんね」

「もしまた、やっちまってる場面を見かけたらさ……」

「うん! 僕が罪を被るよ!」

「普通に注意して!?」


 栗見さんはふっと表情を崩すと、小首を傾げ、暖かい笑みを向けてきた。


「でもありがとう。励ましてくれたんだよね?」

「う、うん」


 どことなく照れ臭い空気。そして気まずい沈黙。


「……」


 栗見さんも感じ取っているのか、視線を落とし、顔を赤らめ、もじもじとしている。

 先に沈黙に耐え切れなくなったのは、彼女の方だった。


「も、もー! なにこの空気ー? なにか言ってよー!」

「え? 栗見さん可愛い」

「うえぇ!?」


 しまった。つい心の声が。


「ちょっと、からかわないでー!」


 顔を真っ赤にし、こつん、と小突いてくる栗見さん。

 うわぁ、()()()見上げる栗見さんも、とっても可愛いなぁ。……ん? 下から?


「きゃー!? 布里須くーん!?」


 階段から落ちた。



本日の罪状:殺人未遂罪(死刑または無期もしくは5年以上の懲役)

判決:無傷だったのでセーフ(アウト)

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